小3算数「あまりのあるわり算」指導アイデア《問題に応じた商の処理のしかた》

特集
文部科学省教科調査官監修《1人1台端末時代の》教科指導ヒントとアイデア
タイトル 小3算数「あまりのあるわり算」指導アイデア

執筆/神奈川県横浜市立大綱小学校教諭・小畠政博
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

小三算数 年間指導計画

単元の展開

第1・2時 わり切れない場合の計算のしかた(包含除)14÷3

第3時 わり切れない場合の計算のしかた(等分除)16÷3

第4時 わり切れない場合の除法の答えの確かめ方

第5時(本時)問題に応じた商の処理のしかた(あまりを考える問題)

第6時 まとめ

本時のねらい

商やあまりの意味に着目して、問題に応じた商の処理のしかたを考え、説明することができる。

評価規準

商やあまりの意味に着目して、日常生活の場面に照らし合わせながら、問題に応じた商の処理のしかたについて考え、説明している。



35人の子どもがすわれるように、4人がけの長いすを用意します。

どのような場面か、説明できますか。

35人の子供が、4人がけの椅子に座っていく場面です。

同じ数ずつ座っていくので、いくつ分かを求めるわり算の場面です。

何を求めているのか分からないので、計算ができません。

いくつ分かを求めるわり算の場面と考えると、「長椅子はなん台用意すればよいですか」になると思います。

では、問題をこのようにします。式を書き、答えを求めましょう。



35人の子どもがすわれるように、4人がけの長いすを用意します。長いすは、なん台用意すればよいですか。

「35÷4=8あまり3」なので、長椅子は8台用意すればいいと思います。

計算の答えの確かめも大丈夫だったので、いいと思います。

でも、おかしな問題だね。かわいそうだよ。

それは、どういうことですか。

だって、3人座れない人がいたらかわいそうです。

わり算で計算したら、「8あまり3」だから、8台になると思うよ。

あまりが3だけど、本当に長椅子は8台でいいのかな。35人の子供が座れるようにと書いているから……。

では、もう一度、長椅子がなん台必要か、考えてみましょう。



「35÷4=8あまり3」の商とあまりの意味に着目し、問題場面に応じた商の処理のしかたについて考え、説明することができる。

見通し

○を使った図を用いて、答えの8と3が何を表しているのか考えればいいよ。[方法の見通し]

答えは8あまり3だけど、あまりを出さない場面だから、状況によって答えが変わるよ。[方法の見通し]

答えの8あまり3は、4人ずつ8台に座ると3人余るということなので、3人が座るために、もう1台必要になるよ。[結果の見通し]

自力解決の様子

A つまずいている子

あまりの処理のしかたが分からず、困っている。


B 素朴に解いている子

○を使った図を活用し、あまりの3個をひとまとまりにして考えている。


C ねらい通り解いている子

商とあまりの意味に着目し、場面に応じた処理のしかたに気付いている。

学び合いの計画

除法で解決した結果をそのまま答えとすることを本時のゴールにしていません。除法での処理の結果である商とあまりを、もう一度問題場面に照らし合わせて妥当であるかどうか判断し、結論を得ることが大切です。

日常生活の問題を解決し、数学的な結果を得たときに、その結果を常にふり返って吟味しようとする態度の育成につなげていきます。

そのために、問題場面をすべて教師から与えるのではなく、何を求めるのかについて子供とともに確かめていくことが必要となります。子供自身が既習をふり返りながら問題場面を設定することにより、除法で解決した結果が本当に正しいのかという問いを子供とともにつくり上げていくことができます。

得られた結果を元の問題場面に戻して考え、あまりについてどのように解釈すればよいかを考えることを大切にすることで、数量関係に着目し、筋道立てて考える力の育成にもつなげていきましょう。

ノート例

A つまずいている子

つまずいている子のノート例

C ねらい通りに解いている子

ねらい通りに解いている子のノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

C1
図を使って考えました。4のまとまりが8個できて、あまりが3つです。このあまりを1つのまとまりにすればよいので、まとまりが1つ増えて、9台になります。

C2 
35÷4=8あまり3
この結果から、長椅子を8台とすると3人の子供が座れなくなるので、問題場面にあるように35人が座るには、長椅子を1台増やして、9台用意します。

