小4国語科「風船でうちゅうへ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「風船でうちゅうへ」(光村図書)の全時間の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/岩手県二戸市立金田一小学校校長・髙橋聡子
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、目的を意識して、中心となる語や文を見つけて要約する力を育てます。
要約する際には、考えとそれを支える理由や事例など情報と情報の関係を理解した上で、自分が興味をもったことを中心に必要な情報を取り上げて、文章の内容を端的に説明することができるようにしていきます。
また、要約した文章を共有し、同じ文章を読んでも文章への着目の仕方や、感じ方に違いがあることに気付くことができるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
言語活動を設定する上で「風船でうちゅうへ」という教材の内容や構造に触れておきます。
本教材の筆者は、様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられ、その宇宙の写真や動画はCMや広告にも広く採用されています。「風船をとばして宇宙をみる」という筆者の挑戦は、子供たちに驚きと夢を抱かせ、様々な視点から興味・関心を広げることができる教材です。
また、文章全体が時系列で述べられており、実験の失敗、装置の改良などを繰り返しながら筆者が成功にたどり着くまでの様子がまとまりごとに捉えやすく構成されています。
本単元では、これらの教材の特性を生かし、興味をもったことを中心に要約し、自分の考えをまとめて共有する言語活動を設定します。
ここでの要約は、自分が興味のあることを中心に、教材文から大事な言葉や文を整理してまとめていきます。分量としては、200字程度が望ましいでしょう。
さらに、文章を読んで感じたことや考えたことを100字程度でまとめ、紹介し合うことで、一人一人の感じ方の違いや他者の感じ方などのよさに気付くことができるようにします。その際に、それぞれの興味・関心に応じて、教科書の「もっと読もう」のページを読んだり、同じ作者の本を読んだり、インターネットの情報を活用したりすることも効果的です。
4. 指導のアイデア
単元の導入では、1人1台端末を効果的に活用し、筆者が撮影した魅力的な宇宙の写真や動画を見ることで、宇宙の魅力を感じたり、「宇宙を見たい」という筆者の思いに共感したりすることが大切です。
それぞれが感じたことを話し合う中で、その多様性に気付き、「自分が興味をもったことを友達に伝えたい」「友達が興味をもっていることを知りたい」などという主体的な学びが生まれます。
対話的な学びを有効に機能させるには、要約をする学習場面でのグループトークの設定が考えられます。興味をもった内容が似ている子供たちを意図的にグループ化することで、自然な対話が生まれます。「自分が興味をもったことをどんな言葉で表せば相手に伝わりやすいか」「友達はどんな言葉に着目しているか」など、対話を通して考え、文章の中の大事な言葉や文に着目する力を育むことができます。
単元の終盤7時間目には、まとめた要約文を紹介し合う場面を設定します。
ここでは、興味をもった内容が似ているグループだけでなく、違うグループとも交流をするようにし、対話を通して自己の考えを広げたり、同じ文章を読んでも着目の視点や思考に違いがあることに気付いたりできるようにします。
要約は、文章全体の内容を正確に把握した上で、構成や表現をそのまま生かしたり自分の言葉を用いたりして、文章の内容を短くまとめることが重要です。この単元では、自分の興味のある内容に絞って整理をすることで深い学びへとつなげていくことができます。
また、自分の考えをまとめることで、「自分の経験」と「筆者の伝えたいこと」などを結び付け、自分が文章をどのように捉え、理解したのかを改めて確かめることができます。
5. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: きょうみをもったことを中心に要約し、友達にしょうかいしよう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 教科書の写真や筆者の映像を見たり、教材文を読んだりして、興味をもったことについて話し合う。〈 端末活用(1)〉
② 興味をもったことをどのようにして伝え合うかを話し合い、学習計画を立てる。
・第二次(3時、4時、5時、6時)
① 筆者の考えとその事例がどのように説明されているのか、文章全体の構成を捉える。〈 端末活用(2)〉
② まとまりごとに大事な言葉や文を表に整理する。
③ 興味をもったことを中心に要約する。
④ 興味をもったことについての自分の考えをまとめる。
・第三次(7時、8時)
① まとめた文章を友達に紹介し、感じ方の違いやよさに気付く。〈 端末活用(3)〉
② 単元全体を振り返り、自分についた力を確かめる。〈 端末活用(4)〉
全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア
導入では、風船で宇宙を写した写真、筆者の登場する動画やCMなどを見ることで、「装置にはどんな材料を使うのか」「成功するまでにどんなことがあったのか」などについて自由に話し合います。もっと知りたいという気持ちを高めた上で、教材文「風船でうちゅうへ」を読むことで、子供たちは、実際に写真をとった筆者の実験の様子や工夫、努力する姿や考え方などを知り、説明文の面白さに気付くことができます。
● 端末利用の方法や効果
子供たちに「興味をもったこと」についてWebアンケートを実施します。回答を回収しながら、テキストマイニングのツール(下図参照)等を用いて、即座に回答内容を見せることで、興味・関心が多いものや、自分が気付かなかった視点に視覚的に気付かせることができます。
● 主体的な学びへの誘い
ここでは、アンケートの内容を子供たちと一緒に話し合いながら板書に整理することで、興味・関心が多様化していることやそれぞれの感じ方に違いがあることを知ることが大切です。
「興味のあることを伝えたい」「友達の考えを知りたい」などの学びの必要感をもつことで主体的な学びが生まれ、単元の学習課題「きょうみをもったことをクラスの友達にしょうかいしよう」を子供たちと一緒につくっていくことができます。
イラスト/横井智美