小2生活「もっと なかよし まちたんけん」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小2生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「もっと なかよし まちたんけん」の単元を扱います。
執筆/ 大阪府公立小学校主務教諭・山口千尋
大阪府公立小学校主務教諭・中村理恵
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
大阪府公立小学校校長・前谷さき子
目次
年間指導計画
4月 | 春だ 今日から 2年生 |
5月 | 大きく なあれ! わたしの 野さい! |
6月 | どきどき わくわく まちたんけん |
7月 | 生きものと なかよし |
8月 | 大きく なあれ! わたしの 野さい2 |
9月 | うごく うごく わたしの おもちゃ |
10月 | 冬野さいを そだてよう |
11月 | もっと なかよし まちたんけん |
12月 | つながる 広がる わたしの 生活 |
1月 | みんなで つかう まちの しせつ |
2月 | 大きく なった わたしたち |
3月 | ありがとうを とどけよう |
単元目標
地域に出かけ地域の人々と関わる活動を通して、地域で生活したり働いたりしている人々と自分たちの生活との関わりを考えることができ、自分たちの生活は様々な人や場所と関わっていることや、地域の人々が地域に寄せる思いに気付くとともに、地域や地域の人々に親しみや愛着をもち、適切に接したり、安全に生活したりしようとすることができるようにする。
1学期に行った単元「どきどき わくわく まちたんけん」で作成した、校区地図やその時に訪れた場所やお店などの写真を見せて、活動を振り返ります。
この場所がどこか分かりますか?
〇〇公園! よく遊びに行ってるよ
僕が通っていた△△幼稚園! 今は弟が通っているよ
1学期には訪れていない校区内の場所やお店、お店の人の写真を追加し、知っていることを話し合います。
あ! 商店街の魚屋さんのおじさんだ! 朝、学校に来る時にはもうお店が開いてるよ
パン屋さんの前を通ると、いつもいい匂いがするね
私は商店街に行ったことがないから行ってみたいな
子供が地域の人々に着目できるような写真を教師が意図的に準備し提示することによって、子供は1学期とは違った視点をもって校区探検に行きたいという思いをもつことができます。
学習の流れ(全12時間)
【小単元1】たんけんの けいかくを 立てよう[1時~2時]
校区探検で見たり聞いたりすることを決めましょう。その際、1学期で使用した校区探検マップを活用することで、今までの校区探検の様子や出来事を思い起こしやすくなります。
どんな場所に行って、どんなことを見たり聞いたりしたいですか?
文房具屋さんに行って、どんなものを売っているのかもっと知りたいな
いつも朝早くから開いているパン屋さんは、何時から仕事を始めているのかな
子供が行きたいと思う場所について、事前調査等を活用して共感的に応答することで、子供の調べてみたいと思う意欲はより一層高まります。
また、調べてみたいことを共有し仲間分けすることで、新たな視点に気付いたり、今までの探検で気付いたことと比較したりします。
さらに、探検でお店などの見学やインタビューをする際には、国語科等と関連付けながら、適切な言葉遣いなどについて事前学習するようにします。
【国語科との関連】
探検でお店などの見学やインタビューをする際には、国語科と関連付けながら指導します。
具体的には、お店の人にインタビューをする前に、インタビューの「内容」と「方法」について、子供と話し合うようにします。
「内容」については、
①「何のために」インタビューをして、「どのようなこと」を聞くのかということを意識しながらインタビューする事柄を選ぶ
②どのような順序でインタビューするとよいのか考える
③お店の人の話していることを落とさないように聞く
の3点について話し合います。
「方法」については、声の大きさや話す速さについて意識してインタビューすることを確認します。 主な質問が決まったら、2人1組になってインタビューの練習をして、インタビューするときの声の大きさや話す速さが適切であるかを確かめ合うようにします。
評価規準
思考・判断・表現:今までの探検で気付いたことと比べて、探検する場所や調べることを決めている。[発言・ワークシート]
【小単元2】たんけんに 出かけよう![3時~5時]
探検の計画を基にグループごとに校区探検します。子供一人一人がインタビューできるように、1グループ3~4人ぐらいを目安にします。
協力をしてもらう教職員や保護者と事前に打合せをすることが必要です。探検先の人とも事前に打合せをしましょう。
校区探検後に、お礼のあいさつを兼ねて、探検先の人に子供の様子を聞き取りましょう。
校区探検から学校に戻ってきたら、探検して気付いたことをワークシートに書くようにしましょう。
評価規準
