【相談募集中】高学年を惹きつける図工の授業づくりとは?
図工専科の先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。高学年の子供たちが図工の活動を面倒くさがっているのだそうです。そこで、回答者の愛知県公立小学校教諭 佐橋慶彦先生が実践している、図工授業のアイデアをこちらで紹介します。
目次
Q. 高学年の子供が図工を楽しむようになるにはどうすれば?
東京都で図工専科の教員をしています。1〜6年までのすべての図工の授業を担当しています。高学年になると、図工の活動を面倒くさがって真面目に取り組まなくなる子供が多く、大変悩んでいます。
高学年の子供が図工の授業を楽しめるようにするにはどのようにしたら良いか、何かアイデアを教えていただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。(図工花子先生・30代女性)
A. 題材をいつでも調べられる環境を作り、描くことの意欲が高まるよう心がけています
ご質問いただきありがとうございます。1~6年生という幅広い子供たちを相手に図画工作を教えられているということで、きっと計り知れない様々なご苦労があると思います。また時間の制約がある中で、高学年の子供たちに図工を教えるのはとても難しいことだろうなと感じました。微力ではありますが、少しでもお役に立てたら幸いです。
高学年の子供たちが図工に取り組んでいる様子を見ていると、「好き嫌いがハッキリしている」という印象を受けます。図工が好きな子は、楽しそうな表情で、集中して取り組むことができるのですが、嫌いな子は、なかなか描き出そうとしなかったり、仲間とのおしゃべりに夢中になったりしてしまいます。
この図工嫌いな子の多くは、図工が苦手な子です。低学年からの、うまくできなかった経験が積み重なり、図工嫌いになってしまったのだと思います。高学年の子供たちの心理からすると「一生懸命頑張って、上手に描けなかった」というよりも「テキトーにやって、上手にできなかった」方が、格好がつきます。そのため、あえてやる気のないそぶりを見せるような子供たちもいます。これが広まると、次第に学級全体のやる気が低迷していってしまいます。
一方で、休み時間には、自由帳を取り出し、漫画のキャラクターなどを書いている子供たちも数多く見られます。筆箱や下敷きについているイラストを写しているようです。もちろん好きなキャラクターだからというのもあるのでしょうが、きっと題材を見ながら書けるので、ある程度上手な絵が仕上がるのでしょう。そう考えてみると、子供たちがなかなか図画工作にやる気を出せない理由は、自分がうまく書けない(できない)と分かっているからではないかと思うのです。
そこで、私は教室に題材となる動物や植物、魚や食品、風景などの図鑑を置き、描き方が分からなくなったらいつでも調べに行っていいように伝えています。「キツネを描きたいな」と思った時に、みんなから笑われてしまうような謎の生き物を描かなくて済むようにしたいと思い、描きたいものをすぐに調べられる環境を整えました。
また、図鑑などの準備がない時は、下書きやアイデアスケッチを図書室で描くようにしていました。サッカーのシュートフォームも、有名なお寺の形もすぐに調べることができる図書室は、題材の宝庫です。
もちろん「子供たちの発想力が…」という考えは承知していますし、賛同もします。しかし、それで子供がやる気を失って取り組まなくなってしまっては、意味がありません。画家や漫画家ですら、資料になる写真やスケッチを準備するくらいですから、よほど画力が高くないと、すべてを想像だけで描ききることは難しいと思います。
加えて、子供の意欲を高めるために、授業のはじめに試してみたくなるようなコツを一つずつ伝えるようにしています。例えば、これは授業前に子供たちに見せた色の塗り方について示した画像です。
▼色の塗り方について示した画像
木は緑一色ではないことや、自然界の色と原色の違いを視覚的に捉えさせ、色の奥深さを感じられるようにします。この写真一枚で、子供たちは奥行きや葉っぱの重なりを表現しながら木を書くようになります。また、勘の良い子は「空の水色も場所によって濃さが違う」「金属は、白っぽいところと黒っぽいところがある」と、どんどん思考を広げていきます。
なかなか真面目に取り組めない子供たちに、やる気を出させることはとても大変かと思いますが、一人でも多くの子供が、図工の楽しさに気が付いてくれたら幸いです。高学年の子供たちと充実した図工の時間が過ごせるよう願っております。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。