「板書」の基本②~低学年の板書計画のポイント~
連載|ayaya先生のすてきやん通信
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の好評連載! 今回は、「低学年の板書計画のポイント」を教えてくれました。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
低学年の板書に大切なこと
低学年の児童は、書く速さの差が大きく、全員が書けるまで待っているうちに姿勢が崩れたり、手遊びを始めたりしてしまうことが少なくありません。
できるだけ書く速さを同じくらいにして、学習のテンポを上げ、授業内容をきちんと理解させるためには、安心を生み出す「板書の型」、学習意欲を向上させる「指導言」、見やすい「板書量」が重要です。
「板書」の基本、第一回はこちら!→「板書」の基本① ~見やすい文字の書き方~
板書の型
「型」というのは、日常のルーティンと似ています。いつもすること、つまり「いつも書くこと」を決めておくのです。そうすることで、子供たちは自然と学習の構えを身につけることができます。
国語の授業でも算数の授業でも、学習展開とともに黒板を三つに分け、「はじめ・中・おわり」として考えます。
はじめをA、中をB、おわりをCとすると、次のような配置の黒板になります。
国語を例に
国語の授業で「いつも書くこと」は次の通りです。
- A……日付・教材名・作者(筆者)・めあて
- C……ふりかえり
Bの部分は、めあてに対して、児童が思考を広げたり深めたりする過程になるので、授業によって変わります。
Aの「いつも書くこと」を、始業後、できるだけ速く書けるようになることが大切です。このルーティンは、繰り返すことで身についていきます。2回目にできるようになる子もいれば、10回目にできる子もいるでしょう。できるまでの速さは一人ひとり違います。「字の丁寧さ」や「書き上げるまでの時間」という観点で見ると、でき上がりにおいても、個人差はあるでしょう。
しかし、子供たち同士を比べるのではなく、その子の前の姿と比べて、頑張りを認めるようにします。
「昨日よりも速く用意ができましたね」
「今日は字がとっても丁寧ですね」
「先生よりも速く書けたのですね」
どの教科で、何をいつも書くかを理解しているということは、学習への構えだけでなく、安心感にもつながります。「わかる」「できる」を積み重ねるとともに、先生からの言葉によって、児童は「成長している自分」に気づき、自分を誇らしく思ったり、「もっとがんばろう」とさらに意欲を向上させていくのです。
できないことを指摘するよりも、できていることに重点を置いて、できるだけ多くの声かけをしていきましょう。
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見やすい板書量
低学年の児童は、まだまだ複雑な空間を認知する能力が未発達です。そのため、小さな字、不揃いの字、文字数過多による板書は文の意味理解が難しく、つまずきの要因となります。
板書計画の段階で、ノートと同じ文字数にしたり、書く時間を計算したりしておきましょう。
また、板書するときには、大きさを統一した字でゆっくり丁寧に書きながら(前回の記事を参照)、正しい姿勢やえんぴつの持ち方にも気を付けるように声かけをします。
上の「やくそく」(光村図書1年上)の板書は、飛び込み授業をした2時間目の板書です。
このとき、注意したのは次の4点です。
- 子供のノートが12マスだったことを意識して、めあての一行目の文字数を調整した
- 拗音や促音の抜けや書く場所の間違いをできるだけ減らすため、空白やリーダー入りのマスを書いた
- 書くことと書かないこと(考える・対話する)を教師が板書する前に伝えた
- チョークの色の意味を確認しながら板書した
チョークの色に意味をもたせると、子供たちの思考の流れを見えるようにできたり、大切なことを強調して学習内容の理解を深めたりできます。
私の場合は、
- 白……基本の色
- 黄……児童の意見の重なり・つながり・深まり
- 橙……大事な国語用語・教師が押さえたいこと
としています。
子供たちは、
- 白……えんぴつ
- 黄……赤えんぴつ
- 橙……青えんぴつ
で書いています。
低学年の板書は、ノート指導と関わりあって、明確な指示や説明が不可欠です。子供の立場に立って、わかりやすい指導を心がけることが大切でしょう。
次回は、児童の意見を広げたり、深めたりする板書のポイントについてお伝えします!
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。