5年道徳「ヘレンと共にーアニー・サリバンー」授業レポート~努力しようとする実践意欲と態度を育てる

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道徳科の授業に生かせるアイデア満載の授業レポートをお送りします。今回は埼玉県飯能市立加治小学校でのタブレット端末を活用した実践です。小5の道徳の授業で「努力しようとする実践意欲と態度」を育てる内容です。

授業者/埼玉県飯能市立加治小学校教諭・佐々木理恵
監修/文部科学省教科調査官・浅見哲也

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小5教材「ヘレンと共に―アニー・サリバン―」

教材名(出典:『私たちの道徳』文部科学省)
内容項目: 希望と勇気、努力と強い意志

本時のねらい

より高い目標に向けて、くじけずに努力しようとする実践意欲と態度を育てる。

導入

自分たちの生活の中で、夢や目標があるか、そのために努力をしているかを子供たちに問いました。今回は自分の状況を示すことができる座標軸を用いた図をタブレット端末で使用し、自分に当てはまる位置に丸を付けます。

タブレットを活用! 自分で丸を付けたら、教師のフォルダへ提出。ある程度集まったところで、子供たちが友達の回答を見られるよう共有します。友達の回答を見ながら、今日のテーマへの興味や関心を高めます。

道徳ヘレンと共に 導入タブレットグラフ

展開

サリバン先生のすごいところを考えながら座標軸などの図を用いて「自分ごと」として考え、道徳的価値について学びを深めていきます。

発問1 サリバン先生のどんなところがすごいと思いましたか?

今日の学習テーマについて考えられるよう、教材を読み聞かせる前に「サリバン先生のすごいところを考えながら聞いてください」と伝えておきます。「教材から学べること」と「自分のこととして考えてほしいこと」の両方を意識しながら、授業を進めます。

かげ口を言われても、あきらめずに続けた。

目も耳も口も不自由なのに手で教えることを考えた。

ヘレンを大学まで入学させた。

発問2 みんなのことを教えてください。それぞれの色のゾーンに丸を付けた人、どんな気持ちで努力していますか?

小五道徳ヘレンと共に 手を挙げる子供

導入で丸を付けた座標の内容に沿って、子供の生活から夢や目標と努力に対する思いを聞きます。自分と違う色に丸を付けた友達の意見を聞くことで、新たな発見もあるようです。

小五道徳ヘレンと共に タブレット子供のグラフ

発問3 では、いままでどんな努力をしてその結果がどうなったかをグラフ線で示してください。

小五道徳ヘレンと共に タブレット縦軸横軸グラフ
これを送信!

タブレットを活用! 努力している期間を横軸、結果を縦軸にあらわした新たな座標軸を子供たちに送信します。今回も提出した子が増えてきたところで回答を共有します。

小五道徳ヘレンと共にタブレットある子供のグラフ
発表する子供だけでなく、タブレットの活用で全員が自分のことや経験を振り返り、その思いを表現することができます。

発問4 ところで、あきらめたくなるときはどんなときでしょうか。

まちがえが多いとき。

試合で負けっぱなしのとき。

努力することを笑われたとき。

矢印をなぞりながら、あきらめたくなるときや努力が結果に結び付かないときの気持ちを確認します。みんなでひとつのことを考えるときは、 画面から目を離して黒板に集中します。板書は考えの過程や変化が理解しやすくそれぞれのメリットを生かせる伝え方を意識しています。

発問5 あきらめたくなったとき、どうやったらがんばれそうですか?

小五道徳ヘレンと共に 発表する子供

最初の気持ちを思い出す。

自分のやっていることに自信をもつ。

自分を信じる。

まわりの人の力を借りる。

終末

「あきらめずに努力する秘訣」を振り返りシートに書きます。

タブレットを活用! 今日の学びを確かなもの にするために授業で学んだ 「あきらめずに努力する秘訣」をノートに鉛筆で書き、タブレットで画像を撮影して提出します。

小五道徳ヘレンと共に タブレットで画像を撮影している子供

板書

小五道徳ヘレンと共に 板書

子供たちのノートから

努力するひけつは人それぞれあるけれど自分を信じたり、人にはげましてもらったりするとよいということがこの授業で見つかりました。
みんなの中には、努力して夢や目標をさがしているという子もいて、すごいと思いました。

授業者のねらい

加治小 佐々木理恵先生

埼玉県飯能市立加治小学校教諭 佐々木理恵

5年生は心の成長も著しく、本音を隠し始める年頃です。普段から学級会などで話す機会を多く設けるほかにも、私自身がうれしい気持ち、悲しい気持ち、不安なども本音で話すようにつとめています。「かっこいいことや正しいことではなくても、自分の気持ちを言っていいんだ」という雰囲気づくりを大切にしています。

文部科学省教科調査官ワンポイントアドバイス

ICT端末を活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」

浅見先生

文部科学省教科調査官・浅見哲也先生

各教科等の授業において、子供を主語にした「個別最適な学び」と「協働的な学び」による学習を行っていくために、ICTを基盤的なツール(道具)として活用していくことが「令和の日本型の学校教育」として打ち出されました。佐々木先生の授業では、1人1台のICT端末を活用し、一人一人の子供が夢や目標に向かう自分の様子を表現し、それらを全員で共有することによって、友達と比べながら努力の秘訣を見つけていく展開がなされています。正にこのような学習が求められるところです。個々のグラフを共有し、「誰の様子をもっと聞いてみたいか」という投げかけは、子供の主体的な学びを促すきっかけとなりました。

取材・文/ルル 写真/北村瑞斗 構成/浅原孝子

『教育技術 小五小六』2021年10/11月号より

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