遊びながら漢字テストで100点を取る方法【プリントつき】

一年生の漢字は全員が満点を取れなくてはなりません。「集めて、遊んで、使ってみて」学年のまとめに向けて楽しく漢字を習得させる工夫を白川静漢字教育賞受賞者の栗林育雄先生が解説します。一年生配当漢字全80字のプリントつき!

執筆/新潟県公立小学校教諭・栗林育雄

漢字テストで100点を取る方法【プリントつき】

大人になりたがる気持ちをくすぐる

一年生の子どもたちは、背伸びをしたくて、とにかく大人のまねをしたがります。大人がやっていることや使っている物への憧れが特に強く、お手伝いをたくさんしたがるのも、この時期です。それが、成長とともに少しずつ面倒くさくなって、やりたがらなくなるのは、どこか漢字の学習とも似ています。

ひらがな、カタカナの学習を終えた一年生にとって、「少し大人に近づいた気分」を味わえる漢字は、憧れの学習です。「漢字をたくさん覚えたい」という気持ちが強いこの時期を逃さず、漢字にたくさん親しませ、「漢字が楽しい」「漢字は得意」と思わせることが大切です。

遊びを通して漢字に親しませよう

漢字は「書いて覚える」が基本ですから、繰り返し練習するドリル学習は大切です。しかし、テストのためだけの繰り返し練習ばかりでは、漢字学習を嫌いになるのは当然です。「ひらがな、カタカナよりも漢字の学習は難しい」と言う人もいます。しかし、「き」「さ」「め」「ぬ」といった類似したかな文字の学習よりも「木」「山」「川」といった象形文字のほうが、一年生にはずっと分かりやすいのです。他にも「日」「火」「月」といった象形文字が一年生には多く配当されていますから、イラスト感覚で漢字に親しませると効果的です。まずは、遊びを通して、漢字学習の楽しさを味わわせます。

【関連記事】書き順を唱えて覚える協働的な漢字学習法は、コチラをチェック→漢字を通してコミュニケーション!声に出して読む新式漢字ドリル

漢字でカード合わせゲーム

カードを裏返して並べておき、めくって象形文字の漢字とイラストを組み合わせるともらえるカード合わせゲームです。

漢字でカード合わせゲーム

まずは、カード作りから。イラストカードはあらかじめ印刷しておきます。子どもたちに白紙カードを配り、協力させてもよいでしょう。最初は8組16枚のカードで行い、徐々に枚数を増やしていくとよいでしょう。

漢字でカード合わせゲーム
カードの作成例

負けたくないという気持ちが特に強いのも一年生です。「漢字を知らない」ことが不利になるゲームだと、「どうせ、○○くんには勝てないから」と、すぐにやりたがらなくなります。何度も繰り返すことで漢字に親しませることがねらいです。運で勝ったり負けたりと、やるたびに勝敗が変わるぐらいのゲームが一年生にはちょうどよいのです。「ひらがな、カタカナの学習がようやくという段階での半年で、漢字80字は多いのでは」と言う人もいます。しかし、次から次へと増えていくアニメキャラクターを難なく覚えてしまう子どもたちです。漢字も「覚えさせる」のではなく、コレクション感覚で「集めさせる」と効果的です。

漢字で画数じゃんけんゲーム

裏返したカードを「じゃんけんぽん!」で出し合い、画数が多いカードを出したほうの勝ち。同じ画数の場合はあいこというルールのじゃんけんです。どっちが画数が多いかお互いに確認し合うことにより、遊びながら漢字の画数や筆順などを身に付けさせることができます。

漢字で画数じゃんけんゲーム 一年生で習う二画~六画の漢字
一年生で習う二画~六画の漢字

カードの作り方は、カードに漢字と読みを記入させます。ただし、画数を記入させないこと。その都度、何画か確認し合うことに意味があります。メダルふうのカードにすると、より効果的です。

漢字で画数じゃんけんゲーム

【関連記事】ダウンロードして使える漢字シート→【書き順シート】一年生で習うひらがな・カタカナ・漢字

画数が多いことを逆手にとろう

「画数じゃんけん」を繰り返していると、「もっと画数が多い漢字を使いたい」という気持ちが高まります。「画数が多くなると苦手意識をもつ子が増える」と言う人がいますが、学習にゲーム性をもたせると「画数が多い漢字=強い」というプラスのイメージにつなげることができるのです。

このタイミングで七画以上の漢字を教科書の巻末を使って調べさせ、手持ちのカードに追加させます。

漢字画数パワーアップ大作戦

画数の多い漢字を調べ、カードを追加するとより勉強になります。

漢字画数パワーアップ大作戦 教科書で調べた七画以上の漢字
一年生で習う七画以上の漢字

「すごい。校は十画だよ」「森は、もっとすごいよ。十二画。最強だね」「これを使って早く遊びたいね」

漢字を調べたら、カードを作り、作ったものを使って、またゲームを楽しむ。こうした必要感のある学習と遊びのサイクルが大切なのです。「漢字で画数じゃんけんゲーム」をすると、80個すべての一年生配当漢字に遊びながら親しませることができます。

