小5体育「表現運動」指導アイデア

執筆/広島県公立小学校教諭・大屋裕幸
編集委員/国立教育政策研究所 教育課程調査官・高田彬成、広島県公立小学校校長・平岡弘資

授業づくりのポイント

夏休みが明け、多くの行事がある2学期のスタートです。仲間と交流し合い、さらによりよい人間関係を築いていきましょう。表現運動は、自己の心身を解き放し、リズムやイメージの世界に没入して、なりきって踊ることが楽しい運動であり、互いのよさを生かし合って仲間と交流し、踊る楽しさや喜びを味わうことができる運動です。

授業づくりのポイントは、次の2つです。1つ目は、単元前半の「ひと流れの動き」から単元後半の「ひとまとまりの動き」に表現を発展させることです。

「ひと流れの動き」とは、ひと息で踊れるようなまとまり感をもった動きの連続で、1人やペアなどで即興的に表現します。「ひとまとまりの動き」とは、作品を意図して「はじめ-なか-おわり」の構成を工夫し、グループで表現することです。動きのイメージを広げることで、「ひと流れ」から「ひとまとまり」に発展させましょう。

2つ目は、イメージをふくらませ、動きを引き出す言葉がけや指導の工夫をすることです。イメージバスケットを活用したり、子供の動きを認め大げさにほめたり、教師がリードして動いたりすることで動きのイメージが広がります。子供と一緒に教師自身も表現運動を楽しみましょう。

単元計画の例(全7 時間)

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やってみる

授業前半は、「対決」の特徴的な動きをみんなでやってみる時間です。子供のイメージによる動きを大切しながら、まずは一人で動いてみましょう。教師のリードによる例も示して動けるようになったら、2人組で表現してみましょう。互いの動きを真似ることで、動きのイメージを広げることができます。さらに別の2人組とアドバイスをし合うことで、よりイメージをふくらませ、自分の表したいイメージを工夫して実現していきましょう。

小テーマからイメージした動きの例

(「対決」にふさわしいBGM を使うと、表現に効果的です。)

●2 人の戦い

オーバーアクションや変化(跳ぶ・転ぶ・隠れる・スローモーション)をつけて表現。

ボクシングの攻防
忍者の戦い

《苦手な子供への配慮》
2人や4人組などで、イメージや動きを出し合いながら踊ってみましょう。

●追いつ追われつ

対応する動き(追う・追われる)や対極する動き(素早い動き・急に止まる動き)を表現。

ビルの谷間をぬって
密書を取り返せ

《苦手な子供への配慮》
教師や仲間のリードで踊ってみましょう。

●危機一ぱつ!○○

人数を増やした「戦い」や「追いつ追われつ」と組み合わせたり、急変する動きを入れてスリリングな展開にしたりしてメリハリ(緩急)を表現。

船が沈む、でも出口がない
敵に囲まれた

《苦手な子供への配慮》
ICT を活用したり、グループで見合ったりして、表したいイメージができているか、確かめてみよう。

一番表したい部分に、急に変わる場面をつくり、ひと息で踊れる「ひと流れの動き」にしてみよう。

「ひと流れの動き」の例

・船底に穴があき、船が傾く。
左右上下に大きく揺れる。

船底に穴が空き、船が傾く

・船が沈む、出口がない。
ジャンプしたり転がったり。

船が沈む、出口がない

・出口を探せ。
右、左と見回す。

出口を探せ

ふかめる

グループで表したいイメージを中心に、「ひとまとまりの動き」にして踊ります。1グループ4人程度で、表したいイメージが強まるように、どこかで急に変わる場面を入れて「はじめ-なか-おわり」の3つの場面がある「ひとまとまりの動き」を表現するようにしましょう。

授業前半でつくった作品を他のグループと見せ合い、よいところを認め合ったり、動きの工夫をアドバイスし合ったりする場を設定しましょう。そのアドバイスを生かしたり、ICT を活用して自分たちの動きを確かめたりして、さらに踊り込むことで、グループの表したいイメージや動きをつくっていきましょう。

「ひとまとまりの動き」の例

学習の流れ

イメージマップを活用して、グループで表したイメージを決め、作品をつくろう。

学習のながれ1
学習の流れ2

ICT や兄弟グループを活用して、自分たちの動きを確かめさらによくしよう。

作品例「難破船からの大脱出!」

難破船からの脱出 はじめe
難破船からの脱出 なか
難破船からの脱出 おわり

【工夫のポイント】
○印象的な動きを繰り返す。
○緩急(メリハリ)を付ける。
○ラストを印象的にする。どこをどう工夫したら、表したい場面が強調されるかを踊りながら考え、修正し合おう。

発表会(コンテスト形式)
・グループで順番に前に出て踊りを見せ合う。ラスト5 秒止まってから次のグループと入れ替わる。
・グループの発表後、批評箋にコメントを書く時間を確保する。→発表会後、グループごとに批評箋を集め、気付きを交流する。
・グループが入れ替わるところで、タイトルと見所を紹介するようにする。

発表会
批評箋
交流

授業のアイデア(運動が苦手な子供への配慮を中心にして)

イラスト/たなかあさこ

『小五教育技術』2018年9月号より

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