小4道徳「スーパーモンスターカード」指導アイデア
執筆/北海道公立小学校教諭・石丸里沙
監修/北海道公立小学校校長・荒井亮子、文部科学省教科調査官・浅見哲也
目次
授業づくりで大切にした3つのこと
四年生の児童たちは、成長とともに判断力が高まっているものの、正しいと分かっていても実行できなかったり、よくないことと知りながらも周囲に流されたりしてしまうことも少なくありません。
今回の授業は、そんな人間のもつ弱さを踏まえたうえで、正しいことを行う勇気について一人ひとりが考えを深めていけるように、三つの視点を大切にしながら授業づくりをしました。
①「ぼく」の心情に意識を向けさせる
教科書教材「スーパーモンスターカード」(光村図書出版)は、友人の万引きを止める「ぼく」の姿を通して善悪の判断や自律について考える教材です。教材の冒頭部分で、友人は万引きをほのめかしますが、ここで「ぼく」は注意することを躊躇してしまいます。
万引きを止めるという状況ではないにせよ、「ぼく」と同じように友人に注意することを躊躇したという経験をもつ児童も少なくありません(資料1・事前アンケート)。
▼資料1 事前アンケート
そこで、自分の経験と重ねてこの時の「ぼく」の心の中に意識を向けて考えることができるように、心情メーターを活用しました。心情メーター(資料2)は、メーターを動かすことにより、「万引きを止めなければ」「まあ、いいか」という二つの気持ちの度合いを表します。
メーターを使用することで、「万引きを止めなければ」という気持ちが高まっていく様子や、正しくないと分かってはいたものの、すぐに止めることができなかった弱さなどを視覚的に表現することができます。
▼資料2 心情メーター
※授業では2枚の円形の紙に切り込みを入れて動かせるようにした心情メーターを使っていますが、ダウンロード資料は色をぬるようにしています。
②対話を通して自分と向き合う
「ぼく」に寄り添って、なぜ万引きをほのめかしていた友人を止められなかったのか考えることは、自分の生活をふり返る機会にもなります。
「ぼく」の心情を想像し、心の弱さを互いに発表し合うことは、自分の弱さを認め、その弱さに向き合う態度を育てることにもつながります。発表の根拠である児童の経験を意識して引き出し、自分の生活と関連を感じられるようにしました。
③よりよい生き方について考えを深める
弱さについて共感が広がった後は、迷っても正しいことをするためには何が大切かについてさらに話し合います。大切にしたいのは、「自分だったら」といった視点で学習をふり返る時間です。
自分に自信があり、考えたことや思ったことをすぐに行動に移せる子、一人では難しくても誰かと一緒なら勇気が出せる子、考える時間があれば正しい行動ができる子などさまざまな児童がいます。
自分だったらどう行動するのか、どういう思いを大切にするのかといった選択肢を増やしてほしいと願っています。
実際の授業展開
タイトル
「スーパーモンスターカード」 ~正しいことを行う勇気~
指導目標
もっと早く止めればよかったと後悔する「ぼく」の姿を通して、正しいと判断したことを自信をもって行おうとする実践意欲と態度を育てる。
内容項目
A 善悪の判断、自律、自由と責任
準備するもの
・ワークシート(児童配付用)
・場面絵①②③(板書用)
・心情メーター(板書用・児童用)
ワークシートと資料のダウンロードはこちらからできます
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指導の概略(板書計画例と展開例)
教科調査官からアドバイス
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也
「勇気」という言葉を聞いただけで「希望と勇気、努力と強い意志」という内容項目を捉えがちですが、「勇気」はさまざまな道徳的価値を実現するときに必要な心の働きであり、この授業では、中学年の「善悪の判断、自律、自由と責任」つまり、正しいと判断したことは、自信をもって行うことについて、児童が正しいことへ一歩踏み出せるように、「勇気」を捉えて授業を展開しています。
そのためにも石丸先生は、心情メーターという教具を工夫して、正しいと分かっていてもなかなか踏み出せない人間の弱さは誰にでもあるということを受け止め、また、そのままにすることの後悔を味わわせ、勇気を出して正しいことを行おうとする実践意欲や態度を育てようとしています。
この授業の指導方法の工夫として紹介されていた役割演技で、勇気を出して伝える疑似体験をするのも、実践意欲や態度を育てる授業では効果的と言えるでしょう。
『教育技術 小三小四』2020年4/5月号より