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作品を見せるのは、はずかしい? そんな児童の思いをくみとって、心の扉を開いてあげよう!

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埼玉県公立小・中学校教諭

坂齊諒一(さかさい りょういち)
いちばん楽しいアートバナー

「なんかいい感じに絵が描けた」と思ったら誰かに見てもらいたいですよね。でも、自分から「見て見て!」と自己主張するのははずかしい…。そんな心情の子どもを見かけることも多い図工の時間。先生としては、ぜひ進んで、そんな児童たちの心の扉を開いてあげたいものです。きっと、さらに表現することが好きになっていくはずですよ。

題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一

連載【いちばん楽しいアート】#19

描くことと、見てもらうこと

私は「絵を描いたことによる満足感」と、「見てもらったり反応してもらったりすることによって承認欲求が満たされた状態」をもって、「作品が完成した」と考えます。なぜなら、「何のために描いているのか」を突き詰めた先には、対象としている誰かがいるものだからです。

※こちらも併せてご覧ください
>現役教員兼イラストレーターが提案! 適切な声掛けで、図工の授業を最高に楽しい表現活動の場にしよう!

上の記事でもご紹介しましたが、授業中によくある児童の発言は、
「これ見てください!」
「この描き方、作り方がわかりません」
「これからどうすればいいですか?」
の3つが多く、中でも「これ見てください!」は最頻出と言っても過言ではないでしょう。そのくらい絵を描いたら誰かに見てもらいたい、共有したいという気持ちは自然と発生し、周りからの反応を求めるものです。

見てもらいたいけど、照れくさい

見てもらいたい、反応がほしいという気持ちは誰でも持っています。しかし、この気持ちはあまのじゃくだったり、気難しかったりするものです。年齢が上がるほどその傾向は強くなります。

先生「どんな絵が描けたの?見せてほしいな」
児童「恥ずかしいから嫌です」(はにかんだ笑顔)

上記のような類の会話をしたことありませんか? 私はこんな場面に何度も遭遇し、その後会話が進展しないという経験をしてきました。このとき、児童の心の中には以下のような気持ちが渦巻いているのではないでしょうか。

先生に見られると何か否定的な(批判的な)ことを言われるかもしれないから。
大人から見たら、自分の描いた絵なんて下手だから。
〇〇さんと比べたら自分の絵は全然描けていないから。
あの漫画のように描きたかったのに、全く似せられなかったから。

「見てもらう≒人から評価される」と言える部分があります。私も絵を描く仕事をしている人間として、このあたりの気持ちは非常に分かります。当の私も小学生の頃は「〇〇さんと比べたら自分の絵は全然描けていない」と思っていました。同じクラスに現在の私が見ても上手いなと思うような、とんでもなく素敵な絵を描く友達がいました。そして、その友だちと自分を勝手に比べて、勝手に恥ずかしがっていました。
また、児童はゲームやアニメ、漫画などの文化に慣れ親しんでいます。その中には魅力的なキャラクターの絵がたくさんあり、たっぷり時間をかけた、手の込んだ作品も当たり前のようにあります。
それらに親しめば親しむほど、「絵とはこうあるべき」と刷り込まれてしまうのです。そのような絵と自分の絵を比べたら当然技術の差があります。加えて、その上手いという基準でクラスのみんなが描いた絵を見たときに、自分の位置を客観的に判断してしまうのです。
大切なことは「表現する」ということであり、技術の高い低いなど関係ないのに「自分の絵は下手だから」と思い込んでしまうのです。
このような気持ちにさせないようにするために、教師の声掛けが必要ですね。

長く語りましたが、様々理由はあれど根底に「見てもらいたい、褒められたい(反応がほしい)」という気持ちがあることには変わりません。その気持ちに辿り着くまでに「恥ずかしい」「下手だから」という気持ちがあるだけなのです。教師の声掛けで、「見てもらいたい」という気持ちを満たしてあげたいものです。

イメージ められたいけど、照れくさい子供

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