スモールステップ+ほめる指導ですべての子がなわとびできる
埼玉県なわとび協会事務局長の戸田克先生が監修した、なわとびハウツー学習漫画が出ました。ドラえもんがキャラクターとして使われた子ども向けの本ですが、指導者が読んでも参考になる内容が盛り込まれています。戸田先生になわとび指導のポイントについてお話を伺います。
目次
教師の指導用としても使える学習漫画のなわとび本
―本書の特徴を教えてください。
戸田 本書は、単になわとびの跳び方を解説する学習漫画ではなく、子どもたちが仲間と関わり合いながら自分でなわとびの技や上達のポイントを見つけていくという趣旨で描かれています。まさに新学習指導要領の主体的・対話的で深い学びを具現化していると言えます。
私自身、ドラえもんが大好きです。そこで、なわとび指導のストーリーの中に、自然な流れでドラえもんのひみつ道具が出てくるようにこだわって話のプロットをつくったので、ドラえもん好きの子どもにも楽しんでもらえると思います。
―学校でなわとび指導の教材としても使うことができますか?
戸田 ぜひ教師の指導用としても使ってほしいですね。
第1章で、エリ先生というなわとび指導の先生が登場します。先生方には、エリ先生の指導方法をお手本にしていただけたらと思います。
エリ先生は、子どもが跳べなくても否定しません。子どもが主体的に取り組み、先生は見守るスタンスです。のび太がうまくできていないと思っても、エリ先生は「まずは、先生と手をつないで跳んでみよう」「ここまでできたよね」とスモールステップで認め、ほめながら指導します。これは、先生方にも真似してもらいたいポイントです。
また、学校でのなわとび指導は、技のカードを渡して、子どもたちがひたすら挑戦することがあるようです。しかし、苦手意識をもっている子どもは技の一覧カードをもらうと、それを見てやる気をなくしてしまうことがあります。技は少しずつ小出しにするシステムが効果的です。
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大人が「なわとびが跳べない子」と思っているだけ
―苦手な子への指導法は?
戸田 まず断っておきますが、「なわとびが跳べない」と思っているのは大人だけということがよくあります。子どもは、楽しんでやっているのです。初めてなわとびをする子は、1回旋2跳躍になることが多いでしょう。それを見て大人は「跳べない子」と思うようですが、1回旋2跳躍でも楽しんで跳んでいるんです。そして、「見て、見て」と得意気に言ってきます。その時、先生は「こ
の子は跳べていない」「苦手」と決めつけずに、まずはできていることを認めて、そこからスモールステップでしっかり指導したいですね。
本書にはどうすれば1回旋1跳躍ができるのか、具体的な指導法を盛り込みました。なわとびには「回旋」「ジャンプ」「回旋とジャンプのタイミングを合わせること」の三つの要素があります。これらを体験しながら体得できるようにすれば、どんどん跳べるようになります。子どもが跳ぶ感覚をつかめるように、教師がどう支援するかが重要です。
さらに、本書では、ロープを適切な長さに調整することや、交差跳びでは「おへそでエックス!」*というかけ声を使うなど、細かなポイントも解説しています。
子どもたちが、楽しみながら、少しずつ自分の課題をスモールステップでクリアできるようにサポートする。これが教師の役割なのです。
*交差跳びでなわを跳ぶ瞬間は、腕を腹の前でX字に交差させることを指しています。
・子どもが跳べなくても否定せずに、見守るスタンスを大切に。
・「この子はなわとびが苦手」と大人が思っても、子どもは実際には楽しんで取り組んでいることも多い。
・取り組む技は小出しにするのが効果的。たくさんの技がのったカードを見ると、やる気をなくしてしまう子も。
ドラえもんの体育おもしろ攻略 とべる!なわとび
定価:本体850円+税/小学館
キャラクター原作/藤子・F・不二雄 指導/戸田克 まんが/ひじおか誠
試し読みはコチラから
取材/大和信治(Edupedia)、まとめ/出浦文絵、撮影/編集部
『教育技術』2019年12月号より