小1算数「どちらがおおい」指導アイデア(1,2/4時)《水はどちらがおおくはいりますか》
執筆/福岡県公立小学校教諭・坂田まゆみ
編集委員/国立教育政策研究所 教育課程調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏
目次
本時のねらいと評価規準
(本時の位置 1・2/4)
本時のねらい
身の回りにあるもののかさに関心をもち、2つの入れ物に入っている水のかさを比較する活動を通して、直接比較、間接比較を使って、かさを比べることができる。
評価規準
直接比較や間接比較によって、かさを比べることができる。(技能)
問題場面

[準備物]
・形や大きさが異なるペットボトルやビンなどを2本
・透明な同じ大きさの入れ物2つ
・漏斗、こぼれた水を受けるための皿やバット
(あ)の入れ物と(い)の入れ物があります。 水は、どちらの入れ物が多く入りそうかな?
(あ)です。 (あ) は、(い)より上のほうが太いからです。
(い)です。 (い) のほうが背が高いからです。
どちらが多く入るか、見ただけではわかりません。
そうですね。では、どちらが多く入るか、比べてみましょう。
本時の学習のねらい
いれものの かさの くらべかたを かんがえよう。
見通し
①2つの入れ物だけを使って、比べたらよさそう。
②他の入れ物に移し替えたら、比べられそう。
(長さの直接比較、間接比較、任意単位による比較の図を掲示)
長さ比べの時は、どんな方法で長さを比べましたか?
2本の鉛筆を、くっつけて比べました。
長さをテープに写し取って、比べました。
小さいものの、いくつ分で比べました。
今日は、直接比べる方法と別の入れ物に入れる方法で、どちらがたくさん入るか調べてみましょう。
自力解決の様子
見通し①の方法(一方を他方に移すことによる直接比較)
A:つまずいている子
水を一方から他方へ移し替えるが、どちらが多いか判断できない。
B:素朴に解いている子
操作の結果、どちらが多いかを判断できている。
C:ねらい通りに解いている子
どちらが多いかを「あふれたから…」「まだ入るから…」のように、根拠をもって説明することができる。
見通し②の方法(水を2つの同じ透明な容器に移すことによる間接比較)
A:つまずいている子
水を移し替えたものの、元の容器のどちらのかさが多いか判断できない。
B:素朴に解いている子
水面が高いことを根拠に、対応する容器のかさが多いと判断できている。
C:ねらい通りに解いている子
「移した容器(あるいは底面の広さ)が同じこと」を根拠にして、水面の高さに対応して、容器のかさが多いことを説明することができる。
自力解決と学び合いのポイント
見通し①の方法(直接比較)では、「あふれたとき」「足りないとき」のそれぞれの結果について、どちらが多いかをある容器を例としておさえ、子供が持ってきた容器について、子供同士で確認させるとよいでしょう。この時、最初に入れたものとは異なる容器に水を入れさせてもよいでしょう。
見通し②の方法(間接比較)では、こぼしたりしないかぎりは多少の判断は容易ですが、「元の」容器のどちらが多く入るのかを対応によって明確にすることや、「高さ」という言葉を用いながら説明することが大切です。水面の高さに目の高さを合わせて見ることなども、必要に応じて指導しましょう。
どちらの比較の場合も、どちらが多いかを「入れ物(あ)」と答えて終わらせるだけでなく、Bの子供の反応のように、判断の根拠を可能な限り説明させたいものです。
板書例

ノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け
見通し①について
どうして、(あ)が多く入るとわかりましたか?
(あ)の水を(い)に入れると、まだ水が残っていたので、(あ)のほうが多く入ると思いました。
(あ)の水を(い)に入れると、水がこぼれたからです。
(い)の水を(あ)に入れると、(あ)のほうがまだ隙間があって、水が入るからです。
見通し②について
どうして、(あ)が多く入ると、わかりましたか?
(あ)のほうが、水の高さが高いからです。
つけくわえます。同じ入れ物だから、高さで比べられるんだと思います。
長さの時と同じように、2つのものだけで比べたり、移し替えたりすると比べられたね。
(以下、本時のまとめをする)
本時のまとめ
ひとつをからにして、もうひとつのみずをうつしたり、おなじいれものにうつしかえたりして、くらべるとよい。
評価問題
まだ比べていない2つの容器を選んで、大きさ比べをしましょう。
期待する子供の姿
直接比較や間接比較で、どちらが大きいかを判断することができている。
ワンポイントアドバイス
福岡教育大学教授 清水 紀宏
「どちらがおおい」では、直接比較と間接比較で、かさの比較ができるようになることがねらいです。長さの直接比較では、測る対象をいわば同等に扱って重ねることができ、結果も一目瞭然です。これに対して、本時のかさの直接比較では、一方だけに水を入れ他方に移すので、量る対象が同等に扱われている訳ではありません。そこで、提案のように、結局どちらが多いのか(少ないのか)ということを、「水がこぼれたからあのほうが多い」「まだ入るから、あのほうが多い」のように、根拠を言語化した上で、自分の容器でもう一度確認するというような丁寧な扱いが必要です。かさの学習のおもしろさは、容器によっては「多く(少なく)入りそう」という予想が難しいところにあります。「自分の水筒はあまり入らないと思ったけど、比べてみると、友達の水筒と同じぐらいで安心した」というように、「自分事の事象」でかさの学習が展開できるとよいと思います。
イラスト/佐藤雅枝 横井智美
『小一教育技術』2018年10月号より