小5・6家庭科「思考力と実践力を育む調理実習」一人調理を始めよう

関連タグ

調理実習は多くの子供たちが楽しみにしており、達成感を得られる学習でもあります。さらに子供たち一人一人が達成感を味わい、 確かな知識及び技能を習得するとともに、思考力を高め、実践する力を育むのが「一人調理」です。ここでは調理実習で「一人調理」を取り入れる時の基本についてくわしく紹介します。

執筆/聖徳大学講師・佐藤雅子
監修/文部科学省教科調査官・丸山早苗
協力/千葉県成田市立公津の杜小学校

①事前の実態把握
(食物アレルギーへの配慮)

食物アレルギーを有する子供がいる場合には、保護者・関係機関・教職員の連携が欠かせません(下記資料1)。

事前に子供の食物アレルギーに関する正確な情報の把握に努め、発症の原因となりやすい食物の管理や、発症した時の緊急時対応について必ず学校内で確認しておきます。また、実習時にも扱う材料にアレルギーの原因となる物質を含む食品が含まれていないかを確認し、子供の状況に細心の注意を払う必要があります。

調理実習アレルギー対応依頼書
資料1 調理実習アレルギー対応依頼書
クリックすると別ウィンドウで開きます。

②一人調理

学校では、グループ調理、一人調理など様々な学習形態で実習を行っています。 グループ調理の場合、「皿洗い担当」「切る担当」など、一人の子供が一つの作業の担当のみに偏ることのないよう配慮する必要があります。一方、一人調理では、一連の調理操作を体験する場を全ての子供に保障することで、確かな知識及び技能の習得につながると考えます。

また、手順を教えてその通りに調理するだけの実習では、子供たちの思考力は育ちません。「なぜそうするのか」「なぜそう考えたのか」など理由や根拠をはっきりさせていくことが大切です。

1.一人調理の流れ

野菜を切る子供とその様子をよく見ている子供
友達の調理をよく見る。

①めあての確認

「今日の学習では何ができるようになるのか」「何をするのか」という学習のめあてを確認します。子供はめあての達成後の自分の姿をイメージして自分のめあてを明確にします。

②自分の調理目標の明確化

比較資料、試食、前時とのつながりなどから、自分の調理目標とその理由をより明確にします。

③示範  

教師は調理の要点を説明しながら、調理の仕方を見せます。子供たちは、教師の示範を見ながら、調理手順や調理上のポイントとともに、自分の調理目標に近付くための方法を確認します。

④一人調理

調理をする際の順番と役割を決めます。調理をしていない人も、調理のアシスタントをしたり調理後の片付けをしたりします。アシスタントは、加熱時間を計るなど調理する人の手伝いをします。  

グループ内のメンバーの役割り図
クリックすると別ウィンドウで開きます。

⑤試食

自分の調理目標にしたがって調理できたかどうかについて試食をして判断します。また、友達と食べ比べることで、互いの違いやよさに気付き、次回以降の調理への関心や意欲を高めていきます。

2.知識及び技能の活用

調理に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付ける場合は、共通の食品を用います。その後、身に付けた知識及び技能を活用する場を設定し、他の食品でさらに知識や技能を高める工夫(加熱の温度や時間の調節の工夫)をします。

③指導上のポイント

①思考する学習過程

思考力を高めるために、「自分の目標を設定する」「解決方法を考える」「実践する」「実践活動を評価・改善する」「家庭での実践」という学習過程を大切にします。

自分が作る料理の計画ワークシート
自分が作る料理の計画ワークシート
クリックすると別ウィンドウで開きます。

②子供一人一人が意思決定

子供たちは、自分のできることを増やしたいと願っています。それを支えるのが、教師です。  

例えば、「ゆでる」学習において、おひたしや和え物、温野菜サラダなどを調理する場面では、子供によって使用したい食品(野菜)が異なります。切り方や加熱の順序を最終的に決めるのは子供たち一人一人です。

その根拠(大きさをそろえる、熱の通りにくいものから順に加熱するなど)を 明確にするようにして、一人一人が意思決定できるようにします。

③一人一人の感覚を尊重する

一人一人の子供たちが感じることは自由で尊重されるべきものです。「どう感じたのか」「どうしてそう感じるのか」など、言葉にすることで、より自分の感覚に向き合い、調理時の食品の変化等を意識できるようになります。

計画通りに長ネギを切る子供
長ネギをゆでた子供。計画段階で、切り方も考えている。

④達成感が実践する力に

子供たち一人一人の意思決定を大切にした一人調理は、子供が達成感を味わうとともに、調理への自信にもなります。そして、「家族にも食べてもらいたい」 「できるようになったことを見てもらいたい」「今度は別な食品で試してみたい」と家庭実践への意欲につながっていきます。

※活動を実施する際は、新型コロナウイルス感染症に関する各自治体の対応方針を踏まえ、子供の安全確保に対して十分に配慮してください。
(写真はコロナ禍以前のものです)

構成/浅原孝子

『教育技術小五小六』2020年9月号より

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました