小6理科「植物の養分と水の通り道(水の通り道)」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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執筆/福岡県福岡市立吉塚小学校教諭・西村隆之
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県福岡市立美和台小学校校長・岩田勝英
   福岡県福岡市立長尾小学校校長・今村光宏
   福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒

単元目標

植物の体のつくりと体内の水などの行方に着目して、生命を維持するはたらきを多面的に調べる活動を通して、植物の体のつくりとはたらきについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①根、茎および葉には、水の通り道があり、根から吸い上げられた水は、主に葉から蒸散により排出されることを理解している。
②植物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。


思考・判断・表現

①植物の体のつくりとはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②植物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などを行い、体のつくりと体内の水などの行方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

①植物の体のつくりとはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②植物の体のつくりとはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 5時間

第1次 植物の体のつくりと水について調べる

1~2 しおれた植物に水を与えたときの様子の変化について、気付きから問題を見いだす。 

思考・判断・表現①
植物の体のつくりとはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

主体的に学習に取り組む態度①
植物の体のつくりとはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

3 葉から水が出ていくか、条件を整えて調べる。 

思考・判断・表現①
植物の体のつくりとはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

知識・技能①
根、茎および葉には、水の通り道があり、根から吸い上げられた水は、主に葉から蒸散により排出されることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

4 葉の表面のつくりと水の出口を関係付けて調べる。

思考・判断・表現
植物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などを行い、体のつくりと体内の水などの行方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

知識・技能②
植物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉

5 学習のまとめと振り返りを行う。 (授業の詳細)

主体的に学習に取り組む態度②
植物の体のつくりとはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

授業の詳細

第1次 植物の体のつくりと水の通り道について調べる

5 学習のまとめと振り返りを行う。


植物の体のつくりとはたらきについて学んだことを学習に生かそうとしている。

①問題を見いだす

ホウセンカを調べたら、根から吸い上げられた水は、葉から出ていくことがわかったよ。

他の植物も葉から蒸散しているのか確かめてみたいな。

そうだね。校内の植物で実際に調べてみましょう。

 
「ホウセンカ」だけでなく、他の植物を対象として実験を行うことで、共通性・多様性の見方をはたらかせながら、植物の根から吸い上げられた水は、主に葉から蒸散により排出されることの理解を深めることができます。また、「ホウセンカ」を対象に行った実験の方法を生かし、比較したり、条件を制御したりしながら、実験を行うことを通して、問題解決の力が一層育成されるとともに、学んだことを学習に生かすようにすることができます。


ホウセンカと同じように、他の植物も根から吸い上げられた水は葉から蒸散されるのだろうか。

②予想する

ホウセンカと同じように、他の植物も、根から吸い上げられた水は葉から蒸散すると思うよ。

葉が細い植物は蒸散していないんじゃないかな。

サクラの木のような大きな植物でも蒸散しているのかな。


多くの学校では、樹木も含めて植物が数多くあり、子どもたちも普段から目にしています。ホウセンカでの実験方法をそのまま用いることができるので、「この植物だったらどうだろう?」と実験する植物を自ら選択し、意欲的に実験に取り組むことが期待できます。

③解決方法を考える

どのように実験を行うとよいですか。ホウセンカの実験をもとに、自分で実験計画を立てましょう。

変える条件は、葉があるかないかの1つだね。

同じ種類の植物で、大きさが同じくらいのもので調べるといいね。

水蒸気が出ていかないように、ビニール袋の口をしっかり閉じないといけないね。

④観察・実験をする

 
「ホウセンカ」で実験を行った経験を生かすことができているかを見取り、条件を制御することができていない場合は、適宜助言を行いましょう。葉がある(ア)と、葉がない(イ)の比較は、きっと子どもたちも容易に理解し、準備を行うことができることでしょう。蒸散の有無を確かめるために、条件制御以外の準備で必要なことは何かを再度考えることができるようにしましょう。

観察・実験の手順はホウセンカの実験のときと同様です。

葉をつけたままのホウセンカ以外の植物と、葉を取りはらったホウセンカ以外の植物のイラスト

<実験を行う前日>

どの植物で実験を行うか決め、大きさが同じくらいのものを探しておく。

<実験日(朝)>

片方の葉を取り除き、両方にビニール袋をかぶせ、袋の口をモールなどで閉じる。

<実験日(午後)>

袋に水滴がついているかを調べる。


蒸散は、気温や温度によって左右されます。事前に天気予報を確認し、高温で乾燥している日を選んで、実験を行うようにすると結果がわかりやすいです。葉を取り除いた植物でも、袋の中が曇ることがあるので、袋の中の曇り具合や水滴の付き方のちがいを捉えることができるようにしましょう。

⑤結果の処理

実験結果を学級全体で確認します。その際、蒸散している、していないといった結果のみならず、撮影した画像を提示して説明するように促します。そうすることで、根から吸い上げられた水は、葉から蒸散することについて、実感を伴いながら理解できるようになります。

 
袋の様子を観察するため、ICT端末を活用して、実験の前後の様子を静止画で記録するようにしましょう。また、各自の結果を学級全体で共有する場合は、表計算ソフトを学級全体で共有して、各自が結果を入力するようにします。そうすることで、学級全体の結果を瞬時に共有することができます。

表計算ソフトによる結果の表
表計算ソフトを学級全体で共有した例

⑥結果を基に考察する

他の植物の実験結果から、植物の蒸散についてどんなことが明らかになりましたか。

結果は、予想通りだったよ。他の植物も、葉のあるほうの袋に水滴がついていたので、根から吸い上げられた水は葉から蒸散していると考えられるね。

蒸散の仕組みは、ホウセンカと同じだったよ。根から吸い上げられた水はホウセンカと同じように葉から蒸散するんだね。

⑦結論を出す


ホウセンカと同じように、他の植物も根から吸い上げられた水は葉から蒸散される。

⑧振り返る

これまで学習したことを生かして、身近な植物もホウセンカと同じように蒸散していることがわかったよ。

植物によって、袋についている水滴の量が違っていたように感じたよ。植物の種類によって、蒸散する量が違うのか、調べてみたいな。これまでの学習を生かすことができるね。

 
これまで学習したことを生かして、問題を見いだしたことや解決の方法を発想できたことを、「振り返り」などを通して共有しましょう。また、学習中の子どもの姿をほめるなど、価値付けることで、自ら学んだことを学習に生かそうとする態度を養いましょう。

板書

本時は、個人での追究を想定しているため、板書での学びの過程を整理することはせず、スライドなどを用いたレポートを配布して、それぞれまとめるようにしましょう。また、実験の結果については、ICT端末を用いて共有し、他の人の実験結果も見られるようにし、学級全体の結果を踏まえて考察するように促すことが大切です。

実験レポートの例
レポートの作成例

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●高温で乾燥している日を選んで、実験を行うようにしています。屋外での観察、実験では、帽子をかぶるなどの熱中症対策をしましょう。
●植物の近くに毒のある生物がいることが考えられます。実験前に必ず周囲の安全を確認しましょう。
●実験後は、必ず手を洗いましょう。

イラスト/難波孝

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