小2図画工作科 ひかりのプレゼント〜氷バージョン〜
今回のテーマは「造形遊び」です。低学年の造形遊びでは、子供が材料に進んで働きかけ、思いのままに発想や構想を繰り返し、技能を働かせながらつくることを通して学習します。今回は、色を付けて「自分の氷」をつくり、冬の寒さと雪の白さを生かした雪の多い寒い地方ならではの活動を紹介します。
執筆/北海道公立小学校教諭・森實祐里
監修/文部科学省教科調査官・小林恭代
北海道教育大学教授・花輪大輔
目次
本題材について
低学年の造形遊びでは、子供が材料に進んで働きかけ、思いのままに発想や構想を繰り返し、技能を働かせながらつくることを通して学習します。材料は、この時期の子供が関心や意欲をもつ、扱いやすい身近なものが考えられます。例えば、土、粘土、砂、小石、木の葉や小枝、木の実、貝殻、雪や氷、水などの自然物は、地域や季節によって、様々なものが手に入ります。
ここでは、北海道という地域の、冬の季節を生かして、雪や氷を使った造形遊びをする活動を紹介します。
子供は冬の間、通学路や校庭などで氷を見付けては喜んで触ったり集めたりします。子供にとってはいつも見慣れている氷ですが、今回は、色を付けて“自分の氷”をつくり、冬の寒さと雪の白さを生かした北海道の寒い地方ならではの活動を行いました。
材料の特徴によって活動の可能性は変わってきます。ぜひ、地域や季節の材料を生かして、子供が楽しく夢中になる造形遊びに挑戦してみてください。
また、本事例では、子供が資質・能力を働かせて活動する姿も紹介していきます。
題材の目標
雪や氷の形や色などを基に造形的な活動を思い付き、色氷を並べたり、つないだり、積んだりするなど手や体全体の感覚などを働かせ、活動を工夫してつくり、楽しく雪や氷で造形遊びをする活動に取り組む。
題材の評価規準
●知識・技能
知 色氷を並べたり、つないだり、積んだりするときの感覚や行為を通して、いろいろな形や色などに気付いている。
技 氷や絵の具に十分に慣れるとともに、色氷を並べたり、つないだり、積んだりするなど手や体全体の感覚などを働かせ、活動を工夫してつくっている。
●思考・判断・表現
発 色氷の形や色などを基に、自分のイメージをもち、色氷の形や色などを基に造形的な活動を思い付き、感覚や気持ちを生かしながら、どのように活動するか考えている。
鑑 色氷の形や色などを基に、自分のイメージをもちながら、自分たちの活動の面白さや楽しさなどについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を広げている。
●主体的に学習に取り組む態度
主 つくりだす喜びを味わい楽しく雪や氷で造形遊びをする学習活動に取り組もうとしている。
材料や用具
《子供》防寒着
《教師》カップ1人2〜5個
着色剤:透明な色になるもの〈インク、凧絵の具、入浴剤(洗濯で取れる)など〉
じょうろ:カップに水を注ぐため
ブルーシート:カップの水を凍らせるときに、降雪を避けるため
※スコップやバケツ:雪を使って、氷の並べ方や積み方を工夫できるように用意します。ただし、雪だけを使う活動にならないように留意します。
題材の指導計画
指導のポイント
事前につくって用意しておいた色氷を見せることで、子供たちは氷に興味をもち、「自分たちも色氷をつくりたい」「色氷がほしい」と、色氷のよさに気付いていきます。
そこで、1週間前ぐらいから、子供たちと色氷づくりを始めます(寒さと風力によって、凍る時間が違うので余裕をもって準備をします)。防寒着に色が付着した場合、洗濯で色が落ちることから入浴剤を使用して色を付けるとよいでしょう。
子供がカップに自分の好きな色の入浴剤を入れて雪の上に置き、そこに教師が水を注いでいきます。低学年の子供たちにじょうろの操作は難しく、水があふれたり、入れた時の勢いで跳ね返ったりカップがひっくり返ったりするため、水は教師が入れることとしました。
屋根のある屋外で、風通しのよい場所が適しています。適当な場所がない場合は、日陰にカップを置き、その上にブルーシートをかぶせ、雪が入らないようにしておくとよいでしょう。
着色は入浴剤や凧染料など、透明になるものを選ぶと、光を通す氷ができます。水とインクの量の調整は教師が試しておき、子供にどのくらいまで入れてもよいか示すようにします。
活動の流れと指導上の留意点
◎導入
自分がつくった色氷に出会い、色氷のよさを味わいながらどのような活動ができそうか考える。(10分)
