小5社会「日本の工業生産と工業地域の特色」指導アイデア
執筆/札幌市立新札幌わかば小学校教諭・千葉拓士
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
札幌市立山鼻小学校校長・佐野浩志
目次
年間指導計画
・国土の地形と気候の概要
・低い土地のくらし
・高い土地のくらし
・あたたかい土地のくらし
・寒い土地のくらし
・米づくりの盛んな地域
・水産業の盛んな地域
・日本の工業生産と工業地域の特色
・自動車工業の盛んな地域
・工業生産を支える貿易や運輸
・放送などの産業とわたしたちのくらし
・情報を生かして発展する観光業
・情報を生かして発展する販売業
・情報を生かして発展する運輸業
・国土の自然災害
・私たちの生活と森林
・公害からくらしを守る
目標
我が国の工業生産について、工業の種類、工業の盛んな地域の分布、工業製品の改良などに着目して、地図帳や地球儀、各種の資料で調べてまとめ、工業生産の概要を捉え、工業生産が国民生活に果たす役割を考え、表現することを通して、我が国では様々な工業生産が行われていることや、国土には工業の盛んな地域が広がっていること、工業製品は国民生活の向上に重要な役割を果たしていることを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①工業の種類、工業の盛んな地域の分布、工業製品の改良などについて地図帳や地球儀、各種の資料などで調べて、必要な情報を集め、読み取り、工業生産の概要を理解している。
②調べたことを文などにまとめ、我が国では様々な工業生産が行われていることや、国土には工業の盛んな地域が広がっていること及び工業製品は国民生活の向上に重要な役割を果たしていることを理解している。
思考・判断・表現
①工業の種類、工業の盛んな地域の分布、工業製品の改良などに着目して、問いを見いだし、工業生産の概要について考え表現している。
②工業製品と国民生活を関連付けて、工業生産が国民生活に果たす役割を考えたり、学習したことを基に消費者や生産者の立場などから多角的に考えて、これからの工業の発展について自分の考えをまとめたりして、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
①我が国の工業生産の概要について、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
学習の流れ(8時間扱い)
問題をつくる 2時間
- 「工業」の意味を確認し、工業製品の改良について調べる。
- 工業製品を分類したり生産地を調べたりして、日本の工業生産の特色を調べる意欲をもつ。
(学習問題)
日本の工業生産には、どのような特色があるのだろう。
追究する 5時間
- 地図や統計資料を基に、日本の工業の特色や盛んな地域の広がりを理解する。
- 大工場と中小工場の違いについて考え、表現する。
- 伝統的な工業生産について地図資料などを基に調べる。
- 高い技術力と工場同士の協力に着目して、国内外で評価されるものづくりについて調べる。
- 日本の工業生産の課題について、複数の資料を関連付けて考え、話し合う。
まとめる 1時間
- 1人1台端末を活用し、学習したことを基に日本の工業生産についての1分間スピーチを行い、日本の工業生産の特色について理解を深める。
問題をつくる
身の回りの工業製品の分類や生産地調べを通して、学習計画を立てる。(1、2/8時間)
導入のくふう
原材料と工業製品をつなげたり、身の回りの工業製品を調べて分類したり地図に位置付けたりする活動からスタートすることで、生活とのつながりを実感しながら学習を進めることができるようにする。
1時間目
原材料と工業製品を結び付けたり工業製品の進化を調べたりして、工業製品に関心をもつ。
原材料と工業製品を結び付けてみましょう。
原材料から人の役に立つものをつくるのが工業なんだね。
まだまだ工業製品はたくさんあるね。文房具や洋服も……。
工業製品はどう変化してきたのかな?
洗濯機や電車の写真を古いものから並べ替えてみましょう。
どんなことがわかるかな?
NHK for School クリップ動画「せんたく機の進化」
昔よりも機能がよくなって、生活が豊かになったよ。
もしも工業製品がなかったら、どうなるかな?
生活が不便になってしまうよ。
私たちの生活は、工業製品に支えられているね。
工業製品がどこでどのようにつくられているのか、調べてみたい。
2時間目
工業製品の仲間分けをしたり、工業製品の生産地を調べたりして学習問題をつくる。
身の回りにはどんな工業製品があるかな?
工業製品を仲間分けしてみよう。
薬は食品工業かな?
私は化学工業の仲間に入れたよ。
対話的な学びのポイント
1人1台端末にあるオクリンクなどを使って、工業製品を仲間分けする活動をしましょう。1人1人の活動を保障することで、友達との共通点や違いに目が行き、対話が生まれ理解が深まります。
工業の種類ごとに分類することができたね。
家の工業製品はどこでつくられているのかな?
身の回りの工業製品の写真を撮影して、共同編集で「工業製品生産地マップ」をつくろう。
主体的な学びにつながるポイント
タブレット型端末を持ち帰って撮影したり、Googleドキュメントなどを使い、友達と共同編集したりすることで、工業製品を身近に感じながら楽しく活動することができます。
日本各地に工場があるけれど、特に工業が盛んな場所がありそう。
原料が手に入りやすい場所でつくられているのかな?
どんな工業の種類が多いのかな?
日本の工業生産には、どのような特色があるのだろう。
追究する
工業の盛んな地域の分布や工業製品の改良などについて調べることを通して工業生産の概要や課題について理解するとともに、日本の工業生産の特色について考え表現する。(3、4、5、6、7/8時間)
調べ方のくふう ーICTの活用で実感を伴った学びにー
「日本の工業生産には、どのような特色があるのだろう。」という学習問題を解決するために、動画資料やデジタルコンテンツを積極的に活用して、実感を伴った理解を促すようにします。
3時間目
地図や統計資料を基に、日本の工業の特色や工業の盛んな地域の広がりを理解する。
資料から、どんなことがわかりますか?
資料提示のポイント
「機械」という文字を隠して提示したり、時系列で少しずつ提示したりするようにしましょう。見せたい部分だけに絞ったり、注目させたい部分をあえて隠したりして提示するやり方を様々な学習で取り入れていくと、変化や特徴に注目してグラフを読み取る力を育てることができます。
機械工業や化学工業の割合が大きくなってきているよ。
資料から、日本の工業生産の特色が見えてきたね。
工業生産はどんなところで盛んなのかな?
東京都や愛知県、大阪府などが盛んなようだよ。
中京工業地帯が生産額1位だ。
機械工業って、何をつくっているのかな?
太平洋側に工業の盛んな地域が集まっているよ。
海沿いに多いことには意味がありそうだよ。
工業が盛んな地域の共通点を調べてみたいな。
1人1台端末を使って、地形、人口分布図、交通網に工業地域を重ね合わせてみましょう。どんなことがわかるかな?
NHK for School クリップ動画「工業がさかんな地域の特ちょう」
高速道路や港の近くに広がっているね。
高速道路を使って全国に製品を輸送できるからなんだね。
貨物船で製品を海外にも輸送できるよ。
原料を輸送してくるためにも必要だね。
4時間⽬
統計資料を基に、大工場と中小工場の違いについて考え、表現する。
イラスト/(資)イラストメーカーズ