自学で「持ち運び紙石けん」研究作製~ 科学的思考力を育む自学とは①
子供たちの科学的思考力を育むために、福岡県北九州市立木屋瀬小学校を中心に北九州市の小学校で自学・自由研究に積極的に取り組んでいます。優れた自学の研究発表をシリーズで紹介する本企画。第1回は「持ち運び石けん~あきらめない事は大事~」(木屋瀬小学校5年・里見七星さん)を取り上げます(「第2回こやのせ科学フェスティバル」での発表よりダイジェスト)。
目次
研究テーマ「持ち運び石けん~あきらめない事は大事~」(木屋瀬小学校5年、里見七星さん)
持ち運び石けんを作ろうと考えたのは、コロナ禍で休校中のことでした。お母さんが、仕事先で紙石けんが流行ったという話を里見さんにしたことがきっかけとなりました。紙石けんのことを調べると、自分で作れることがわかり、使ってみたくなり、持ち運び石けん作りに挑戦しました。
1 ユーチューブで見つけた紙石けんを作る
「持ち運ぶのにもとても便利で、感染予防対策の1つとしていいな」と里見さんは思い調べると、家にあるもので作れることを知りました。はじめは、ユーチューブで見つけたキッチンペーパーの紙石けんを作りました。
キッチンペーパーに泡のハンドソープをつけて伸ばし、乾かして、好きな大きさに切りました。1回目は1枚につき、10回泡を乗せました。使ってみると、泡が出て、手が洗えた事にびっくりしました。でも、少し泡が足りない感じだったので、20回乗せてみました。すると、ちょうどいい具合に泡がたちました。
でも、洗い終わった時、キッチンペーパーが残るのが気になりました。そこで、里見さんは残らない紙石けんを作りたいと思いました。
2 いろいろな紙を使った紙石けんを作る
和紙、習字の練習紙と清書紙、うつし絵シート、水に流せるティッシュで紙石けんを作ってみました。
結果は、残り方は違いましたが、どれも紙が残りました。これでは、思い通りの紙石けんではありません。
3 いろいろな紙を水につけると、どうなるだろう
紙を水につけていたら、どんなふうになるのか実験してみました。前の実験で使った紙以外にお花紙とトイレットペーパー、刺繍下地シートを追加して実験しました。条件を合わせるため、どの紙も同じ大きさにして、水の量も100mLにしました。水に入れてすぐの状態と1時間後の状態を見ました。
結果は、残り方はそれぞれ違いましたが、どれも紙が残りました。でも、刺繍下地シートは、きれいになくなり、裏紙だけになりました。
4 刺繍下地シートで作ってみよう
刺繡下地シートで、紙石けんを作ってみました。使ってみると、紙はきれいになくなりましたが、ネバネバして使いにくかったのです。ネバネバの原因は、シートの裏がシールになっているからだと思いました。結果は、刺繍下地シートは水に溶けてなくなる紙でしたが、泡立ち具合や、ネバネバで手洗いには向いてないことやシートの裏の台紙が残ることから、里見さんの思っている紙石けんにはなりませんでした。でも、最後まであきらめずにやってみようと思いました。
5 理想の紙石けんができた!
水に溶ける紙をインターネットで検索していたら、シークレットペーパーという紙を見つけました。水に入れるだけで消えてしまう和紙です。次はこの紙で挑戦したいと思い、キッチンペーパーと同じ条件で紙石けんを作りました。泡を乗せただけで溶けてしまうのではないかと心配だったので、慎重に泡を伸ばしました。泡を乗せただけでは溶けず、乾かすところまでできました。
使ってみると、固形の石けんで手を洗っている感覚できれいに洗えている感じがしました。そして紙はなくなりました。
里見さんの理想の紙石けんの完成です! 「失敗しても、あきらめないでよかったです」と里見さんはにこやかに話します。この自由研究を「発明くふう展」で発表した結果、北九州市長賞を受賞しました。
元 企業の研究・開発者 武藤良弘さん講評
里見さんの発表は、内容が整理されていてとても分かりやすかったです。実験をしていて分かれ道になったとき、常に妥協しないほうを選択する姿勢がとてもよいです。これからも、自分が納得する気持ちで取り組む姿勢をずっと大切にしてください。
里見さんの発表は自学ノートの本に掲載されています
『親子で学ぶ!科学的思考力を育む自学のススメ』
○子供たちが好奇心を発揮して、観察記録や自由研究をまとめた魅力いっぱいの自学ノートを紹介。
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○自学ノートの科学的思考力が育つポイントを解説。
○オールカラーで、子供たちの自学ノートがよくわかる。
○研究テーマやまとめ方など、自学ノートをつくる際のヒントやアイデアが満載。
B5判 オールカラー 80ページ
ISBN978-4-09-840209-0
取材・文・撮影/浅原孝子