カップから自分のつくった色氷を取り出します。凍ると少し色が薄くなっていることに気が付き、驚く姿が見られました。また、自分がつくった氷の色の面白さを感じ喜んでいました。すぐに持ち上げて友達と見せ合ったり、太陽の光を通して見たりしていました。そして、「きれい!」「キラキラしてる!」「この色いいね!」などと、友達といっしょに色氷の美しさやよさを味わい、どのような活動ができそうか考えていました。
【展開1】
感覚や気持ちを生かしながら、どのように活動するか考え、活動を工夫してつくる。(30分)
自分のつくった色氷を大切そうに両手で抱えて、広くて日なたになっている活動場所に移動しました。
どんなことができそうか聞いてみると、「雪の上に並べたい」「雪に刺してみたい」「光が当たりやすいように雪山をつくってその上に置きたい」などたくさんの意見が出ました。
早速、自分の好きな場所に移動して活動していきました。
この子供たちは、雪の上に色氷の色が映って「雪の上が光ってきれい!」と喜び、いろいろな角度で色を映すことを試していました。
この子供たちは、雪の上で、色氷の並べ方を友達と考えていました。このように、感覚や気持ちを生かしながら、どのように活動するか考える姿が見られました。
【展開2】
色氷を使って、友達と交流しながらさらに活動を広げていく。(40分)
この子供たちは、友達と協力して穴を掘って、氷を並べました。
穴がハート型にでき上がりました。ハート型の影がはっきりするように、穴の角を丁寧に形づくり、目立つようにしました。
友達に自分の大切な色氷が踏まれないように、端のほうで、1人で活動する子供もいました。無理に友達といっしょに活動するように声をかけません。離れて活動していても、感じたことや思ったことを交流し合ったり、友達の活動を見て参考にしたりして、活動が進んでいきました。
「いい並べ方だね!」と友達に言われ、笑顔で「ありがとう!」と答えていました。
友達に、氷を踏まないように気を付けてほしいと伝えると、友達から踏まれないようにするために「氷の周りに雪で壁をつくったら?」とアドバイスをもらいました。そこで、並べた氷の周りを囲むように壁をつくって、活動を工夫して大満足でした。
この子供たちは、雪山をつくって氷を乗せました。さらに、雪山に穴を開けてみました。その穴の所に氷を刺してみたり、並べてみたり、友達と相談しながら何度も並べ替えていました。
活動を見に来た友達に、「ここから覗くとね……」と説明していました。
この子供たちは、雪に氷を刺していきました。はじめは縦に並べているだけでしたが、尻滑りをしている友達を見て、自分たちも滑り台をつくることを思い付きました。
そして、穴を掘り、その横に色氷を刺してカラフルな滑り台ができました。
体全体を使って活動をつくり、自分たちで滑って楽しんでいました。
この子供たちは並べ方を何度も変えていきました。
氷がもっとたくさんほしいね。
たくさんあれば、もっといろんなことができるのにな。
そこで、友達を誘ってたくさんの氷を集め、みんなで氷の国をつくりました。
◎振り返り
自分たちの活動の面白さや楽しさなどについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を広げる。(10分)
活動の最後に、お散歩タイムを設けました。子供たちは、友達のところに行って、遊んできます。
友達が遊びに来ると、自分の活動について説明します。
ここが入り口でね、ここを通って入ってね。ここには氷の王様がいるんだよ!
いっしょに遊んで楽しみながら、友達や自分の活動の面白さや楽しさを味わい、自分の見方や感じ方を広げる姿が見られました。
造形遊びの活動が終わってから~他教科との学びの関連~
生活科の単元「スノーフェスティバル」で、1年生を招いて遊ぶ活動がありました。
そこでは、子供たちが色氷をつくったり、雪に色をつけたりして、滑り台や雪だるまをつくったり、1年生といっしょに雪に色をつけるなど、この活動の学びを生かしている姿が見られました。
子供たちは、図画工作科で経験し、学んだことを次の学習に生かしていました。
造形遊びで培った力は、単に氷に色をつけたということではなく、活動を考え日常に広げていく力、さらに工夫して活動をつくっていく力になっています。また、友達と協力したり、自分の活動のよさを知ったり、他にもたくさんの学びがありました。
構成/浅原孝子