「主体的・対話的で深い学び」につなげる校外学習の指導
社会科や総合的な学習の時間など、校外学習が多い二学期。校外学習のベテラン教諭に、校外学習の指導ポイントについてお話を伺いました。
監修/青森県公立小学校教諭・奈良史
目次
小三実践例「スーパーマーケット見学」
校外学習は逆算で ~見学で何を学ばせるか、入念に準備しよう~
1 見学のねらいを明確にする
この見学で子供たちに何を学ばせたいか、学ぶべきポイントを教科書や指導書、学習指導要領などを確認して、しっかりと押さえておきましょう。
2 見学のねらいに迫るための事前指導
スーパーマーケットの単元でいえば、陳列の工夫、レジの工夫、値札の工夫、バックヤードの工夫…と取り上げたいポイントがたくさんあります。「店内を歩いて施設を見学して終わり」ではなく、教科書のページや指導事項などを確認しながら設定したねらいに迫っていきたいものです。そして子供たちから校外学習を求めるような「実際に見に行きたい!」「直接聞いてみたい!」という発言が出たら、しめたものです。
3 ねらいを先方に理解してもらう
子供たちに説明してほしい内容を事前に先方に伝えておくと、学習のねらいにより一層迫ることができます。例えば、陳列について気を付けていること、バックヤードで働く人の仕事内容について説明してほしい旨を伝えておくだけでも、的を絞ったよい見学の時間になるはずです。
校外学習の学習手順
校外学習前 1~4時/全11時
• スーパー見学で何をテーマに見学するかを決める。(教科書、指導書、学習指導要領を参考に)
• 学ばせたいことを事前に先方に伝える。
• 写真や動画を見せたりしながら、課題づくりを行い、「見学に行って確かめたい!」という意識付けを行う。
• あらかじめ考えられた質問は大まかに先方に伝える。
校外学習中(見学中)5時/全11時
• 一般のお客さんがいることに十分配慮する。
• 勝手に設備に触れることのないように注意する。
• あいさつや言葉遣いなどは徹底して指導する。
• 授業で出た疑問が解決できるように話を聞く。
校外学習後 6~11時/全11時
• 事前学習で使った資料と見学中に撮った写真でふり返りを行い、学習内容を一般化する。
•商品陳列のロールプレイ活動 ※詳しくは下記
• 見学で分かったことをまとめさせる。
ねらいを絞った見学であれば、感想に書くこともねらいに即したものになるはずです。ぜひとも、「楽しかった」で終わることなく、どんな工夫がされていたかについて感想を書いたり、新聞にまとめたりさせたいものです。見学時に教師が撮影した写真を活用できると、さらに実感の湧く学習になるはずです。
【 校外学習中のチェックリスト】
□参加者の健康状態に変化がないか。
□計画段階と現地の情報が変化していないか。
□人数確認が適切に行われているか。
□状況の変化により、柔軟にプログラムを変更できるようになっているか。
商品陳列のロールプレイ活動 7時/全11時
スーパーマーケットの店員になってよりよい売リ場を考えよう
子供を惣菜班・野菜班・精肉班に分けて、陳列のロールプレイを行います。
子供が主体的に思考を働かせる場面をつくる。
活動に主体的に取り組むために、具体物を用いて陳列のロールプレイを行います。一人ひとりが活動することで、この後の対話の場面で意見をもてずに対話に参加できない子供が減り、すべての子供が自分の意見をもって、積極的に対話をできるようになることをめざします。
①自力解決
学級をスーパーの担当の分け方にならって、惣菜班・野菜班・精肉班の三つのグループに分けます。子供一人に対し、各班に関連するそれぞれの商品のカード9枚とA4大の陳列棚のワークシートを配ります。
陳列棚のワークシートには、陳列するうえで気付いたことや気を付けたことを書きます。
学びが深まるような、必然的な対話を設定する。
②共有-対話Ⅰ
まずは、同じ種類の商品を陳列している子供同士で対話を行います。「私は(棚を見せながら)こうやって並べた。理由は、~~です」という情報交換を中心にします。
③共有-対話Ⅱ
次は、別のグループ同士が交流します。惣菜班のC1、野菜班のC2が精肉班へ移動し交流。
「私はここに並べた」というように、最初は自分本位の対話が多く見られます。ここで一度、めあてに立ち返り「違うグループとどんな共通点があるかな?」と発問してから、交流を行わせます。
すると、「私のグループは、同じ種類を近くに置いた」「ぼくは、同じ種類の商品を並べると、お客さんが探しやすいと思う」というように、陳列について一般化された意見が出されます。
④共有︱対話Ⅲ
最後に、全体で共有します。子供の発表を分類しながら板書していくうちに、子供たちは「すぐ見付かるようにしている」「分かりやすい」「選びやすい」「通路に近いほうが取りやすい」などの共通点を見付け、お客さんの視点に立って考え始めます。
終盤には、「お客さんが」という言葉を使い始め、店員の立場からお客さんのことを第一に考えながら活動を行う姿が見られるようになります。
⑤確かめる
店長さんへの取材をもとに、「店長さんのお話」をまとめ、子供が話し合った内容を確認します。
⑥まとめる
子供たちの言葉を使ってまとめます。
(例) 「スーパーマーケットでは、お客さんのことを考えて、分かりやすく選びやすいように商品を並べている」など。
⑦ふり返る
本時のわかったことを感想にまとめます。
校外学習を深い学びにつなげるためには、何よりも子供たちの達成感や感動した思いをあふれさせることが重要です。
取材・文/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ
『教育技術 小三小四』2019年9月号より