漢字を使って表現させよう

できるだけ習った漢字を使わせたいものですが、作文や日記の中でうまいぐあいに配当漢字を使えるとは限りません。そこで、漢字を使った五七五づくりを行うと、漢字を効果的に使わせることができます。

漢字で五七五

お題「雨」
 雨なのに かさをわすれた どうしよう
 雨の中 かたつむりだけ うれしそう
お題「赤」
 赤ぐみに ぜったいまけない がんばるぞ
 赤ちゃんが 生まれたんだよ うれしいな

一年生でも、五七五のリズムなら指を折りながら自分の気持ちを簡単に表現できます。日常生活の中のふとしたタイミングで「あ、今、五七五ができちゃった」と次から次へと作品を作る子が出てきます。

家庭にどんどん発信しよう

子どもたちが作った「漢字で五七五」の作品を家庭に向けて積極的に発信しましょう。「おうちの人が読む」というだけで、字を丁寧に書いたり、たくさん作ったりと、一年生の意欲はぐんと高まります。「薄いと印刷に写らないんだよね」と声をかけるだけで、子どもたちは見違えるようにしっかりとした濃い字で書くようにもなります。中には「おうちでも作ってきてもいい?」と聞いてくる子もいます。大いに称賛しましょう。他の子も模倣するようになり、家庭での自主学習の習慣化につなげることができます。

まずは読めるようにしよう

一年生の子が「先生、この字、知ってる?」と得意げに聞いてきたのが「誉」という字でした。「すごいね。どうして書けるの?」と尋ねると、通学路にある酒屋のポスターを毎日見ていたら、いつの間にか覚えたのだそうです。

初めて見た漢字をその場で覚えることは至難の業です。まず読めるようになり、見慣れて、それからようやく書けるようになるのです。ですから、一年生で習う漢字については、教室掲示をし、見慣れさせておくと効果的です。

これでぜんぶ! 一年生かん字プリント

一年生配当漢字80字を短文でつなぎ、「読み」四枚とそれに対応する「書き」四枚に収めました(下に掲載)。拡大して教室掲示したり、たくさん印刷して常備したりして、何度でも取り組めるようにしましょう。

漢字プリントに取り組む子ども

数字だけでイメージすると「80字は多い」気がしますが、「これでぜんぶ! 1年生かん字プリント」をA3の用紙一枚に収めて提示すると、「え、これだけでいいの?」という反応が返ってきます。よく、「漢字を指導している時間がない」という声を聞きますが、小学校では担任が国語を教えることがほとんどなので、国語の時間以外も、積極的に利用するとよいでしょう。

例えば、朝の会でクラスのみんなで声に出して読む時間をつくります。帰りの会を利用し、日直の子に「これでぜんぶ! 1年生かん字プリント」の中から一文を選ばせ、みんなで連絡帳に書くなどの時間を積み重ねるだけでも、ずいぶん力がつきます。

【関連記事】漢字宿題の丸付けひと工夫で子どもが漢字好きになる!→子どもの提出物チェック&コメント術

漢字は勝たせ続けることが大切

読めるようになったら、認定テストに挑戦させます。まずは、読み問題でしっかりと合格させることが大切です。成功体験の連続で意欲を高めていくのです。合格したら認定証にシールを貼って称賛します。一斉にテストするより、朝学習の時間などを利用して、「合格できる自信がついたら挑戦する」やり方がよいでしょう。

かん字認定テストの認定証

不合格の体験は必要ありません。「勝たせ続ける」ことにより、「漢字は得意」という気持ちにさせることが大切です。漢字を完璧マスターさせるための近道はありません。「根を養えば、木はおのずから育つ」と言います。1年生は、しっかりと根を張らせる大事な時期です。少し遠回りのような気がするかもしれませんが、時間をかけて漢字に親しませ、自信をもたせて2年生へとつなげることが大切です。

これでぜんぶ! 1年生かん字プリント

かん字プリント1
※クリックすると別ウィンドウで開きます
かん字プリント2
※クリックすると別ウィンドウで開きます
かん字プリント3
※クリックすると別ウィンドウで開きます
かん字プリント4
※クリックすると別ウィンドウで開きます

・類似したかな文字よりも象形文字である漢字のほうが、一年生には分かりやすい。イラスト感覚で漢字に親しませると効果的。
・ゲーム性をもたせて「画数が多い漢字=強い」というプラスイメージにすると、取り組みやすい。
・読みのテストで「勝たせ続ける」ことで、「漢字は得意」という気持ちを育む。

イラスト/八巻昌代

『小一教育技術』2015年12月号より

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました