小3国語「ありの行列」京女式板書の技術
今回の教材は、「ありの行列」です。本単元は、「文章を読んで、興味をもったことやもっと知りたいことなどを書き、読み合う」という学習内容になります。本時では、興味をもったことを詳しく読むために、3つの観点を分かりやすく示す板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・古垣内千鶴子
教材名「ありの行列」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全7時間)
- 文章を読んで興味をもったことについて伝え合い、学習課題を設定して、学習の見通しをもつ。
- 説明内容や手がかりとなる表現に着目しながら、「問い」と「答え」がどの段落にどのように書かれているかを捉える。
- 文末表現を手がかりに、書かれている内容について整理することで、「中」で説明されていることを捉える。
- 行動を表す言葉や段落のはじめの言葉、文末表現などに着目しながら、文章を短くまとめる。
- 興味をもったことを詳しく読む。
- 興味をもったことやもっと知りたいことなど、文章を読んで考えたことを書く。
- 文章を読んで考えたことについて書いた文章を読み合い、一人一人の感じ方に違いがあることに気付く。
板書の基本
〇教材「ありの行列」はウイルソンという学者によってありの生態が解明されたことを説明した分かりやすい文章です。教材の末尾にある学習の手引では、次の導きがあります。「『ありの行列』を読んであなたはどんなことに興味をもちましたか。」この導きの文言通り、興味ある文章をどのように学習活動につないでいくかということを考えました。
〇文章を読むと、「興味をもつ」には3つの観点があることに気が付きます。1つ目は、「ありの行列」そのもので、「なぜありの行列ができるのでしょうか」という問いです。文章を読んでいくと、ありの生態がよく分かります。2つ目は、ウイルソンという学者の研究です。ありを観察している過程や実験の仕方を分かりやすく書いています。3つ目は、筆者の大滝哲也さんの文章力です。子供たちに分かりやすく伝えることを意識した書き方をしています。
板書のコツ(5/7時間目前半)
板書のコツ①
日付、題名を板書した後、筆者の説明を簡単にします。筆者はこれからの学習活動に関わる人であることを補足します。めあて「きょうみをもったところをくわしく読もう。」を板書し、「ありの行列」の学習(1)「なににきょうみをもちましたか。」を板書します。興味をもつことの意味を理解させるために、①②③の順で文章を説明しました(①赤、②青、③緑)。
①はありの行列のでき方
②はウイルソンさんのしたこと
③筆者(が読み手に伝えるため)の書き方のくふう(文章の中の問いや答えの文、順序を表す言葉、文末表現、言葉選びなどを手がかりにする)
この(ヒント)を板書します。
板書のコツ②
学習(2)に入るまでに、子供の興味のもち方を確認するために、今までのヒントの理解の仕方を確かめます。留意することは、思い付きでなく、教科書の文章をもとにして考えることであることを指導します。
・ありがどのように動くか。
・ウイルソンさんは「しました/考えました」の文。
・筆者はどんな順で説明しているかということ。
板書のコツ(5/7時間目後半)
板書のコツ①
自分の学習を進めるために、(ヒント)として①②③の「あり」(赤)、「学者(ウイルソン)」(青)、「筆者」(緑)の3つのコースから1つを選ぶように板書します。
・学習の仕方が分かった子→自分で教科書を読ませます。
・学習の仕方が分からない子→ありを例に、「ありの動き」を文から探す学習を指導します。
・個別指導が必要な子→板書で内容を具体的に示します。板書を参考にして、学習が進められるようにします。
板書の内容例は、
・ウイルソンのしたことと考えたことを書きます(青線、青波線囲み)。
・「(□□)ありは(が)…」「ありの行列は(が)…」から始まる文を書き出します(赤線、主語は〇で囲む)。
・「ウイルソンは」や「考えた」の 主語と述語の文を書き出します(主語は青線、述語は青二重線、文全体を青波線で囲む)。
・「はじめに」「次に」(緑線)という筆者の文の進め方が見られます。これを手がかりにすると、筆者が読み手に伝わるように使った他の文と文をつなぐ言葉を探すことができます。「外れていないのです。」(緑線)という言葉 は、他の言い方よりも説得力のある言葉として筆者が選んだ書きぶりです。そのような言葉の選び方や使い方にも着目させます。
構成/浅原孝子