安全な水泳授業~プール事故防止のための事前学習~〔ダウンロードプリント付〕
水泳学習で重要なことの1つが、安全確保です。プールでの事故を起こさないために、子供たち自身が自分の命を守れるように水泳学習の前に事前学習をしておくことが大切です。水泳学習の前に子供たちに気を付けることを伝えることでプールでの事故防止に役立ちます。ワークシートがダウンロードできますので、事前学習後や宿題として、子供たちにワークシートを配付して、気を付ける箇所を確認するとよいでしょう。
監修/公益財団法人日本ライフセービング協会
目次
事前学習①「プールに入る前に」
プールに入る前やプールに入ったときに、気を付けたい10のポイントです。子供たちにイラストを見せながら、どのようなことに気を付けるとよいのかを伝えましょう。クイズ形式にすると楽しみながら学べます。
プールに入る前、プールに入ったときにどんなことに気を付けるとよいでしょうか。上の絵を見て、気付いたところはありますか。みんなで考えてみましょう。
はい、私は3番の子供が走っていることが気になりました。
なぜ、気になったのですか。
プールサイドでは走らないで歩くようにするとよいと思います。
なぜ、走ってはいけないのですか。理由が言える人。
プールサイドで走るとすべりやすいので危ないからです。
はい、そのとおりですね。みなさん、プールサイドでは歩くようにしましょう。
子供たちとやり取りしながら、プールに入る前やプールに入ったときに気を付けるところや危険な行為などを学べるようにします。子供から答えが出ないときには、目の前の子供たちの様子や時間の状況などに応じて、ヒントを出すなどして子供たち自身が気付けるようにするとよいでしょう。
プールに入る前に気を付けたい10のポイント
❶
プールに髪の毛を落とさないためや、プールの中で安全を確認しやすくするために、目立つ色の帽子をかぶりましょう。
❷
体をきれいにし、そして体を水に慣れさせるため、シャワーは、通り過ぎるだけでなく、しっかりと浴びましょう。
❸
プールサイドはすべりやすいので、走らずに歩きましょう。
❹
見学をするときは、日かげに入り、十分に水分をとって、熱中症に気を付けましょう。
❺
水の中で足がつると、パニックになり、おぼれてしまう危険があるため、準備体操は大切です。
❻
浮き具を付けるときは、付けている場所が正しいか、もしくは空気がぬけていないかなどを確認しましょう。
❼
プールサイドでふざけ合うと、プールに落ちたり、けがをしたりするおそれがあるので、やめましょう。
❽
安全に水へ入る方法を知っておきましょう。
〇スライドイン
①体に水をかける。
②プールに背を向けるように両腕で体を支える。
③後ろ向きのままゆっくりとプールに入る。
・
〇スリップイン
①プールの様子を確認し、体に水をかけて水温を確かめる。
②正面を向いたまま両腕で体を支える。
③おしりをすべらせて、ゆっくりとプールに入る。
❾
体調がよくなかったり、食事をぬいたり、睡眠が不足したりしていませんか? そんなときは無理をせずに、見学しましょう。
❿
プールサイドからのプールへのジャンプは、人が下にいたときに重大な事故につながるため、絶対にしてはいけません。
事前学習②「水に入ったら」
水に入ってから気を付けたい8のポイントです。子供たちにイラストを見せながら、どのようなことに気を付けるとよいのかを伝えましょう。
水に入ってからはどんなことに気を付けるとよいでしょうか。上の絵を見て、気付いたところはありますか。みんなで考えてみましょう。
6番のところで、泳いでいる人と人がぶつかっているので、危険です。
はい、そうですね。では、泳いでいるときに人と人とがぶつからないようにするにはどのようにすればよいでしょうか。
周りのことをよく見て、プールでのルールを守ることです。
はい、そのとおりです。泳ぐときは、人とぶつからないように、ルールを守って活動しましょう。
子供たちとやり取りしながら、水に入ってから気を付けるところや危険な行為などを学べるようにし、水難事故防止に役立てましょう。子供から出た回答は、ポイントになくても否定しないで、いったん認めます。そして、答えに導けるようなヒントを出すなどして子供たち自身が気付けるようにするとよいでしょう。
水に入ったら気を付けたい8のポイント
❶
プールから上がった後は、早めにタオルで体をふき、着がえましょう。いつまでも体がぬれていると、体温がうばわれてしまいます。
❷
プールから上がった後は、プールの水にふくまれる塩素が体に付いています。しっかりとシャワーで洗い流しましょう。
❸
