「こども未来アクション」とは?【知っておきたい教育用語】
東京都は「チルドレンファースト」を掲げ、子どもの視点に立った教育施策を進めています。その一環として、「こども未来アクション2025」を策定しました。これは現在の取組を振り返るとともに、子どもとの対話をもとに今後の方針をアップデートする指針です。では、「こども未来アクション」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

目次
「こども未来アクション」とは
【こども未来アクション】
子ども目線で捉え直した政策の「現在地」と、子どもとの対話を通じた「継続的なバージョンアップの指針」のこと。
こども未来アクションは東京都が「チルドレンファースト」の社会を実現するために、2023年から毎年策定している子供施策の指針です。子どもたちが笑顔で安心して暮らせる東京をめざし、子どもの声を直接聞きながら、関係事業を継続的に見直し・強化しています。
主な特徴としては、毎年、最新のデータや子どもたちの声を反映し、改善を続けていることが挙げられます。2025年版では主に、子どもに関する定点調査「とうきょう こども アンケート(令和6年調査)」を活用しています。都内在住の対象となる年齢の子どもおよびその保護者、10,500世帯(計19,500人)に対し、子どもの安全安心や学び・成長についてなどの設問が設けられています。
このアンケートを通して、子ども自身の声を直接聞き、課題やニーズを明らかにしたうえで、子どもの視点で政策を考えています。これにより、子どもたちが直面する課題に対して実効性のある政策を展開することが可能なのです。
さらに、法定計画である「東京都子供・若者計画」「東京都子供・子育て支援総合計画」とも連携し、総合的に子供政策を推進しています。
「こども未来アクション」の目的と背景
東京都は「子どもは社会の希望であり、未来の力」と考え、社会全体で子どもと子育てを応援しています。
これまで、子どもに関するさまざまな計画の策定や対策が講じられてきましたが、その多くは子育て支援であり、「少子化対策」としての役割を果たしてきました。一方で、「チルドレンファースト」の社会の主役である子どもは置き去りになってしまう側面もありました。
そこで、子どもの声や思いを受け止め、形にするために「こども未来アクション」が策定されました。その内容を多くの子どもに届けるために、成長段階に合わせて内容をわかりやすくまとめた「小学生向け」「中高生向け」、日本語が得意でない子どもや、その家族も理解しやすい「やさしい日本語版」、さらに英語や中国語など多言語に対応した冊子が作られています。
「こども未来アクションが掲げる」取組とその可能性
「こども未来アクション」では、以下のような取組を報告しています。
●こどもワークショップ
「未来の東京」「東京2025世界陸上〜大会を通じて、わたしたちが実現できること〜」「多摩都市モノレール延伸部(上北台〜箱根ヶ崎)の街づくり」の3テーマで実施。
●デジタルコンテンツ
バーチャル社会科見学や、東京都の魅力や取組を知ることができるコンテンツなどが掲載された「東京都こどもホームページ」、悩みや不安があるときに名前を言わずに話ができる相談窓口「ギュッとチャット」など。
●出前授業(小学生)
東京都庁で仕事をする人が小学校に出向き、「『今』と『未来』を笑顔で過ごすために東京都に望むこと」をテーマに授業。
●中高生 政策決定参画プロジェクト
中高生同士で「将来のためになるリアルな体験活動の充実」を議論し、職業体験の仕組みづくりを知事に提案。
固定的ではなく、時代や子どもたちのニーズに合わせて柔軟に進化し続ける政策の実現を通して、子どもたちとともに「今」と「未来」をつくり、笑顔あふれる「チルドレンファーストの東京」が実現するのではないでしょうか。今後はさらに子どもの声を広く取り入れ、還元していくことが求められます。
子どもと子育てを応援することは、「未来への投資」です。そして、子どもにとって安全で安心な社会は、全ての人にとっても安全で安心な社会でもあります。子ども・若者と子育てを応援する社会を全員でつくり上げていきたいという願いの実現に参画していきたいものです。
国が進める類似の取組
東京都の「こども未来アクション」がめざす、子どもが笑顔で安心して暮らせる社会づくりの取組は、国や他の自治体、企業などでも進められています。
こども家庭庁は、2024年12月に「こどもまんなかアクション」第2版を出しました。「こども・子育てにやさしい社会づくり」をして、全ての人が子どもや子育て中の方々を応援する社会全体の意識改革を進めることを目的としています。
子どもが健やかで幸せに成長できる社会を実現するという「こどもまんなか宣言」の趣旨に賛同し、自らアクションを起こせる個人、企業・団体、自治体を「こどもまんなか応援サポーター」としています。
「こどもまんなか応援サポーター」は自発的なアクションに取り組み、その内容をSNSなどで発信することとしています。この呼びかけに応じた企業や個人、自治体は「#こどもまんなかやってみた」というハッシュタグを付けて発信しています。その後、こどもまんなか応援サポーターの数は増加し続け、38道府県、304市区町村、2,066の団体・企業・個人が参加しています(2024年11月25日現在)。
次代の日本社会の創り手である子どもを、社会総がかりで育てる環境づくりは大人の意識を変える取組が基盤となります。少子化問題に直面している日本の喫緊の課題であるといえるでしょう。
▼参考資料
東京都(デジタルブック)「こども未来アクション」2025年3月17日更新
東京都(デジタルブック)「チルドレンファーストの社会の実現に向けた子供政策強化の方針2024(2024年8月)」2024年8月
東京都(ウェブサイト)「東京都こども基本条例」
こども家庭庁(PDF)「こどもまんなかアクションーファクトブックー」2024年12月