小6 国語科「せんねん まんねん」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「せんねん まんねん」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、「せんねん まんねん」を読んで感じたことや考えたことについて友達と話し合うことを通して、比喩や反復などの表現に気付くことができることをねらっていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
〇 教材の特徴
本単元で扱う「せんねん まんねん」は、2連からなる反復を用いた詩です。
例えば、1連の「そのヤシのみ」と2連の「そのヤシのみ」は反復していますが、同じヤシの実であるかを問うと、地べたに落ちるという表現から違うヤシの実であることがわかります。
そのことで、時の流れを意識することができ、1連と2連の時系列としての解釈を広げることができます。それは、「せんねん まんねん」という詩の題名の理解にも繋がることでしょう。
連続性は1連と2連の関係のみならず、それぞれの連の中にも存在します。
例えば、1連における「昇って昇って昇りつめて」、2連の「はるなつあきふゆ はるなつあきふゆ」などです。どちらも長い時の流れを表しています。
また、詩の中には擬人法が積極的に活用されています。「ヤシのみ」「川」「清水」が擬人法を活用して表現されています。
そこで児童には、擬人法の効果を問うようにします。児童はヤシの実を出発点とした登場するものの連続性を想像できることや、情景を想像することに役立つことに気が付くでしょう。
注目したい擬人法の一つとして「ワニを川がのむ」という表現があります。前文には「ヘビをワニがのむ」とあります。この二つの「のむ」にはどのような意味の違いがあるのでしょうか。
「ヘビをワニがのむ」という表現は多くの児童が捕食を想像することができると思います。「ワニを川がのむ」の場合、単にワニが川の中に潜ると想像する児童もいるかもしれません。
しかし、よく読むと 「ワニを川がのむ」 となっており、文章の主語は川であることがわかります。つまり川が能動的にワニを飲み込んでいることが想像できます。想像できる状況はワニが死に、死んだワニが川の一部になるという様子かもしれません。
なぜここが大切かというと、単にワニが川に潜る様子を想像することに留まると、「せんねん まんねん」の魅力である連続性が途切れてしまう恐れがあるからです。誰が・何を・どうしたのか、という文節を読み取れるように促していく必要があります。
もう一つの特徴として「ひらがな表現」が挙げられるのではないでしょうか。
「せんねん まんねん」という題名に始まり、随所にあえてひらがな表記となっている部分があります。これについても児童に問いかけてみると表現の工夫に気付くことができるでしょう。
反復でも挙げた「はるなつあきふゆ はるなつあきふゆ」や「ながいみじかい せんねんまんねん」を意図的にひらがなにすることで、時がゆっくり流れていることを想像できたり、人間が関わっていないことを強調していることを読み取ることができたりすると考えます。
このように、「せんねん まんねん」には多様な表現の工夫が施されています。これらの表現の工夫に一人一人の児童が気付くには1時間だと難しいことが予想できます。
では、どのように学習を進めていけばよいのでしょうか。
〇 言語活動と指導事項との関連
様々な表現の効果に児童が気付くことができるように、グループで話し合うことを言語活動として設定します。
具体的には、「反復」「擬人法」「ひらがな」の表現について分析グループを作り、それぞれの表現にどのような効果があったり作者の意図があったりするのかを話し合っていくというものです。
それぞれの表現技法ごとにグループを作成して、ジグソー法のように分析した内容を共有し、理解を深めるという方法もありますが、後に紹介する授業アイデアでは3~4人のグループを作成し、時間ごとに三つの表現について話し合う方法を選びました。
それぞれのグループで挙がったものを全体で共有し、意見の共通や相違を確かめながら表現の効果について考えていきます。友達と話し合うことを通して、「せんねん まんねん」で活用されている表現の工夫に気付くことができると考えました。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 表現技法を色分けする
詩をプロジェクター等に掲示し、「これから読む詩にはどんな特徴があるでしょう。」と問いかけてから教師が範読すると、児童は「同じ表現がある(反復)!」や「川がのむという人の動きみたいな表現がある!」といったように、表現の工夫の存在に気付くことができるでしょう。
もし表現の工夫に気が付かない場合には、ゆっくり再読したり、1連を読んでいるときには2連を隠しておき、2連を読み始める際に開示して比較をしやすいように強調したりして、反復に気付けるようにします。
児童の教科書にはもちろん掲載されていますので、プロジェクターに詩を映し、アニメーション等の工夫で気付きを促す場合には、教科書を閉じてプロジェクターに注目するように促すとよいです。
その後、教科書を開き、「この詩に不思議だと思うことが書いていないかな」と問うことで、児童は「清水がヤシのみの中で眠らないよね」や「漢字で書けるところがどうしてひらがなで書いてあるのだろう」などと疑問をもてるようになるでしょう。
全体で詩の特徴を確認したら、詩の文中に活用されている「反復」:赤 、「擬人法」:青 、「ひらがな」:黄色 といったように色を分けて印を付けていくようにします。
その際、それぞれの表現を活用した理由を考えながら印を付けていくよう促していくと、作業的にならずに見通しをもちながら表現の効果を考えることができるでしょう。
また、その後友達と各表現の効果について気付いたことを確認することを伝えることで、自分が気付いた表現の効果について説明する必要が生まれるため、一人一人が責任をもち、粘り強く考える姿が見られるようになります。
〈対話的な学び〉 表現の効果を友達と話し合う
「せんねん まんねん」は、多様な表現の工夫がなされています。すべての表現の効果に児童が一人で気付くのは難しいでしょう。
そこで、3~4人で一つのグループを形成し、グループで表現の効果について話し合うようにします。上述しましたが、「反復」「擬人法」「ひらがな」という三つの表現の効果についてそれぞれのグループで話し合うようにします。なぜ作者はそのような表現の工夫をしたのか、またその表現によってどのような情景を想像することに役立つのか、などを議題とすることで、児童が視点を明確にして話し合うことができます。
話し合い後には全体で各グループから出た意見を共有し、表現の工夫による効果を確認するようにします。
〈深い学び〉 気付いた表現の効果を学級全体で共有
各グループで考えたそれぞれの表現の効果を学級全体で共有するようにします。
すると、グループごとの表現の効果の解釈に共通点や相違点があることがわかるでしょう。共通点を確認することで、効果をより実感することができます。
その後、解釈の根拠を確認しながら効果の捉え方の相違点に目を向けるようにします。
ここで大切なのは答えを一つに絞る学習ではないということを教師が自覚し、児童がそれぞれの捉え方の違いを認め合える雰囲気を作ることです。
児童が表現の効果について「なんとなく」といった曖昧な気付きにならないように、根拠をもちながら発言するよう伝えることが大切です。
「グループ内でも意見が割れた部分はありますか?」などと問うと、例えば、
「『はるなつあきふゆ はるなつあきふゆの ながいみじかい せんねんまんねん』がひらがな表記なのは、人がまだ知らないということから漢字を使っていない、という意見と、読む文字数が多くなるから、のんびりした時間の流れを表している、という意見に分かれました――」
などの意見の違いを確認することができるでしょう。
全体で共有を図ったら一人一人が再度読み味わう時間を設けます。
友達と意見交換をして、最終的に自分はどのような表現の効果に気付くことができたのかを確認していきます。
個→ グループ→ 全体→ 個という学習過程にすることで、これまでの学習を踏まえて新たに獲得した知識と相互に関連付けながら深く理解することができると考えています。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
イラスト/横井智美