小2道徳「きつねとぶどう」指導アイデア
執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎
目次
内容項目
感謝
家族などの日ごろお世話になっている人々から受けた善意に対して、感謝の気持ちを伝えることができるようになる。
趣旨
前時で「ありがとうは だれが いう?」を通して、家族や周囲の人々に感謝や尊敬の念を抱くことや、「ありがとう」の言葉を使う意味等について学習しています。この単元はそれを踏まえて感謝についてさらに深く考えさせようとするものです。
家族への感謝を考えさせるわけですが、各家庭によって複雑なものを抱えている子どもたちもいます。DVであったり、母子家庭・父子家庭であったり、家庭内にトラブルがあったりして、全ての子どもが一様に親からの愛情をたくさん受けているわけではないのです。
その辺りを配慮して授業をしていかないと、子どもにとって苦痛になりかねません。子どもたちの実態を確認して授業に臨み、家庭的に恵まれていない子どもたちの表情をよく読み取り、お母さんに限定せずに「お世話になっている人」への思いを喚起させるようにしましょう。
また、指導書ではいつもお世話になっている人をどう思うかを考えさせてから、教材を通して母親への感情を募らせ、それを踏まえてその人たちへの感謝の気持ちを表すという展開になっています。
ここでは、それぞれの人たちの思いを考えることで、子どもたちの考えを深めるという展開にしたいものです。
使用教材
「きつねと ぶどう」
坪田譲二 原作(教育出版 二年)
この教材文は、一読しただけでは二年生の子どもにはとても深く考えられないような表現がいくつか出てきます
① 猟師と犬が近づいているからと、きつねが大きな声で叫ぶと、その結果何が起こるのかは二年生には想像しにくいものです。この後で「それっきり、親ぎつねは帰ってきませんでした」とありますが、そこで何が起こったのかということは書かれていません。
文脈から、大声を出した親ぎつねは猟師に撃たれてしまった(殺された)であろうということをきちんと想像させなければなりません。
② 昔お母さんとすんでいた巣の近くに来て、ぶどうが実っていたので不思議に思ったと言うのは、何を表しているのかも分かりにくいところです。
つまりお母さんのぶどうであったということ。これも二年生には順序立てて考えさせないと、理解できません。
③ そして、「そのとき、そこにぶどうがなっているわけがわかりました」というのは、お母さんがそこにぶどうを置いて、自分を助けるために猟師に撃たれたから、そのぶどうが実ったのだということが分かったのだと理解させなければなりません。
そこまで考えないと、親の深い愛情には心が至らないのです。
最後の「お母さん、ありがとう」が、美味しいぶどうを残してくれたお礼だと考えたら、それこそ浅い解釈になってしまうでしょう。
だからといって、何度も読み込んで行間を想像させていくという国語的なアプローチでは道徳になりません。
発問の工夫と、板書と挿絵の活用が大切になります。視覚化して挿絵と吹き出しを活用することによって、何が起こったかを想像させることが必要です。
本時の展開
①お世話になっている人について考える
いつもお世話になっている人とは、自分にとってどんな人たちか、家族を中心に身近な人たちから考える。
また、その人はどんなことをしてくれているのかを書く(ワークシート)。
②黒板に教材名を書き、本文を読む
③親ぎつねの行動について考える
黒板に貼った挿絵の吹き出しに入る言葉を考えて、親ぎつねはなぜ三つの山を越えてまでぶどうの実を取ってきたのかを考える。
挿絵1
挿絵2
挿絵3
挿絵4
④発問を重ねて理解を深める
親ぎつねは大声で叫びましたよね。そうしたら、どうなりましたか?
子ぎつねは山の奥に逃げて行った。
では、その後、親ぎつねはどうなったのでしょうか?
猟師に撃たれた。
殺された。
殺されたというような言葉はきつい言葉かもしれないが、現実としてとらえさせます。そうでないと、命をかけて子どもを守ったということになりません。
子ぎつねは大きくなって、昔すんでいたところにやってきたんですね。ぶどうを食べて分かったって言っているけれど、何が分かったのでしょうか? 吹き出しに入る言葉を考えましょう。
【回答例】
・お母さんの味がしたこと
・きっとこのぶどうは、お母さんがあのとき取ってきてくれたものだね
・お母さんは、ここで死んじゃったんだな
・ぼくを助けようとして大声を出したから、殺されたんだね
では、この『お母さん、ありがとう』は、どんな気持ちで言ったらいいんだろうね。考えて言ってみましょう。
⑤今日の学びを振り返る
いつもお世話になっている人たちは、どんな気持ちで自分たちの世話をしてくれているのかを考えて、ワークシートに書く。
板書例
評価
身近な人たちがどんな気持ちでお世話してくれているかを想像して書くことができるかどうか。
イラスト/小泉直子 横井智美
『教育技術 小一小二』2019年9月号より