C3
35÷4=8あまり3
8あまり3を答えとすると35人全員は座れないので、4人で座る椅子が8台、3人で座る椅子が1台。
8+1=9 
長椅子は、9台用意する必要があります。

友達の意見を聞いて、どのようなことを考えましたか。伝え合いましょう。

3人の意見を聞いて、9台用意することが分かりました。

C1さんのように、図を使って考えると、8あまり3の意味がよく分かりました。

「8」は長椅子の数で、「3」は座れなかった人数なので、C2さんが言うように、長椅子をもう1台用意する必要があるということです。

35人が座れるようにというのは、みんなが座れるようにするということだと分かりました。問題文をよく読んで、もう一度考えないといけないと気付きました。

わり算で答えを出しても、もう一度考える必要があります。

それは、どういうことですか。わり算が使えないということでしょうか。

わり算が使えないということではなく、問題場面に応じた答え方が大切だということです。この問題は、あまりを出さないようにする必要があるということです。

だって、3人が座れずに立っていたらかわいそうだから、あまりを出しちゃいけません。

C3さんのように、8+1をするということです。

「8」は、4人ずつ座っている長椅子の数で、「1」は3人が座っている長椅子と考えるということです。わり算の答えをちょっと工夫すればいいので、やっぱりわり算は使えます。

今日の学習を通して、どのようなことを学びましたか。

わり算で求めた答えが、そのまま使えないときがあるということが分かりました。

今までは、わり算で出した答えのままでよかったけど、本当にその答えでいいのか、問題場面をもう一度考えることが大切だと思いました。

ふだんの生活にも同じような場面があります。例えば4人グループをつくるときに、3人グループもOKにしてレクをしました。

確かに、今日学習したことはふだんの生活でも使っているね。3人を仲間外れにしないで、グループを1つ増やせばいいよね。

体育のときは、ちょっと違うよ。35人で4人ずつのチームをつくるとき、8チームだと対戦も組みやすいから、あまりの3人を8チームのどこかに入れて、チーム数は変えないよ。

本当だ。状況によって答え方が変わるということだね。

すごいね。わり算で答えを出して終わりではなく、問題場面に応じてどうするかをもう一度考えるということですね。

違う場面でも考えてみたくなりました。



わり算で求めた答えが、問題場面に合っているか、もう一度考えることが大切です。特に、あまりに注目して問題の答えを考える必要があります。

評価問題

ケーキが23こあります。1箱に4個のケーキを入れていきます。全部のケーキを入れるには、箱はなん箱あればよいでしょうか。

子供に期待する解答の具体例

23÷4=5あまり3
3個のケーキも箱に入れるので、4個入りのケーキが5箱と3個入りのケーキが1箱になります。
5+1=6 全部のケーキを入れるには6箱あればいい。

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

わり算で求めた答えを問題場面に照らし合わせて、妥当かどうか判断し、結論を導いている。

感想例

計算で答えを求めたとき、答えの意味について問題場面に戻って考えることが大切だと分かりました。ふだんの生活でも使っていきたい考え方だと思いました。

1人1台端末活用ポイント

問題場面を算数の舞台にのせて処理するとは、さまざまな情報を捨象し数量で解決するということです。

数量を計算で求めて、それを答えとする経験はこれまで多分にありました。しかし、本実践のわり算で商とあまりを求めたときのように、場面に照らし合わせ、妥当かどうか判断しようとすることは、それほど多くありませんでした。

求めた数量が何を意味しているのか再考することは、日常生活を送るうえで欠くことのできない力と言えます。

1人1台端末を活用することにより、自他の考えを交流することができ、友達の意見との比較を通じて多様なアイディアにふれ、思考の視点を広げ深めることができます。授業を通して、どのように自己の考えが変容したのかふり返るうえでも有効なツールです。

従来の学び合いは、一部の子供が発表したことを聞いているだけになってしまう懸念がありましたが、1人1台の端末があることで考えの共有が容易になり、学び合いの質の向上につながるでしょう。どのような活用場面があるのか模索しながら、積極的に授業に取り入れていきましょう。

イラスト/横井智美

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