小6理科「植物の養分と水の通り道」指導アイデア

執筆/大阪府公立小学校指導教諭・宮下由美子
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・民辻善昭、大阪府公立小学校校長・細川克寿

主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

新学習指導要領に、

単元など内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」より

と記されています。「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行い、資質・能力を育成することが大切になります。では、これらの視点で授業をどのように改善していけばよいのでしょうか。

はじめに、「主体的な学び」、「対話的な学び」に関しては、自然の事物・現象から問題を見いだし、見通しをもって観察、実験を行っているか、得られた知識を基に次の問題を発見したり、新たな視点で自然の事物・現象を捉えようとしたりしているかなどの視点から、授業改善を図ることが考えられます。また、実証性、再現性、客観性といった科学的な視点を基に議論し、自分の考えをより妥当なものにする学習になっているか、対話を通して自分の考えを広げたり深めたりできているかなどの視点から、授業改善を図ることが考えられます。

例えば、水の通り道の学習では、1つの植物だけ調べて考察を行うのではなく、数種類の植物で調べ、どの植物にも水の通り道があることを確認した上で考察を行い、科学的に問題解決を行うことで、より妥当な考えをつくりだすことが考えられます。また、水が根から取り入れられて茎を通って葉まで行くことが分かったことから、その後植物の体内にたまるのか、人と同じように排出されるのかといった、新たな問題を発見することなどが考えられます。

「深い学び」については、様々な知識がつながって、より科学的な概念を形成することに向かっているか、さらに、新たに獲得した資質・能力に基づいた「理科の見方・考え方」を、次の学習や日常生活などにおける問題発見・解決場面で働かせているかなどの視点から、改善を図ることが考えられます。

例えば、共通性・多様性の視点から、どの植物も日光がよく当たるように工夫がされているが、地表近くに葉を広げるものや、蔓などで上に伸びるものがあるといった生え方の違いに触れることが考えられます。また、栽培活動において、蒸散作用の多い晴れた日には、水やりの回数や量を増やすことや、日当たりを考えて植え付けを行う活動などが考えられます。

授業づくりのポイント

①得られた知識を基に、次の問題を発見する場面の設定。

②互いの考えを尊重しながら話し合い、より妥当な考えをつくりだす場面の設定。

③学びを振り返り、様々な知識をつないで、より科学的な概念を形成することに向かう場面の設定。

単元のねらい

植物の体のつくりと体内の水などの行方や、葉で養分をつくる働きに着目して、生命を維持する働きを多面的に調べる活動を通して、植物の体のつくりと働きについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元計画(三次 全9時間)

一次

1時

●植物の成長に関わる条件や、人や他の動物の消化や循環の働きを振り返りながら、植物が生命を維持する働きについて話し合う。(活動アイディア①)

人の体のつくり(働き)

口(取り入れる)臓器(養分にする)血管(全身に運ぶ)肛門(不要なものを排出する)→植物では?

考え方①「植物の体内では水の通り道はどのようになっているのだろうか」

考え方②「植物に日光が当たると、養分ができるのだろうか」

二次

2・3時

植物の体内では、水の通り道はどのようになっているのだろうか?

●植物の根、茎、及び葉には、水の通り道があることを調べる。


4・5時

植物の体を通って葉まで運ばれた水は、どうなるのだろうか?

●吸い上げられた水は、主に葉から蒸散により、水蒸気として排出されていることを調べる。


6・7時

植物に日光が当たると、養分ができるのだろうか?

●植物が日光に当たると、自らでんぷんをつくりだしていることを調べる。 (活動アイディア② )

三次

8・9時

●今までの学習で疑問に思ったことを調べ、まとめる。(活動アイディア①)

単元デザインのポイント

単元構想

子供が主体的に問題解決に取り組むには、子供が問題を見いだすことが大切である。そこで、一次では問題を見いだす場とする。そして、二次では一次で見いだされた問題を解決し、三次では単元の学習を振り返り、子供自身で自らの学びを自覚し生活に生かせるように単元を構想する。

一次

一次では、既習の「植物の発芽、成長、結実」や「人の体のつくりと働き」や生活経験を基に、植物の体のつくりと働きについて問題を見いだす場とする。既有知識から生命を維持するための植物の体内の仕組みを予想し、図などに表し交流する。そうすることで、「知らないこと」に気付き、問題発見を行えるようにする。

