動画活用で主体的な学び【タブレットで変わる授業デザイン】#2

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タブレットで変わる授業デザイン

1人1台端末で動画活用を生かし、子どもの主体性を伸ばす授業を紹介します。今回は5年家庭科の「手ぬい」についてインターネットサイトを活用する授業、4年理科の「人のうでの中は?」について動画クリップを活用する授業、3・4年体育「マット運動」について自分たちで撮影した動画を活用する授業です。

執筆/熊本県公立小学校教諭・西尾 環

01 技能の基礎・基本を身に付けるウェブサイトの活用


5年家庭 手ぬいにチャレンジ


教師の指導に加え、子どもが自らインターネットのサイトにアクセスしてそこにある画像や動画資料を使って学ぶことにより、基礎的な技能を身につけます。それを生かして、作品を作り、基本的な製作の過程も学ぶことができるようにします。


針と糸を使って初めて裁縫をするときには、教師の指導の補助資料として、動画が役立ちます。インターネットサイト「役立つ動画集 まなびじゅある」(ぶんけい)には「家庭科 さいほう用具編」があります。教師は、そこから必要な動画を選んで電子黒板に映し出し、説明することができます。また、子どもが、自分の手元にタブレットを置いて、自分でアクセスして視聴しながら、練習をすることもできます。基礎的な技能を習得するために役立つサイトです。また、作品作りの時も活用します。

一度の技術指導や視聴では、縫い方の基礎・基本が十分に身に付いていない子どもがいます。また、最初の授業で欠席して、やり方が分からない子どももいます。そのように、子どもによって学習のペースが異なる場面で、子どもが自らタブレットを使用すると何度でも繰り返して動画を視聴して学ぶことができ、効果的です。


教師が「丁寧な縫い方」「雑な縫い方」の二通りを、アナログ教材やビデオで見せ、どちらがよいか、なぜよいか検討します。

教師が映し出した動画を見て、縫い方の基礎を学びます。

自分が練習したいめあてを持ち、必要な動画を自分で選んで視聴します。

教師の指導を受けながら、実際に縫う練習をします(必要に応じで、自分で動画を見ます)

振り返りをして、次の時間のめあてをもちます。


子どもは、自分のペースで、何度もチャレンジすることができました。教師は、よい縫い方を称賛したり、個別指導を行ったりしながら余裕をもって教室全体を巡回できました。また、その後の製作でも確認のために動画を見る子どももいて、主体的な活動に役立ちました。

事前にサイトのURLを配付して動画を開いておき、動画をすぐに見られるようにしておくとスムーズです。また、音声はオフにして映像だけで見るようにしたほうがよいでしょう。音声を聞きたい場合は、イヤホンを準備して視聴するようにします。


「まなびじゅある家庭科編」には、エプロンやナップザックなどの製作動画もあります。また、写し出したり印刷したりできるP D Fの資料も入っています。

製作動画見て参考にする子供たち

02 動画クリップで、根拠ある予想を

  
4年理科 「人のうでの中は?」(単元 わたしたちの体と運動)


NHK for Schoolの番組の動画クリップには、秀逸なものがたくさんあります。「ふしぎエンドレス」は、2018年から始まった理科の番組です(3~6年)。その中の動画クリップを視聴して、事象への関心・意欲を高め、思考を深められるようにします。


単元の導入でこの動画クリップを活用する事例です。教師が、映像をタブレットから電子黒板に映し出し、分割視聴させます。普段見られない映像によって課題意識が生まれ、学習への意欲が湧くでしょう。また、手がかりとなる物が紹介されていて、予想のヒントになります。根拠ある予想を立てるのに適した動画です。


教師が提示した動画クリップを視聴します。(1分15秒)

課題「人のうでの中はどうなっているのだろう」を把握します。

教師が提示した映像の続きを視聴します。(5分まで)
 「タコと人間の手の動き」の比較映像
 「手がかり」になる道具の映像

映像を手がかりに、人のうでの中を予想しよう
実際に曲がる道具を使って予想する

実際に曲がる道具を使って予想し、友達と意見交換します。

自分の考えをノートや、タブレットにかきます。

考えを伝え合います。


今回のクリップは、「手がかり」が紹介されていたことで、子どもたちが様々な視点から、うでの中を予測することができました。また、クリップの最後に、特殊カメラで、うでの中の骨が動く様子が映像として登場しており、子どもたちに驚きと感動を与えました。

