メーカーに聞く「学習者用デジタル教科書」製品レポート #3|光村図書出版
1人1台端末が整備され、国の施策によって配布されている学習者用デジタル教科書。2024年4月から小学校の教科書が新版となるに伴い、デジタル教科書も改訂されます。
そこで各社のそれぞれのデジタル教科書には、どんな特徴があるのか。自社製品のよさと特徴、今後の展望などをメーカーの開発担当者に聞きました。今回は光村図書出版さんです。(取材・文/村岡明)
今回の取材先
光村図書出版株式会社
編集第二本部デジタル開発部長
大関正隆氏
目次
同社の発行する教科書(令和6年度小学校)について
- 小学校:国語・書写・生活・英語・道徳
- プラットフォーム:まなビューア
デジタル教科書概況
当社(光村図書)の指導者用デジタル教科書の発行は2005年からと、業界でも早くから取り組んできました。最新の文部科学省による調査では9割以上の小学校で導入されているとあります。学校の授業で完全に定着したと言えるでしょう。
一方、学習者用デジタル教科書の発行は2017年からです。国の普及促進事業もあり、活用が本格化していると感じています。私どもとしては、子供が自ら課題意識や目的意識を持ち、自分に合った学び方で学習に取り組むことで、個別最適な学びと協働的な学びを実現するデジタル教科書をイメージして開発しています。
学習者用デジタル教科書の種類
国語と英語の学習者用デジタル教科書には、紙の教科書と同一内容のデジタル教科書に加え、教材が付加された製品があります。
国語の教材は、「ワーク」「思考ツール」「言葉のたから箱」「マイ黒板」「漢字」「たいせつ」「朗読音声」などがあります。
英語は、動画や音声に加えて「ふりかえり」「アルファベット」「歌・チャンツ」「絵辞典」「カードをならべる」「フラッシュカード」などがあります。
各教材は、画面右下にある「まなぶ」ボタンから利用可能です。
学習者用デジタル教科書の基本機能
まなビューアでは、教科書を絵巻物のようにスクロールして見られる機能があります。これは国語の物語教材や道徳教材などを一覧するのに役立ちます。
また、教科書の全ての文字を読み上げる「きく」という機能があります。読み上げる速さは13段階で調整することが可能です。
さらに教科書の文字色・背景色の変更や、総ルビ、分かち書き、ハイライト表示など、読むことをサポートする機能が充実しており、子供たちは、自分が読みやすいようにカスタマイズして使うことができます。
人気の「マイ黒板」機能
当社の国語のデジタル教科書にある「マイ黒板」は、教科書紙面の右側に立ち上がるワークスペースのような機能です。教科書紙面の言葉や文章、挿絵・写真を触ると、その部分が「マイ黒板」に反映されます。色の変更や移動が可能なので、自分の考えの整理や友だちとの協働作業が容易です。
この機能は、子供たちの考える時間の確保につながり、試行錯誤のしやすさは一人一人の考えを深めるコトに繋がると考えています。先生方からも高い評価をいただいており、令和6年版では、これまで以上に多くの単元でこの「マイ黒板」機能を使えるようにしました。
指導者用デジタル教科書の機能
当社の指導者用デジタル教科書には、各教科とも、先生が授業の準備を軽減できるように、授業展開に活用できる様々なコンテンツやダウンロード資料を多数収録しています。
ダッシュボード機能では、子供たちがデジタル教科書を使っている様子を一覧できます。まずは使用状況の把握。児童が単元・ページごとにデジタル教科書を表示した回数を一覧できます。
次にサポート機能の使用状況の把握。「ふりがな」「明るさ」「ハイライト」など、教科書の見やすさを調整する機能について、どの子がどの機能を使っているのかが一覧できます。これにより、子供の興味関心や状況を把握できるため、個に応じた指導に役立てることができます。
取材を終えて
小学校の授業の中で、もっとも時数が多い国語科。学習者用デジタル教科書に求められるのは「授業で使いやすい」という点でしょう。その点「まなビューア」は一日の長があると感じました。操作に迷うことがほとんどありませんし、学習の手引きとの連携もよく考えられています。
実際、お使いになっている先生にご意見をうかがうと、好意的なものがほとんどでした。特に評判だったのは「マイ黒板」。令和6年度版からは機能追加がなされるとのことなので注目です。
一方で「コラムや言語教材の音声が合成音声なので使いにくい」「教科書本文をテキスト書きダシする機能が欲しい」などの意見も寄せられました。このあたりは、開発コストや著作権の問題が関係すると思われます。学習者用デジタル教科書の利用が本格化していけば、改善されていくのではないでしょうか。
取材・文/村岡明
国語教科書編集者を経て「ジャストスマイル」など教育ソフトを多数企画する。その後教職員向けのネットマガジンを創刊。ソフトウエア開発、Webサービスの開発を20年以上経験している。