小3社会「学校のまわりや新宿区の様子」指導アイデア
執筆/東京都公立小学校主任教諭・栁沼麻美
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登、東京都教育庁指導部義務教育指導課・秋田博昭
目次
目標
東京都における新宿区の位置、区の地形や土地利用、交通の広がり、区役所など主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目して、観察・調査したり地図などの資料で調べ、身近な地域や区の様子を捉えて場所による違いを考え、身近な地域や新宿区の様子を大まかに理解することができるようにする。

学習の流れ(18時間扱い)
問題をつくる(3時間)
○四谷や新宿区の地図や様子が分かる写真を基に話し合う。(2時間)
<学習問題>
私たちが生活する四谷や新宿区は、どのようなところなのだろう。
○学習問題に対する予想を基に、学習計画を立てる。

追究する(12時間)
○四谷の様子を調べる。(3時間)
・屋上から四谷の様子を観察する。
・駅前、住宅地など特色のある場所を観察・調査する。
○地形や土地利用、交通の広がり、主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目して、新宿区の様子を調べる。(9時間)

まとめる(3時間)
○調べたことをパンフレット(白地図)にまとめ、新宿区の特色を考える。(2時間)
○パンフレット(白地図) を読み合い、新宿区の特色についての意見交流をする。
導入の工夫
地図や写真などから読み取ったことを基に話し合うことで、「身近な地域はどのような様子なのだろう」「新宿区にはどのような特色があるのだろう」という問いをもち、主体的に追究できるようにします。
第2時
( 第1時では、生活科で作成した絵地図や写真などの資料を基に、学校の周りの様子について話し合います)
新宿区はどのような地域だと言えるか、これらの写真や地図を基に考えてみましょう。
高いビルがたくさん見えるので、新宿区には会社やデパートがたくさんあるのかな。
木がたくさん集まっているように見える場所もあるけど、林になっているのかな。
東京都の地図を見てみると、新宿区は東京都の東のほうにあるんだね。
私たちの住んでいる四谷や新宿区の様子は、どうなっているのかな。
子供の気付きや疑問には、学校の周りや新宿区の様子を知りたいという思いがあることを確認してから、学習問題を設定することが大切です。
学習問題
私たちが生活する四谷や新宿区は、どのようなところなのだろう。
第3時
( 第3時の前半では、学習問題に対する予想を出し合います)
【学習問題に対する予想の例】
・海や川、山などの自然が少ない。
・家やビルが多い地域ではないか。
・車や電車がたくさん走っていると思う。
・新しい建物が多くて、古い建物は少ないのではないか。
・都庁や会社があるので、人がたくさん住んでいると思う。
これらの「予想」を確かめるためには、どのようなことを調べるとよいと思いますか。
山や川はあるのか、区内のどこに家やビルがたくさんあるのかを調べるとよいと思います。【地形、土地利用】
四谷を走っているJRや甲州街道のように、新宿区にはどのような電車や道路があるのかを調べるとよいと思います。【交通の広がり】
神社やお寺などの古い建物があるのかどうかを調べるとよいと思います。【古くから残る建造物】
都庁や新宿区役所はどこにあるのか、何をしているのかを調べるとよいと思います。【公共施設の場所と働き】
問題をつくる(1・2・3/18時)
学校の周りや新宿区の様子が分かる資料から気付いたことを基にして学習問題を設定するとともに、学習問題に対する予想を基に学習計画を立てます。
まとめる(16・17・18/18時)
調べて分かったことをパンフレット(白地図)にまとめ、新宿区にはどのような特色があるのかを考え、発表したり意見交流したりします。
表現活動の工夫
四谷や新宿区の様子について調べたことをまとめたパンフレット(白地図)を基にして考えた新宿区の特色について、自分の考えと意見の交流をすることで、新宿区の様子をより深く理解できるようにします。
第18時
パンフレットを使いながら、新宿区には、どのような特色があるのか、意見の交流をしましょう。
新宿駅の周りには、高層ビルや店が多くあり、観光客もたくさんやってきます。区内には新宿御苑や古い寺や神社も多くあるので、新宿区には、観光スポットがたくさんあると思います。
新宿区内には、JR線、小田急線や西武線などの私鉄、都電、地下鉄などたくさんの鉄道が走っています。
また、甲州街道や青梅街道、首都高速などの大きな道路もあるので、私は、新宿区はいろいろなところへ出かけるのに便利、という特色をもっていると思います。
調査や見学をして分かったことを、学級や個人で白地図などにまとめる作業に継続して取り組むことは、子供自身が地図を読み、区の様子の理解につながる大切な活動です。
また単元の終末に、新宿区の様子をパンフレット(地図)にまとめていくことは、区の特色を考えるために大切な活動であり、友達と考えを交流することは、区の特色を深く広く理解することにつながっていきます。
単元づくりのポイント~地図帳の活用~
本単元は、小学校社会科の学習で最初に学習する単元です。そのため、単元の導入では、学校の周りの様子など、子供にとって身近な地域を対象にして、どんな場所に何が集まっているかなどを調べていくことを大切にしましょう。
そして、調べて分かった地域の様子(地形、土地利用、交通など)を基に、ほかの地域について調べ、自分たちの地域の様子と比較しながら、区市町村内の様子は場所によって違いがあることを考えることができるようにしていくことが大切です。
その際には、第3学年から配付される地図帳を活用するとともに、方位や主な地図記号についての指導を確実に繰り返し行うことで、定着を図っていく必要があります。
イラスト/横井智美、佐藤雅枝
『教育技術 小三小四』2020年4/5月号より