予想する際に、人間のうでの中の仕組みを考える「手がかり」である折れ曲がるストローやトング、折り畳み定規などを準備しておくとさらによいでしょう。また、粘土もあれば、筋肉との関係にも、思考が広がると考えられます。そして、予想であっても、書いたり話したりすることで言語能力が養われる場面となるに違いありません。


NHK for Schoolにはたくさんの番組があり、短い動画クリップも多数あります。学習の内容に合わせて映像を活用するのが効果的です。教科や学習内容によって、全体視聴をせずとも、一部視聴や分割試聴をするとよいでしょう。

03 映像記録で技の習得


3・4年体育 「マット運動」(単元 器械運動)


マット運動で、技の習得のポイントをつかみ、自分の技の習得状況を把握します。そして、基本的な回転技(前転・後転)や倒立技(壁倒立・腕立て横跳び越し)を習得し、自己の能力に応じて発展技(大きな前転・開脚前転・開脚後転 、補助倒立・頭倒立・ブリッジ・側方倒立回転 )へチャレンジできるようにします。 

マット運動の様子ををタブレットで確認する


器械運動は、技のコツを学んでも、実際にやってみるとうまくいかない場合がよくあります。自分の姿を客観的に見て、どこを改善すればよいのかが分かり、意識することが大切です。そのきっかけとして、自分の運動している姿をビデオに撮って見ることは大きな意味があります。また、次第にレベルアップしていく姿が記録として残り、目標が近付くにつれ、モチベーションもアップします。


モデル動画を見て、よい技のポイントをつかみます。

マット運動のモデル動画を見ている子どもたち

よい側方倒立回転は、どのような手のつき方をしているでしょう。また、つま先は?

自分が身に付けたい回転技を選び、自分のめあてをもちます。

自分の練習したい場所に行って、2〜3人1組でペアを作り、互いに見合いながら、アドバイスをします。子どもがタブレットを持っている場合、撮影して見合います。

さらに練習をして、グループ内で技の発表会をします。

振り返りをして、次時へのめあてをもちます。

撮影した動画を確認する子供たち


モデルと自分の映像を比較して、改善すべきところを明確に把握できました。ペアやグループを作ったことで関わり合いが生まれ、励まし合う姿も見られました。

もちろん、教師が手本を実際にして見せたり、うまくできている子どもを紹介してやってもらったりするのもよいでしょう。ただしタブレットでビデオ撮影することで、どの子どもも自分を客観的に見ることができます。撮影する時、脇を閉めてタブレットを固定して少し下がって全体像を撮影することが大事です。また素早い動きの時は、スローで撮影したり再生したりすると、細かい手のつき方や足先の動きを捉えることができます。


文部科学省の小学校体育(運動領域)のデジタル教材動画は、様々な種目で公開されています。学年別に整理されていますので、参考になるものを活用したらよいでしょう。


西尾 環(にしお・たまき)●熊本県公立小学校教諭。小学校教諭として学校現場一筋。体育主任、研究主任、教務主任などを歴任。熊本大学教育学部情報教育研究会、熊本県市図画工作・美術教育研究会、学級づくり研究会、D-project(デジタル表現研究会)、ArtMile共同壁画プロジェクトなどで長年活動する。ADE2011、ロイロノート認定ティーチャー、シンキングツールアドバイザーなどの資格を持つ。
過去に、「日本子どもの版画指導者賞」「ちゅうでん教育大賞優秀賞」「D-pro booksアワード賞」など受賞。著書に「ゼロから学べる図画工作授業づくり」(明治図書出版)、分担執筆に「楽しい!学級づくり5・6年」(小学館)など多数。


タブレットで変わる授業デザイン カバー

<教育技術MOOK>
タブレットで変わる授業デザイン

GIGAスクール構想で、学校現場も本格的なタブレット活用の時代です。ICTの先進的な熊本市のベテラン教師が執筆。小学1年生から6年生までの、タブレットを活用した様々な授業実践を紹介しています。タブレット1人1台の時代に、すぐに役立つ授業デザインが満載です。

著/西尾 環 
発行/小学館
B5判/80頁
ISBN:9784091126047


構成/浅原孝子 イラスト/藤崎知子

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