小1国語科「すきなこと、なあに」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小1国語科「すきなこと、なあに」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:すきなこと、なあに(光村図書・こくご 一上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・小野田雄介

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、自分が好きなことを相手に話して伝える活動を通して、伝え合うために必要な事柄を選ぶ力を育てていきます。
また、話したことをもとに、それを文章に書き表す活動を通して、語と語や文と文との続き方に注意して書く力を育てていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「1. 単元で身に付けたい資質・能力」で示した資質・能力を育むために、二つの言語活動を設定しました。

単元前半では、ペアやグループになって、自分が「すきなこと」を相手に話して伝える言語活動を行います。学年が上がっていけば、伝えたいことを個人で考えることも可能になっていきますが、この時期の1年生では、難しいことが予想されます。そこで、友達と話すという言語活動を設定し、それを通して伝え合うために必要な事柄を選べるようにしました。

この言語活動では、話題は「すきなこと」と決まっています。児童には「すきなこと」は複数あることが想定されるので、その中から伝えることを選択することになります。
ここで気を付けたいことは、児童に、いくつかある「すきなこと」の中から伝えたいことを選ぶ、ということを自覚的に行わせることです。取り組みやすいように「すきなこと」を話題に設定しているので、それについて話すことはできると思われますが、その分、複数の選択肢の中から選ぶことについては無自覚的になることが予想されます。
「4. 指導のアイデア」に示したような工夫を加えることで、言語活動が効果的に展開していってほしいものです。

単元後半では、友達に話した「すきなこと」を文章に書き表す言語活動を行います。
上述した言語活動によって、伝えたいことや事柄の順序(「すきなこと」→「わけ」)については整理できたところで、この言語活動は始まります。これまで話してきたことが伝わるように、書き表し方を考える力の育成を目指します。

単元前半の言語活動では、話し言葉を使って活動するため、語と語や文と文の続き方については意識が向きにくいものです。ここでは、書き言葉を使って文章にすることで、そうしたことに意識的になれるようにしたいところです。

教科書p82を見ると、文の切れ目に句読点があります。これらの記号は、語と語や文と文の続き方を考える上で、よいヒントとなるでしょう。「、」や「。」によって、読み手は文の切れ目をつかみやすくなるからです。

例えば「、」に着目させることで、一つの文の中にも、いくつかのまとまりがあることが見やすくなるでしょう。また「。」に着目させることで、二つの文章があることが見やすくなります。こうした記号に着目させることで、語と語や文と文の続き方に注意しながら書き表す力を育んでいきましょう。

4. 指導のアイデア

単元前半の言語活動において、いくつかある「すきなこと」の中から伝えたいことを選ぶ、ということを自覚的に行わせるために、三つの工夫を加えます。

一つ目は、最初の話合いでは、ペアで好きなことについて拡散的に話す場面を設定することです。
教科書p80のように、この場面では形式的にせず、話し手が「すきなこと」を、聞き手とのやりとりを通して話せるようにします。こうすることで、児童に「すきなこと」が複数あることを自覚させていきます。

二つ目は、2回目の話合いでは、グループになって、「わけ」も伝える場面を設定することです。
「わけ」も伝えることで、「すきなこと」がより相手に伝わります。そのことを児童と確認した上で、複数ある「すきなこと」の中から、「わけ」を言えるものはどれか考えさせていきます。
こうすることで、児童は「すきなこと」の中から伝え合うために適した事柄を選ぶことになるでしょう。

三つ目は、単元後半で、話したことを文章にする言語活動を設定することです。
この言語活動については後ほど紹介しますが、ここで触れたいことは、自分の「すきなこと」が文字になって、学級の友達に知らされる、ということです。
入学からおよそ3か月の時期に実施されることを想定すると、少しずつお互いのことを分かってきた頃でしょう。児童に、文字にすることでみんなが読めることを確かめた上で、自分の「すきなこと」のうち、どれをみんなに伝えたいか、考えさせる場面を設定しましょう。
そうすることで、児童は、選ぶ、という行為について自覚的になっていくと考えられます。
同時に、指導事項としては第5・6学年になりますが、話し言葉と書き言葉の違いについても目を向ける機会となります。小学校入学前の子供たちの言語活動はほぼ話し言葉で行われていたと思われます。そこから、小学校に入学して文字を書くことを通して、自分の言葉が「見える」ことや「残る」こと、そして、多くの人に「伝わる」ことを学び、言葉そのものに対しても、自覚的に使っていく契機となることを教師は認識しておきたいところです。

このような三つの工夫を加えることで、言語活動を有効に機能させていきましょう。

5. 単元の展開(7時間扱い)

 単元名: すきなこと、なあに

【主な学習活動】
・第一次(1時
①「すきなことをともだちにしょうかいしよう」という学習課題を設定し、見通しをもつ。 

・第二次(2時3時4時5時6時
② ペアで、「すきなこと」を伝え合う。
③「すきなこと」とその「わけ」を考えて、グループ発表の準備をする。〈 端末活用(1)〉
④ グループで、「すきなこと」と「わけ」を伝え合う。〈 端末活用(2)〉
⑤ 教科書p82 の作例を視写して、マス目原稿での書き表し方を知る。
⑥「すきなこと」と「わけ」を文章に書き表す。

・第三次(7時
⑦ 書いた文章を読み合って、感想を交流する。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

本時では、学習課題を設定し、見通しをもつことを目指します。単元の導入なので、楽しい雰囲気を作って、主体的に活動できるようにしていきたいところです。

そこで、最初の学習活動には先生の「すきなこと」クイズを設定しました。
入学から3か月ほど学校生活を共にしてきているので、先生の「すきなこと」について、児童もある程度見当がつくことでしょう。この活動で大事なことは、「3.言語活動とその特徴」で触れたように、「すきなこと」をたくさん示すことです。下に示したようなやり取りを通して、児童が、楽しく先生の「すきなこと」を引き出していけるようにしましょう。

学習の見通しをもつ段階では、この時期であれば、教科書を読んで見通しをもたせる方法が一般的でしょう。一方で、学級の実態に応じて、「『すきなこと』はどうやって友達に伝えますか」等の発問をする方法もあります。これまでの学習経験をもとに「班で順番に話す」「紙に書く」といった反応が得られるかもしれません。

先生には「すきなこと」がたくさんあります。何だと思いますか?

おにごっこ! ドッジボール!

よく分かりましたね。でもまだ他にもありますよ。

う〜ん、なんだろう…

それではヒントですよ。先生は学校でこの時間が一番好きです。

分かった! 勉強!

素晴らしい! でも同じぐらい好きなのがあります。

給食だ!

正解です! でも他にもあるんですよ…


【2時間目の板書例 】

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イラスト/横井智美

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