小4国語「一つの花」指導アイデア
教材名:「一つの花」(光村図書 四年上)
指導事項:読むこと(1)ウ・オ 伝国 イ(オ)
言語活動:エ
執筆/京都府公立小学校教諭・吉田夏紀
編集委員/文部科学省教科調査官・菊池英慈、京都府公立小学校校長・藤本鈴香
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元では、場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むことができる力の育成を図ります。また、物語を読んで考えたことや自分が紹介したいことについてまとめ、それを共有することで、さらに自分の考えを広げる力の育成もめざします。
②言語活動とその特徴
本教材は、戦争中の親子や夫婦の思いを描いた文学作品です。子供たちはこれまでにも三年生の教材「ちいちゃんのかげおくり」で戦争時代を題材とした物語に出合っています。 また、本単元の「この本、読もう」でも、「だれもが平和に暮らせる世界を願って書かれた本」として多数の作品が紹介されています。
本単元では、このような戦争時代を題材とした本のなかから自分が紹介したい本を選んで読みます。そして、場面の様子に着目して読み、取り上げたい事柄を選んで作品を紹介するという言語活動を位置付けます。
このとき、紹介したい本や相手、あらすじや心に残った言葉など、紹介したい事柄を自分で選ぶことにより、主体的な学びをめざします。
また、紹介する際にはカードやフリップを使うことで、紹介したい事柄の順番を自分の思いによって入れ替えることができ、友達と自分の紹介のしかたを比べて、さらに考えを広げることができるようにします。

単元の展開(8時間扱い)
主な学習活動
第一次(1~2時)
①これまでの読書経験をふり返り、物語を紹介するという学習課題を設定し、学習計画を立てる。
【学習課題】
場面の様子に着目して読み、取り上げたい事がらを選んで、作品をしょうかいしよう
②「一つの花」を読んで感想を交流し、物語を読む視点を整理する
→アイデア1 主体的な学び
第二次(3~6時)
③物語の設定を確かめ、大まかな内容を捉えながら読む。
④登場人物の会話や行動に着目して読み、それぞれの場面の出来事とそのときの登場人物の気持ちを想像してノートにまとめる。
⑤特別な言葉に着目して読み、作者の思いが込められた言葉について考えを交流し合う。
⑥教材文を読んで、心に残ったことを基に取り上げたい事柄を選び、教材文の紹介カードを書く。
→アイデア2 対話的な学び
第三次(7~8時)
⑦自分のお気に入りの作品を読んで、心に残ったことを基に取り上げたい事柄を選び、伝えたいことを紹介カードに書く。
⑧本を紹介し合ったり、紹介して感じたことを交流したりすることで、学習をふり返り、自分の身に付いた力を確かめる。
→アイデア3 深い学び
アイデア1 紹介したい本や相手、事柄を選んで読もう
本を読んで感動したとき、その思いを伝えたい相手はさまざまです。また、その本のどんなことを伝えたいのか、どこに自分の心が動いたのか、紹介したいことも一人ひとり違います。
誰にどんなことを紹介したいのか、子供たちが「伝えたい」という思いをもって学習に向かうことが主体的な学びにつながります。
【誰に】
- おうちの人
- 友達
- 学年の人
- 学校の人
- 地域の人
- お世話になった人
【どの本を】
- 「この本、読もう」の参考図書の中から
- 指導者や学校司書が選んだ本の中から
- 学校図書館で選んで
【どんなことを(読みの視点)】
- 題名と作者
- あらすじ
- 登場人物
- 出来事
- 心に残った言葉や文
- 作品の特徴(組み立て、表現)
- 感想や考え
学習の目的によって取り扱う文章や本は違います。学校司書や地域の図書館の司書と連携して、目的に合った本を用意するようにしましょう。
アイデア2 取り上げたい事柄を選び、紹介カードを書こう
教材文を読んで心に残ったことを基に、登場人物の気持ちや重要な出来事、心に残った言葉や文など、自分が取り上げて紹介したい事柄を選びます。
このとき、子供たちは、どの事柄を選ぼうか迷っていたり、事柄は決まっていてもどのように紹介するか、内容がはっきりしていなかったりします。紹介カードを書く前に、友達に相談したり友達の考えを聞いたりする対話的な学びの場を設定することにより、自分の考えが確かになります。
心に残った言葉や文について
「一つの花を見つめながら―」という文が心に残りました。その理由は…
最後の場面のゆみ子は「一つだけちょうだい」という口ぐせを言っていないところから…。
登場人物について
ゆみ子にはもっと大きな喜びを知ってほしい、幸せに生きていってほしいというお父さんの気持ちが伝わってきました。
私は、お母さんもお父さんと同じ思いをもっていたと思います。なぜなら…
事柄ごとに場を設定し、自分が迷っていることや話し合いたいことを選んで話し合えるようにしましょう。
時間を決めて、何回か話合いを繰り返すと、子供たちの考えもはっきりしてきます。
アイデア3 本を紹介し合ったり、紹介して感じたことを交流したりしよう

紹介カードを使って本を紹介するときには、どんな順番で事柄を話すかを決めます。このとき、本の題名や作者、あらすじなどは最初のほうが分かりやすい、最も伝えたいことを最初に話したいなど、一人ひとりがもう一度その本のよさや自分の考えに向き合うことができます。
また、友達と本を紹介し合い、紹介のしかたや内容を自分と比べることで、一人ひとりの感じ方の違いやその作品の共通する魅力に気付くことができ、自分の考えを広げたり読書に対する意欲を高めたりすることにつながります。
イラスト/佐藤道子 横井智美
『教育技術 小三小四』2019年6月号より