【図工】安全で楽しい木版画の授業 注意点とポイント
木版画は個人作品とはいえ、①下絵の段階から友達と話し合う、②彫刻刀の使い方を確認し合う、③協力して印刷する、④作品を鑑賞し合うなど、活動班での協力や交流が欠かせません。担任は版画指導における全体指導と個別指導と合わせて、子供たちの動きにも気を配り、学級全体で作品づくりを進めていくように心がけておきましょう。
執筆/福岡県公立小学校教諭・柳井文陽
![たのしい木版画](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/082-3.jpg)
目次
木版画作成までのフローチャート
![木版画作成までのフローチャート](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/11.jpg)
表現したい場面を考える
楽しかった場面を想起させます。そのためにも普段の授業や休み時間など、こまめにカメラで記録しておくことが大切です。写真を見せると、そのときの記憶を思い起こす手助けになります。
![話している3人の子供](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/ab0dfa239dc98dc2fc242dcb410fdc8c.jpg)
下絵を描く
準備物
表したいものの写真、四つ切り画用紙、マジックペン(ネームペンくらいの太さ)
写真を見ながら、鉛筆で絵を描きます。それができたらサインペンでなぞり、仕上げます。人物の表情は丁寧に描きます。笑顔や真剣に取り組む顔など、表情豊かな作品にしましょう。
![実際に彫り上げる作品として選択されたポーズ](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/082-6.jpg)
![原画](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/082-7.jpg)
版画板に写し取る
準備物
カーボン紙、版画板、セロハンテープ(版画板と紙をずれないように止める)
- 下絵をコピーして、裏返す。
- カーボン紙を板とコピーした紙の間にはさみ、写し取る(カーボン紙とコピーした紙の間にもう1枚白紙を入れると写しやすい)。
![わかりやすいように重なり部分をずらす](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/10/d46f7300d3b9a6cdabc9abe1858de547.jpg)
彫刻刀で彫る
準備物
版画板(写し取った後、事前に薄く墨を塗って乾かしておく)、彫刻刀(小丸刀、三角刀、切り出し刀、丸刀、平刀)、ビニル袋(机の横につけて、削りかすを入れる)、彫刻刀研磨機(モーターシャープナー)
彫刻刀の活用例
※彫刻刀の使い方は、インターネット上の動画で見ることができます。
三角刀
![三角刀](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/083-6.jpg)
人物と背景の境目、線彫り、髪の毛のラインなどは、三角刀を使います。直線にならないように、板を回しながら彫ると、よい線を彫ることができます。
切り出し刀
![切り出し刀](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/083-5.jpg)
目抜き、唇抜き、歯抜きは、切り出し刀を使うと美しく仕上がるので、お勧めです。
小丸刀・丸刀
![小丸刀](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/083-3.jpg)
![丸刀](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/083-2.jpg)
背景や人物の中抜きは、小丸刀、丸刀を使います。筆者の場合は、最初に「背景を小丸刀で」彫り出すと決めています。背景彫りで彫刻刀の使い方を、子供たちにしっかりと慣れさせることができるからです。
平刀
![平刀](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/09/083-4.jpg)
ぼかしたいところは、平刀を使うのがお勧めです。鳥の羽や水しぶきなどは、平刀を使うと、より正確に表すことができます。効果的に取り入れてみましょう。
上手に彫るための指導のこつ
①米粒くらいの大きさで、すくい取るように彫る
彫刻刀での彫り方を教える際には、まず小丸刀を使って「米粒くらいの大きさで彫ります」「すくい取るように彫ります」という2つを指示し、版画板の裏側で練習をさせます。この練習をしっかりとしておくと、深彫りしたり、一気に彫り過ぎて失敗してしまうのを防ぐことができます。
②彫るところを、教師が油性ペンで書いて示す
子供たちは、彫刻刀の使い方に慣れてきても、何を、どのように、どんな順番で彫ればよいかがわかりません。そこで、教師が「どこを」「どのように」彫ればよいかを、板に油性ペンで書き込んであげると、子供たちは安心して制作に取り組むことができます。彫り始めは「背景」を、その後、「人物」を彫っていくと、彫り進めやすいです。
指導上の注意点
彫刻刀は刃物ですから、大変危険です。注意をしていても、けがをすることがあります。そのために子供たちには次のような指示を必ず徹底します。
- 座って彫る(しゃべらずに集中して)。
- 姿勢は変えず、板を回しながら彫る。
- 刃先に自分の手がこないようにする。
印刷する(刷り方)
準備物
奉書紙、水性版画インク(片付けやすい)、軍手、バレン、新聞紙、インク練り板、ローラー、ピンセット、エプロン、ティッシュ
- 新聞紙の上に版を置き、インクを入れる(インクの入れ具合は事前に練習する)。
- きれいな新聞紙の上にインクが入った版を2人組でそっと置く(このときにピンセットを使う)。
- 版の上に刷り紙を載せる(きれいな手で)。
- 2人でずれないように刷る(バレンは1人2枚、片方のバレンで押さえ、もう片方で円を描くように体重をかけて刷るとずれない)。
- 真ん中を押さえて、少しめくり、刷りを確かめる(薄かったらもう一度こする。小さい部分が気になる場合は指で押さえる)。
![1の様子 新聞紙の上に版を置き、インクを入れる](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/10/083-7.jpg)
![3の様子 2人でずれないように刷る](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2021/10/083-8.jpg)
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2020年10月号より