思考・判断・表現:地域の場所や働く人や生活している人を自分の生活と関連付けながら、発表したりワークシートに書いたりする。[発言・行動観察・ワークシート]
主体的に学習に取り組む態度:地域の場所や人々に関わることへの関心や期待をもちながら、それらと繰り返し関わろうとしている。[発言・行動観察]
【小単元3】まちで はっけんした ことを ほうこくしよう[6時~7時]
校区探検して発見したり聞いたりしたことを話し合う場面では、気付いたことやもっと知りたいことをはっきりと認識できるような板書などを工夫することで、再度探検に行きたいという意欲をもてるようにしましょう。
パン屋さんにはたくさんのパンがあるのは分かったけれど、いつも同じパンが売られているのかな
和菓子屋さんでは、季節によって売っているお菓子を変えているみたいだね
予想したことや新たな質問などを板書で強調すると、本単元の目標を達成することに向かうような、もっと調べたい気持ちが高まります。
評価規準
知識・技能:地域で生活したり働いたりしている人々や様々な場所が自分たちの生活を支えていることや、それらが自分と関わっていることが分かっている。[発言・ワークシート]
主体的に学習に取り組む態度:地域の場所や人々に関わることへの関心や期待をもちながら、それらと繰り返し関わろうとしている。[発言・行動観察]
【小単元4】もういちど たんけんに 出かけよう![8時~10時]
グループごとの話合いでは、もっと詳しく見たり聞いたりしたいことを整理しながら探検の計画を立てられるように、付箋紙やミニホワイトボードなどを活用しましょう。
探検の計画を基に、グループごとに校区探検します。校区探検から学校に戻ってきたら、探検して気付いたことをワークシートに書きます。
評価規準
思考・判断・表現:今までの探検で分かったことを基に予想しながら、探検で見たり聞いたりしたいことを話したり書いたりしている。[発言・ワークシート]
主体的に学習に取り組む態度:地域で関わった人の地域に寄せる思いに触れ、これからも地域の人々への親しみや愛着をもって、それらのよさを大切にしようとしている。[発言・ワークシート]
【小単元5】まちで さいはっけんした ことを ほうこくしよう[11時~12時]
再度探検して発見したり聞いたりしたことを話し合う場面では、愛着のある場所や地域の人のよさが、自分たちの生活を楽しくしていることに気付けることが大切です。
スーパーの店員さんは「地域のみんなに喜んでもらえるのが嬉しい」と話をしていました。地域への思いが素敵なスーパーだと思いました
私の見付けた素敵は、パン屋さんのパンの種類です。パン屋さんも和菓子屋さんと同じように、季節によって違うパンを作るそうです。地域の人に季節のパンを楽しみにしてほしいからだそうです
スーパーの店員さんもパン屋さんもみんな、地域のことを思って働いているんだな。僕たちの町には、素敵な人がたくさんいるんだな
国語科と関連させ、自分たちが伝えたい「さいはっけん」がより聞き手に伝わるように、話す事柄の順序を考えたり適切な声の大きさや速さなどで伝えたりすることができるように、関連的な指導を工夫します。
この時、子供は動画や写真だけでなく、ペープサート・紙芝居・劇など伝え方を工夫することで、その中で子供が伝えたい「さいはっけん」がより明確になっていきます。
評価規準
知識・技能:地域には、地域のことを思い、自分たちのくらしを豊かにしてくれる人々がたくさんいることに気付いている。[発言・ワークシート]
思考・判断・表現:地域や地域の人々のよさを振り返りながら、友達に知らせている。[発言・ワークシート]
1人1台端末を活用した指導アイデア
「たんけんに 出かけよう!」(3時~5時)や「もういちど たんけんに 出かけよう!」(8時~10時)では、1人1台端末を活用して地域やお店の様子や関わる人を写真や動画で記録しましょう。その後の報告会で提示し活用できるようにします。また、写真や動画を撮る際には必ず許可をとることや、他の人が映り込まないように気をつけることなどを事前に情報モラルについて指導をしておきます。
「まちで『はっけん』した ことを ほうこくしよう」(6~7時)や「まちで『さいはっけん」した ことを ほうこくしよう」(11~12時間)では、探検したことを振り返ったり、報告したりする際に撮影した写真や動画を活用しましょう。報告する際には、写真に言葉や印を書き込んだりスライドを作成したりすることによって、聞き手に伝わりやすくなります。
評価のポイント
繰り返し関わる活動を通して、地域の人々の思いや願いに触れる
実際に地域を探検し、地域で生活したり働いたりしている人々と繰り返し接する中で、気付きの質が高まり、地域の人々や場所のよさに気付き、それらを大切に思う気持ちや適切に接しようとする態度が養われます。そのためにも、子供の発言やつぶやき、ワークシートから地域の人々の思いや願いを共感的に応答し、板書で構造化することによって子供の気付きを確かなものにしていくことが大切です。そうすることで、地域の人、もの、ことがより一層大切な存在になります。
イラスト/高橋正輝