一年の総まとめで教師力を伸ばせ!【4年3組学級経営物語21】

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学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
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1月②「ラストミッション」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。 三学期が始まる前に、各学級のラストミッションを設定した渡来先生たち。それぞれが、高学年になる子どもたちの未来のために、総まとめの三学期に全力で取り組みます!

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。
大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。

ラストミッション!ゆめ先生の作戦発動

ゆめ先生の学級はいい空気があふれている

「二人とも頑張れ。私が付き合ってあげるよ」

葵ゆめ先生から放課後学習を言い渡されたアツシとノリを、優しく励ますサキ。おとなしく頷くアツシとノリ。

『いい雰囲気…。10月頃がウソのようだわ』

思わず心が温まる。この子たちのために頑張ろうと、素直にそう思えることが本当に嬉しい。

「じゃあ、頑張ろうね!」

そう励ます葵先生に、二人が揃って敬礼します。

「了解、ブルーだ先生!」

ブルーとは、葵の同音の「青い」の意ですが「憂欝」という意味も込められています。

「トライだ先生にブルーだ先生、名コンビだ!」

「フェイクニュース禁止よ!」

憂欝な顔で二人を睨む葵先生。

廊下を渡来先生が通りかかりました。『いい学級に育ってきましたね。勉強コンビも頑張ります』。そう呟き1組に向かいました。

「勉・強」コンビの…、ラストミッション

「勉強コンビで、今日も完璧サポートだ!」

渡来先生の掛け声に、オーッと拳を振り上げる3組の子どもたち。

今日の算数は、『同分母の分数の計算』。黒板に、『 [MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]=』と表します。

「さあ、分数のたし算にトライだ!」

全員を見回し、質問。

「 [MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH] って何だったかな?」

「1を5等分した3つ分です!」

自信たっぷりに答えるアキ。

ニッコリ笑う渡来先生。

「正解…。じゃあ、各自で分数同士のたし算の仕方を考えてみようか」

子どもたちが問題に取りかかると、ヒントカードを持って見回る大和川くん。

頭を抱えるカズに、早速サポートを開始。

「分からない…」

「大丈夫、絵で考えてみようか」*POINT

カードに描かれたホールケーキ。よく見ると、5等分されています。

「カズはこの一切れ。5等分した1つ、 [MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH] だ」

頷くカズに、優しく質問。

「リュウとジュンにも同じケーキを渡すと、全部で…?」

「 [MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が3つだから、 [MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH] かなぁ」

自信無さそうなカズ、ニッコリ笑う大和川くん。

「大正解! じゃあ、同じケーキを4人に渡すと…」

「五分の四だ!」

嬉しそうなカズに、大和川くんが伝えます。

「もう、分数って何かが分かったね。それでは、問題を自分で考えてみよう」

『ナイスサポートだよ、大和川くん!』

労いの視線を送る渡来先生。

別の場所では、数直線を使ってハジメがヒロに考え方を説明しています。

「 [MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH] 区切りが3つ、それに4つを合わせるんだよ」「ホントよく分かるなぁ、ハジメの説明」

「では、トライした成果を発表してもらおう!」

渡来先生の発問に、一斉に挙手する子どもたち。

『やったぁ、カズも手を挙げている』

胸が熱くなる大和川くん。

「勉・強」コンビ、絶好調です!

補助発問について
補助発問は、事前に考えておく主発問とは異なり、臨機応変に子どもたちの発言に対応したり、深めたり、共有させたりするための発問です。先生の「場に応じた補助発問の引き出しの数」を増やすことが、よりよい授業への近道とも言えるでしょう。
また、授業の流れにおけるそれぞれの場面での発問について考えてみましょう。いつ、どんな発問をするのかによっても、授業は変わります。発問の順番を変えたらよかった、ということがないようにしたいですね。
授業の導入場面では、子どもの興味・関心を引き出す発問や、問題点に気づかせる発問、学習課題を明確にする発問などが必要です。展開場面では、子どもたちの話合いを活発にしたり、子どもたちの思考を深めたりする発問を準備しましょう。
まとめの場面では、授業のまとめや振り返りにつながる発問や、その日の学習内容を活用させるような発問、そして、次時へのつながりを図る発問が有効です。

イワオジの、ラストミッション

「小テストや放課後学習、共に好調だ。1組も頑張るぞ」

放課後、1組の教室で明るく話す主任。

「勉強コンビの既習事項の再確認と活用…、これも効果的だな。次は、子弟コンビ結成だ!」

その言葉に大感激の大和川くん。

「各自の力で総まとめに取り組んだゆえ、教師力の向上が図れた。…いいゴールがきれそうだ」

微笑む主任。

しかし、ゴールという言葉に心を揺らされた3人の表情が一瞬陰りました。

「ずっと終わらないでほしいです…、三学期」

渡来先生の言葉に、思わず頭を掻く主任。

「余計なことを言ったな…。三学期はまだまだ終わらん。ラストミッションもこれからだ!」 

主任の檄に活気を取り戻したチーム4年。「総まとめの三学期」に再びトライです!

(2月①につづく)

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『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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