二次

二次では、植物の体内の水の通り道と養分のでき方について染色液やヨウ素溶液を使って調べる。複数の植物を扱ったり、動物の体と比較を行ったりしながら、生命領域の主な視点である「共通性・多様性」の見方を通して、多面的に考え問題解決を行えるようにする。

三次

三次では、単元で学習したことを振り返り、次の学習へと学びをつなぐ場とする。学習中に生じた疑問や、印象に残っていることを取り上げて調べ、再実験を行ったり、資料を用いて調べたりして「人の体のつくりと働き」と比較しながらまとめる。動物や植物など生物が生きるために必要なことについて考えを広げ、次の「生物と環境」の学習につなげる。

活動アイディア①

【一次 1 時】

植物は生きていくために、どのような体のつくりと働きをしているのだろう。

五年生の学習で、植物の成長には水と日光が必要と分かったね。水をやらなかったら枯れてしまったし、日光に当たらなかったら細くなって育たなかった。

植物は、水と日光をどのように取り入れて使っているのだろうか。人や動物と同じかな?

水に対する予想「植物は水を…」

(A説)根から取り入れて、茎や葉の中に染み込ませて、全体に行きわたるようになっている。

上には水が染み込んでいかない木の図
図1 グレーが水(上へ行くほど薄い)

(B説)根から取り入れて、人の血管のような通り道を使って、体全体に行くようにしている。

通り道を使って全体に水が行き渡っている木の図
図2 グレーの線が水の通り道
(根から葉までつながっている)

問①:植物の体内では、水の通り道はどのようになっているのだろう。

日光に対する予想

(A説)植物は日光に当たると、成長に必要な養分をつくりだす。

(B説)植物の葉に日光が当たると、成長に必要なパワーをつくる。

問②:植物に日光が当たると、養分ができるのだろうか。

【三次 8・9 時】

疑問・調べたいこと

問A 野菜や果物にも水の通り道はあるのだろうか。

問B 蒸散の量は、天気によって違うのだろうか。

問C 植物の葉には、日光に当たりやすくするために、どんな工夫があるのだろうか。

 葉でつくられたでんぷんは、どこに行くのか。

まとめ

人の体と植物の体のつくりと働きの表
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指導におけるポイント

問題を見いだす

子供たちは自ら自然の事物・現象に働きかけ、問題を解決していくことにより、自然の事物・現象の性質や規則性を把握する。

その際、あらかじめもっている自然へのイメージや素朴な概念などを、学習内容と意味付けたり関係付けたりして、より妥当性の高いものに更新し、自然の事物・現象をより深く理解していく。

そこで、単元のはじめに、子供たちが植物に対してもっている考えを図や自分の言葉を用いて可視化することで、植物に対する自分の考えを確認したり、他の考えを知ったりすることができる。それによって植物への興味・関心を高め、問題解決を通して、資質・能力の育成を目指す。

さらに調べてみたいと思ったことを追究する

本単元の最後に、学習を通して疑問に思ったことや、印象に残ったことを個人で追究することで、日常の生活を見直したり、学習内容を深く理解したりできるようにする。調べる方法は、図鑑や映像などの資料、再実験を行うことなどが考えられる。

まとめでは、植物が生命を維持するための一連の働きを関係付けてまとめ、学びを定着させる。

例えば人の体内と植物の体内を図で表したり、それぞれのつくりと働きごとに表にまとめたりする。植物だけでなく、人の体のつくりや働きと比較しながらまとめることで、生物としての共通性・多様性の視点で捉えることができるようになる。

活動アイディア②

調査官からのワンポイント・アドバイス

国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也

単元をデザインする

本実践では第三次において、今までの学習で疑問に思ったことを調べ、まとめるといった時間を設定しています。ここには、授業者の思いが込められています。子供たちは、自分たちで問題を見いだし、その問題を解決していくわけですが、その問題が解決したからといって、疑問がすべて解消するわけではありません。むしろ、問題が解決したからこそ、「他の植物や野菜などにも、水の通り道があるのかな」「蒸散作用は、天気によって違うのかな」などといったように、新たな問題が見えてくることも多いはずです。このように、学習が進んでいく間に、「もっと知りたい」「これはどうなのか」というように解決したいという思いが高まったことについて、各自が解決する場を保障しているのです。

年間の指導は限られた時数の中で行われますから、時間に制限はありますが、子供たちの「もっと知りたい」という願いに少しでも応えてあげることで、より主体的に学習に取り組む態度が涵養されていくのです。

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イラスト/山本郁子、横井智美

『小六教育技術』2018年6月号より

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