小3算数「時こくと時間」指導アイデア《ある時刻から一定時間前後の時刻や時間の計算》
執筆/神奈川県横浜市立西富岡小学校教諭・純岡尚史
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一
島根県立大学教授・齊藤一弥
単元の展開
第1時(本時)ある時刻から一定時間前後の時刻や時間、計算のしかたを考察する。
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第2時 ある時刻から一定時間前後の時刻や時間、計算のしかたを考察する。
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第3時 時間を表す単位「秒」について知り、分と秒の単位関係を理解する。
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第4時 学習内容の定着を確認し、数学的な見方・考え方をふり返る。
本時のねらい
問題解決の見通しをもち、ある時刻から一定時間前後の時刻や、2つの時刻の間の時間を求める方法を説明することができる。
評価規準
時間の単位に着目し、模型時計や数直線を用いて、ある時刻から一定時間前後の時刻の求め方を考え、説明している。
たかしさんのクラスでは、社会科のじゅ業で学校の近くにある公園から、町のようすをかんさつします。中休みまでに学校にもどるためには、公園でどのくらいかんさつできるか話し合っています。

今、町探検で中休みまでに戻ってくるために必要な情報について話し合いました。ほかに、気になることはありますか。
公園でどのくらい観察できるか、時間を決めていません。
1O分間でいいですか。
それだと少なすぎます。
1時間ぐらいでいいですか。
それだと、中休みに戻ってこられないんじゃないかな。
公園でどのくらい観察時間がとれるんだろう。
10分だと中休みまでに帰ってこられるけど、観察時間が短い。たくさんの時間が取れたほうがいいね。
公園でできるだけ多く観察するためには、なんの時刻が分かれば解決できそうですか。
公園に着く時刻が必要です。
帰るぎりぎりの時間が分かれば、公園に長くいられる時間が分かるよ。
歩いて帰るのに30分かかるから、公園を出る時刻が分かればいいね。
では、まず公園に着く時刻の求め方を考えてみましょう。その次に、公園を出る時間の求め方を考えてみましょう。
公園に着く時刻と、公園を出る時刻の求め方を考え、説明しよう。
見通し
模型時計を使えば、公園に着く時刻を求められるよ。(方法の見通し)
数直線を使っても、公園に着く時刻を求められるよ。(方法の見通し)
公園で観察できる時間は、公園に着く時刻と出る時刻が分かれば分かるよ。(解決の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
時間と時刻の意味が分からずに困っている。
B 素朴に解いている子
模型時計を使って、公園に着く時刻や出る時刻を考えている。
C ねらい通り解いている子
数直線や計算を使って、公園に着く時刻や出る時刻を考えている。
学び合いの計画
時計の読み方の指導については、第一学年で時刻を表す単位に着目し、「なん時」「なん時半」「5分区切り、1分区切り」の読み方、第二学年では時間の単位に着目し、日・時・分などの単位の関係、時刻と時間の概念について学習しています。第三学年では、時間の単位に着目し、日・時・分・秒などの単位の関係や時間の求め方を考察し、日常生活に生かすことをねらいとしています。
本単元では、これまで学習した時間の単位などの理解を深め、それらを活用して、簡単な場合について、時刻や時間が求められるようにする必要があります。そして、今後の生活や学習に活用することができる子供を育てることが大切です。そのためには、子供が学習の計画を話し合う場面を設定し、自ら課題解決に向けて条件を判断していく文脈を位置付けます。
また、模型時計や数直線、計算などを関連付けて、数学的に表現・処理したことをふり返り、それぞれの表現のよさやアイディアを価値付けることで、簡潔・明瞭・的確に時間や時刻が求められる方法について自覚化できるようにします。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
C1
模型を使いました。歩く時間は30分です。9時まで20分かかり、9時から10分かかります。だから、9時10分になります。