活動中、先生の指示にはすぐに注目しましょう。いつまでもさわがしいと、本当に助けを求める声が聞こえないかもしれません。
❹
水中での活動を行うときは「バディ」が大切です。おたがいを守り合うのがバディの役目です。
❺
気温や水温が低いと、寒さでくちびるが青くなったり、身体がふるえたりします。ひどくなると、思うように身体を動かすことができず、判断力もにぶくなります。そうなる前に無理をせず、早めにプールから上がりましょう。
❻
泳ぐときは、人とぶつからないように、ルールを守って活動しましょう。
❼
プールの中でも、泳げば汗をたくさんかきます。脱水症状にならないためにも十分に水分をとりましょう。また、必要であればエネルギーを補給することも大切です。
❽
安全に水から上がる方法を知っておきましょう。
〇1人で上がる場合
①顔を水面から出し、呼吸を整える。
②ふちに両手を付き、両腕で上半身を引き上げる。
③片足ずつ、水面からゆっくりと上がる。
事前学習③「プールの道具・用具について」
プールの道具や⽤具について気を付けたい9のポイントです。⼦供たちにイラストを⾒せながらどのようなことに気を付けるとよいのかを伝えましょう。
プールにはいろいろな道具や用具がありますね。その道具や用具についてどんなことに気を付けるとよいでしょうか。上の絵を見て、気付いたところはありますか。みんなで考えてみましょう。
5番の子供が危ないと思います。
それはなぜですか。
フロア台の下にもぐると出てこられない場合があるからです。
はい、そのとおりです。水中から出られなくなるおそれがあるので、遊具やフロア台の下にもぐってはいけません。
子供たちとやり取りしながら、プールの道具や用具について気を付けるところや危険な行為などを学べるようにします。各校によって環境や道具・用具などが異なるので、学校に合わせて気を付けたいところを伝えるようにしましょう。
プールの道具・用具の使用で気を付けたい9のポイント
❶
ビート板はみんなが使うものです。大切に使い、使った後は元の場所にもどしましょう。いざというときは、おぼれている人にビート板を投げこむことで、救助することができます。
❷
たんかやバックボードは、緊急時の引き上げや搬送に使用する大切な器材です。むやみにふれないようにしましょう。
❸
レスキューチューブやリングブイは、おぼれている人を救助するための大切な器材です。むやみにふれないようにしましょう。
❹
監視台は、先生やライフセーバーが高い場所から安全を確認するために利用します。子供は上ってはいけません。
❺
水中から出られなくなるおそれがあるので、遊具やフロア台の下にもぐってはいけません。
❻
飛び込みは危険です。飛び込み台には上らないようにしましょう。
❼
万が一、すいこまれる危険もあるので、排水口に近付いたり、さわったりしてはいけません。なにか異変を感じたら、すぐに大人に知らせましょう。
❽
夏の暑い時期に、はしごにさわると、やけどをすることもあります。気を付けましょう。
❾
泳いでいる人とぶつかる危険があるので、緊急時以外はコースロープにつかまらないようにしましょう。いざというときは、コースロープにつかまることで、安全を確保することができます。
水泳学習で注意することの合言葉
プールの水泳学習で注意することの合言葉は「たのしいばしょ」と覚えましょう。
た いそう 大切 前と後
の う(NO)です! ぜったい飛び込みは!
し ゃわーはしっかりていねいに
い そいじゃだめ。ゆっくり歩こうプールサイド
ば でぃで おたがい守り合おう!
し ょうとつ注意! 水の中
よ く食べ、よく寝る、プールの前
ダウンロードプリント
事前学習で学んだことを復習できるプリントがダウンロードできます。子供たちに配付して水泳学習で気を付けることを確認しましょう。
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夏休み前の安全指導①海での事故防止〔ダウンロードプリント付〕
夏休み前の安全指導②川での事故防止〔ダウンロードプリント付〕
プール事故防止のための監視の方法~子どもの命を守る水泳授業~
出典・資料提供:公益財団法人日本ライフセービング協会
日本ライフセービング協会のウェブサイトでは、プールでの水泳学習の授業の前に子供たちと学べる動画などがあり、楽しく学習できます。
https://ls.jla-lifesaving.or.jp/
取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/横石真奈美 イラスト・写真提供/公益財団法人日本ライフセービング協会