4年算数「変わり方調べ」で西暦を和暦に変える方法を考える
算数科と社会科を関連させた教科横断的なアプローチで、西暦を和暦に変換する方法について考える学習の提案です。算数を通して日本の歴史への関心が高まるきっかけになり、日常生活において算数を活用できるオススメの手法です。ぜひ取り入れてみてください。
執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人
松原夢人/1981年生まれ。東京都公立小学校主任教諭。教員14年目。研究分野:算数
目次
算数を通して日本の歴史への感心を高める
約30年続いた平成の世が幕を閉じて、令和の時代へと変わりました。この新しい元号である「令和」は、「初春の令月にして、気
世界の多くの国々では西暦を採用していますが、日本では西暦と独自の元号を用いた和暦の併用をしているのです。
では、どうして日本は和暦を使っているのでしょうか。
様々な解釈がありますが、日本人と元号の関係には根強い文化があり、元号が持つ時代的な感覚を日本人は共有しているからだと言われています。
実際に、私たちの身の回りにも市役所の手続き、携帯電話の申込み、病院の窓口、運転免許証等に記載する文書の生年月日が、和暦の書式になっているケースが多く見られます。年月日の頭に大正(T)、昭和 (S)、平成 (H) の記号が付けられているでしょう。
ちなみに、令和(れいわ)をローマ字で表記すると、「LEIWA」ではなく「REIWA」になので、記号は令和(R)になります。
小学6年生になると、社会の授業では「日本の歴史」を学習します。その中で、年表を使って調べる場面が必ず出てきます。
そこで、教科横断的なアプローチとして、4年生の算数の単元「変わり方調べ」で「西暦を和暦に変換する方法について考える学習」を導入することを推奨します。
子供たちが算数を通して日本の歴史への関心を高めさせることのきっかけにもなり、日常生活でも算数を活用できる方法なので、ぜひ紹介したいと思います。
本時のねらいと評価規準
(本時 2/5)
本時のねらい
伴って変わる2つの数量の関係(差が一定)を表や式に表して、その関係をとらえることができる。
評価規準
伴って変わる2つの数量の関係(差が一定)を、表から変化の特徴を読み取り、記号を用いて式に表す方法を考えることができる。(思考・判断・表現)
問題場面
何年ですか?
今は、何年ですか?
2020年です。
令和2年です。
どちらも正解です。2020年は西暦といいます。令和という元号がつくのは和暦といいます。令和の前の時代は何か知っていますか?
平成です。
- 平成→昭和→大正というように時代が遡ると元号が違うことを確認する。
昨年は2019年の令和元年(1年)で、今年は2020年の令和2年です。令和の時代は二千何年まで続くと思いますか。
きっと2100年まで続くと思います。
では、2100年は令和何年ですか?
いきなり言われても。
分かりません。
令和82年です。
- 数人の児童に西暦を言ってもらい、教師が和暦に変換して答える。
- 2018年以前は西暦を令和○年に変換できないことを確認する。
教師が瞬時に回答することで、「なんで先生はすぐに分かるの?」「きっと何かきまりがありそうだ!」という児童たちの知的好奇心を喚起させ、主体的に取り組もうとする態度を育むことが大切です。
本時の学習のねらい
令和時代の西暦を和暦に変える方法を考えましょう。
見通し
・表をかく
・式に表す
きまりを見つけるためには、どうすればいいでしょうか?
表にかいて整理します。
□(西暦)や○(和暦)の記号を使って式に表します。
自力解決の様子
A つまずいている子
西暦と和暦を整理した表がかけない。また、西暦と和暦を整理した表をかいたが、どんなきまりがあるのか見つけることができないでいる。
B 素朴に解いている子
西暦と和暦を整理した表を横に見て、西暦が1増えれば、和暦も1増えるというきまりに気付く。また、表を縦に見て、どんなきまりがあるのか考えている。
C ねらい通りに解いている子
西暦と和暦を整理した表を縦に見て、西暦に2018を引くと和暦になることに気付き、□と○を使った式に表すことができる。
自力解決と発表・検討のポイント
①自力解決の手立て
- 導入で令和2年が2020年であることや、令和元年は令和1年で2019年であることを確認する。
- 表が書けないでいる児童には、前時のノートを見ながら表の書き方を確認させる。それでも表が書けない児童には、以下のヒントカード(空欄になった表が書かれた紙)を渡して支援する。
- 表を見てもきまりに気付くことができない児童には、表を横や縦に見るように助言する。
- 表を横に見て、きまりには気付いたが言葉に表せない児童には、「西暦が1増えると和暦はいくつ増えているのか?」と助言する。
- 表を縦に見て、きまりには気付いたが言葉や式に表せない児童には、対応の特徴を捉えさせ言葉の式を考えさせる。
②発表・検討
2つの数量の関係を見出すためには、調べた結果を表にまとめただけでは意味がありません。まず、表を書いたことで、表の数値の間の関係から一方の数量が増加するときの他方の数量の増減の変化が捉えやすくなることに気付かせることが必要です。
その上で、
表の数値を横に見る
…変化の特徴(西暦が1増えたら、和暦が1増える)
表の数値を縦に見る
… 対応の特徴(差が一定)
この2つの表の見方を身に付けさせます。
児童の考えを発表させたり検討させたりする際は、表に数値や矢印などの記号を書き込みながら「縦に見ると…」「横に見ると…」という言葉を使って、数値がどのように変化をしているのか、あるいはその規則性を説明させるようにします。
また、西暦を□、和暦を○の記号に置き換え、式を用いることで対応の特徴を簡潔に表すことができることにも気付かせます。
2019-1=2018
2020-2=2018
2021-3=2018
2022-4=2018
2023-5=2018
︙
□ - 2018 = ○
これで令和時代の西暦を和暦に変える方法だけ分かりましたね。
※教師の「だけ」という言葉を強調して伝えることで、子供たちに「他にも変える方法があるの?」という問いを引き出す。
令和時代の和暦は西暦に変える方法はないのでしょうか?
表や□ー2018=○の式から和暦を西暦に変える方法を考えさせます。
「○+2018=□」または「2018+○=□」で成り立ちます。
本時のまとめ
令和時代の西暦(□)を和暦(○)に変えるためには、
□ー2018=○
と計算します。
また、和暦を西暦に変えるためには、
○+2018=□または2018+○=□
と計算します。
教師の小話
令和時代の西暦を和暦に変換しようと思った時に、『二千何年を引けばいいのだろう?』とうっかり忘れてしまうことがあるでしょう。実は、そういう場合に思い出す方法があります。
このように紹介して、下記のように語呂で覚えることができることを伝えます。
2018→018→れいわ→令和
そして、日本の歴史の年表を学習する際も、語呂を使って覚える方法があることも合わせて伝えましょう。
子供の感想例
西暦を和暦にしたり、和暦を西暦にしたりする方法があることを知って良かった。歴史の学習をする時にも使ってみたい。
令和以外にも平成や大正などの時代も西暦を和暦に変えることはできないのかな?
児童の学習感想から出た「問い」を称賛し、令和だけでなく他の時代も表にまとめてきまりを見出し、式に表すことができそうだという考えと、実際にやってみたいという学習意欲を引き出します。
主体的な学習を促す問題
大正・昭和・平成が書かれた「西暦和暦一覧表」を子供たちに配付し、授業の終了時刻まで取り組ませ、オープンエンドに終える。