C2
数直線を使いました。20分歩くと9時になります。あと1O分歩くので9時10分です。

C3
計算を使って考えました。
(式)8時40分+30分
40分+30分は、70分になります。70分は、1時間10分なので、9時10分です。
友達の発表を聞いて、考えたことを発表しましょう。
※①公園に着く時刻を発表。
C1とC2の考えは似ていると思います。数直線は、時計を伸ばした図と考えられるからです。
C3の考えは、計算で出せるのでとても便利だと思いました。
どうして、便利だと思ったのですか。
いちいち模型を使わなくてもすぐに計算が求められるし、早く答えが出せるからです。
C3の計算のしかたは、時間と時間、分と分で足して、答えを求めていると思います。
どうして、C3はたし算が使えるというアイディアが思い浮かんだのですか。
C3
これまでも、数を使うときは計算が使えたからです。
なるほど、時間を数と結び付けていてすごいですね。では、8時70分ではだめですか。
時計は1時間で60分だから、70分になると、1時間10分にしないといけません。
ふだんの計算だと、10のまとまりになると次の位に繰り上がるけど、時計の場合は、60分のまとまりになると1時間になるからダメです。
さっき、考え方が似ているって言ってくれましたね。共通しているアイディアはありますか。
C1とC2は、ちょうどよい時刻を基にして考えていて、C3は、同じ単位で計算しています。
どれも、1時間は60分の考えを使っています。
C1とC2は、30分を20と10に分けているけど、C3は分けていません。
なるほど、それぞれの考え方には、どんなよさがあるでしょう。
数直線を使って考えると、時刻と時刻の間を求めればいいことがよく分かります。計算は、すぐにできるけど、イメージがわきにくいです。
「計算はイメージがわきにくい」と言うのは、どういうことですか。
公園で観察できる時間は、公園に着く時刻と出る時刻だということが数直線だとすぐ分かります。
公園を出る時刻も、同じようにアイディアを使えば出せるのかやってみよう。
※自力解決・発表(②公園を出た時刻を発表)
やってみてどうでしたか。同じアイディアは使えましたか。
学校に30分前に着く時刻を考えるときは、模型や数直線はよく分かったけど、計算だと難しかったです。
どこが難しかったですか。
10時20分から9時50分は、20から50は引けないところです。
そこについては、次回にくわしく考えてみましょう。(次時の見通しをもつ)
・ちょうどよい時刻を基にすると、時刻は求めやすい。
・公園で過ごせる時間は、公園に着く時刻と出る時刻の間の時間で決まる。
評価問題
公園でかんさつする時間は多くてどのくらいか、ペアにせつ明しましょう。
※模型や数直線、計算を使って説明する。
子供に期待する解答の具体例
公園に着く時刻は、歩いて30分かかるので9時10分。
公園を出る時刻は、歩いて30分かかるので9時50分。
公園で過ごせる時間は、その間の40分間になる。
本時の評価規準を達成した子供の姿
公園に着く時刻と公園を出る時刻に着目し、公園で活動できる時間を友達に説明している。
感想
到着の時刻と出発の時刻が分かると、活動できる時間が求められることが分かった。また、ちょうどよい時刻にすると、時間がよく分かる。今回は観察に40分間取れるので、時間を見て動きたい。また、この考えを使うと、次の町探検でも自分たちの活動時間が分かり、計画が立てやすくなるので、生活に生かしていきたい。
1人1台端末活用ポイント
時間は、ほかの量と比べて指導が難しいと言われています。その原因は、時刻と時間の学習は、時間という目に見えない量を基準の大きさに決めて、それを単位にしていることです。また、十進構造との違いがあげられます。
しかし、1人1台端末が配られ、ICTの「効果的な活用」が期待されます。例えば、熊本市教育センターが公開している「デジタル教材『時計の学習』」などの無料サイトもその一つです。このソフトを使えば、時間と数直線を視覚的に捉えることが可能となり、授業の自力解決で困っている子供にとっては、大きな支援となります。また、60進法と十進構造と関連付けて、ふり返ることも可能となります。ほかにも、1分=60秒などの量感を捉えさせるために、アプリを使ったメトロノーム機能なども授業での活用が期待できます。
イラスト/横井智美
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