特別支援学級の指導で大切な、運動面と動作面の課題に取り組もう 。自分自身に起こる良い変化を感じながら伸びていける「身体の動き」の自立活動

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「はじめに子どもありき」の特別支援学級 〜自立活動編〜
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人間の感覚には、五感の他に2つの感覚(固有覚・前庭覚)があります。この2つの感覚がうまく機能しないと身体の動きが悪くなったり、逆に敏感になりすぎてしまったりして、生きづらさにつながります。今回は感覚統合の視点も踏まえて、授業を実践してみました。

【連載】「はじめに子どもありき」の特別支援学級 〜自立活動編〜 #03

執筆/埼玉県公立小学校教諭・奥山 俊志哉

特別支援学級における「身体の動き」について

今回は、自立活動6区分の中で、「身体の動き」の授業実践について紹介します。
「身体の動き」の項目には、大きく分けて5つの項目が設定されています。

⑴ 姿勢と運動、動作の基本的技能に関すること
⑵ 姿勢保持と運動・動作の補助的手段と活用
⑶ 日常生活に必要な基本動作に関すること
⑷ 身体の移動能力に関すること
⑸ 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること

子どもたちの特性や発達段階を踏まえて、一人ひとりの身体の使い方(課題となる面=ぎこちなさ、不器用さ、協応していないなど)について教師が適切に把握し、授業内容を考える必要があります。間違って捉えてしまうと、かえって子どもたちに無理をさせてしまったり、変容がいつまでたっても見られなかったりするので、注意が必要です。
以下に、子どもたちの実態について掲載します。

担任しているクラスに在籍している子どものほとんどが、身体の動きにぎこちなさがあります。体育の授業でよく動画を見せたり、教師が前に出たりして、「動きを真似してみてください」と指示を出すのですが、違う方の手を挙げていたり、足の動きが違ったりなど、なかなか真似をすることが難しいようです。
私はこの光景を目の当たりにして、子どもたちの間で、おそらくボディーイメージがつかみ切れていないのではないかと考えました。自分の体の構造がよく分かっていなかったり、自分の手足がどうなっているのか意識をしたりすることが、経験としてこれまでに少なかったのではないかと思いました。
粗大運動について前述しましたが、微細運動についても同様で、苦手意識を感じている子どもたちが在籍しています。のりやはさみの使い方を見ると、対象物を見ながら、何かを貼ったり切ったりすることが苦手な子もいれば、まっすぐに貼ったり切ったりが難しい子もいます。のりやはさみをうまく使えず、気分を乱してしまう子もいます。字を書くことについては、指先の力加減が難しく、筆圧濃く書きすぎてしまいすぐに疲れてしまう子がいる一方で、指先に力を入れることが難しく、筆圧が薄くなってしまう子もいます。
身体の動きについては、どの子にも運動面の課題(粗大運動)と、動作面での課題(微細運動)の両方があると見取れましたので、これら2つの運動の改善を自立活動で行うことが必要だと考えました。
自立活動の授業で改善に取り組むにあたり、注意した点があります。それは、訓練的な活動にならないようにすることです。訓練…すなわち作業的だったり、いかにもトレーニング的だったりしないように。子どもたちが興味関心を持てる内容や課題を設定し、楽しんで取り組め、達成感を感じられるような工夫をしました。
また、これらの課題を「伸びしろ」として捉えられるよう、子どもたちにはよい変化(伸び)があったかどうか、授業の終わりに毎回聞くようにしました。自分自身に良い変化が起こっていることを感じながら、前向きな気持ちで様々な活動に取り組んでほしかったのです。
授業のタイトルは「マッスルランドへレッツゴー!」としました。以下に詳細を書いていきます。
マッスルランドということで、4つの学習の場を設定しました。

表組1

1ヵ月、継続してやってみました。子どもたちはいつも、とても意欲的に活動していました。以下に、伸びが感じ取れる子どもたちの振り返りをいくつか掲載します。

表組2

子どもたち全員の感想を掲載しました。何かしらの学習の場で、子どもたちは伸びを実感することができたようです。
マッスルランドを始めて、そろそろ1ヵ月が経とうとしています。マッスルランドはそろそろ終わりです。子どもたちの身体の動き向上のために、さらなる方法を模索していきたいです。

イラスト/難波孝
バナーイラスト/イラストAC


奥山 俊志哉(おくやま としや)
1990年福井県生まれ/京都教育大学卒業、京都教育大学連合教職大学院修了 教職修士(専門職)/現在、埼玉県公立小学校教諭。
2024年現在、小学校教諭11年目(通常学級5年 特別支援学級6年)/自閉症・情緒障害学級担任、特別支援学級主任、特別支援教育主任/児童発達支援士資格 非営利活動任意団体空に架かる橋Iメンバー/TOSSサークル「自閉・情緒学級における授業づくり検討会」代表
「実践みんなの特別支援教育」(Gakken)


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