小6国語「町の幸福論―コミュニティデザインを考える」指導アイデア
教材名:「町の幸福論―コミュニティデザインを考える」 東京書籍
指導事項:A 話すこと・聞くこと ウ C 読むこと ウ
執筆/新潟県公立小学校教諭・半井野文恵
編集委員/文部科学省教科調査官・菊池英慈、新潟県公立小学校教諭・井上幸信
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元では、資料を活用するなどして、自分の考えが伝わるように表現を工夫する力を育むことを目指します。本単元で取り組む言語活動は、地域の人に対して町の未来についてプレゼンテーションをすることです。
プレゼンテーションとは、調べたことや考えたことについて、多くの人に向けて発表することです。効果的に聞き手に伝わるよう、資料の提示などを夫して行われます。
したがって、プレゼンテーションをするためには、伝えたい相手や内容に合わせて、写真や図表などの資料を効果的に活用することが必要となるのです。
②言語活動とその特徴
本単元では、コミュニティデザインという考え方を中心に、豊かな町の未来の在り方について述べた文章を教材として扱います。この教材文は、事例に対応する写真や図表を提示して、主張が読み手に伝わるように工夫がなされています。
そこで、教材文から、資料の効果的な活用について読み取り、自分のプレゼンテーションに生かすことができるようにします。
単元の展開(13時間扱い)
主な学習活動
第一次(1時)
①地域の人たちに対して、町の未来についてプレゼンテーションを行うという見通しをもつ。
→アイデア1
・総合的な学習の時間に学んできたことを基に、町の未来について考えを出し合う。
・発表の手段の一つであるプレゼンテーションについて知る。
【学習課題】
地域の人に伝わるプレゼンテーションをしよう。
第二次(2~5時)
②③資料の効果的な活用について読み取る。
→アイデア2
・資料がない教材文とある教材文を比較することを通して、どの資料をどのような場合に活用すると効果的かを考える。
④⑤文章の構成と筆者の主張を捉える。
第三次(6~11時)
⑥⑦⑧⑨グループで、プレゼンテーションの準備をする。
⑩学級内でプレゼンテーションを行い、アドバイスをし合う。
・プレゼンテーションの構成、資料の活用のしかたの観点でアドバイスをし合う。
⑪プレゼンテーションを修正する。
第四次(12・13時)
⑫プレゼンテーションを行い、地域の人と意見を交流する。
→アイデア3
⑬単元末の振り返りをする。
・プレゼンテーションの構成、資料の活用のしかたの観点で振り返りをする。
アイデア1 地域の人に対して、プレゼンテーションを行う見通しをもつ

子供は、これまでに社会科や総合的な学習の時間で、地域の伝統や文化について学んできています。その状態の子供に、自分たちの住んでいる町をどうしていきたいのかを問います。
◯◯町のお祭りに、もっとたくさんの人が来てくれるといいな。
◯◯町の果物はおいしいから、他の地域の人にも知ってもらいたいな。
子供から考えを引き出した後、プレゼンテーションという手段を使って、その考えを地域の人に伝える言語活動を示します。
自分の考えを伝えることができれば、地域の人から協力してもらえるかもしれない!
このように、子供に「自分の考えを地域の人に伝えたい」という思いをもたせることで、主体的な学びが成立します。
アイデア2 資料の効果的な活用について読み取る

2時間目では、まず、資料のない教材文を提示し、子供に通読させ、内容が伝わったか問います。子供は、「書いてあることが難しい」「途中から、よくわからなくなった」など、内容が伝わりにくいという感想をもつと考えられます。
次に、本来の教材文に入っている五つの資料を提示し、それぞれの資料がどの段落に入るかを問います。そして、その段落に、その資料を入れる効果について考えさせます。子供は、自分がはじめに読んだ資料のない文章と比較して、話し合います。
7段落の土祭は、はにわが多くてびっくり! 僕たちの地域の祭りとは違うね。
写真があると、「こういう祭りなんだ!」ってイメージできるね。
8段落と9段落は、表やグラフがあると、文章には書かれていない数字の変化もわかるね。
このように、子供は資料の効果について実感し、それぞれの資料をどのような場面で活用すると効果的かを理解することができます。
▼資料の効果的な活用場面
■写真・図……様子や難しい言葉を具体的にイメージさせたい場合。
■表・グラフ…数字の変化など、数値をくわしく伝えたい場合。
アイデア3 プレゼンテーションを行い、地域の人と意見を交流する
12時間目では、地域の人に向けてプレゼンテーションを行います。ここでは、提案して終わりではなく、地域の人から意見をもらうことが大切です。自分の思いが伝わったかどうか、自分の提案を受けて、地域の人はどんなことを考えたのかといった聞き手の反応から、子供は自身の伝え方について振り返ることができます。

イラスト/畠山きょうこ 横井智美
『教育技術 小五小六』2019年11月号より