小6国語科「大切にしたい言葉」 全時間の板書例&指導アイデア(令和6年度以降版)
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「大切にしたい言葉」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/神奈川県川崎市立はるひ野小学校・田中真琴
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元は、令和2年度版の教科書にも掲載されていました。今回の改訂で、「書くこと」の指導事項ウに目標が焦点化されています。そこで、学習活動の記述、推敲する段階に重点を置いて、単元を作り直しました。
自分の「大切にしたい言葉」を伝えるために、その言葉の意味や出会ったきっかけといった事実と、それが自分の「大切にしたい言葉」になった理由といった自分の意見や考えを区別し、必要に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりするなど、書き表し方を工夫する力を育みます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
この単元では、経験や事実、自分の考えなどを組み立て、文章を書いていきます。
自分の考えを冒頭にもってきてもよいし、経験から書き始めるのも印象的になるかもしれません。どのような構成にしても成り立つからこそ、書き手の思いや、重点を置きたい内容が明確である必要があります。構成は、重点的な指導内容ではないものの、これまで学習してきた構成を思い出し、学習に生かすことが求められます。
推敲の段階では、伝えたいことが明確になっているか、構成は適切かなどの観点を明確にし、互いに意見が交わされる時間となるようにします。どのような内容を簡単に書いたり詳しく書いたりしているか、についても意見交流ができるとよいでしょう。
教科書に載っている例文に限らず、これまでに出会った様々な文章の構成や書き表し方の工夫を総動員し、文章を作り上げる楽しさを感じてほしいと思います。6年生の集大成となる文章にしていこうと、児童が意欲的に書く活動に向かう姿が見られることを期待しています。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 イメージを十分に膨らませる
「大切にしたい言葉」は探せるとしても、ではなぜそれが自分の「大切にしたい言葉」なのか、経験とつなげるとはどういうことなのか、児童にはイメージしにくいでしょう。
そこで、まずは著名人や保護者など身近な大人が大切にしている言葉(例えば、座右の銘など)、その言葉にまつわるエピソードを集めておくように声をかけておきます。様々な人の「大切にしている言葉」や、その言葉にまつわるエピソードを知ることで、自分の「この先、大切にしたいお気に入りの言葉」は何だろうかと興味や関心をもって、単元に臨めるでしょう。
教科書では、1月頃の単元である「知ってほしい、この名言」とつなげて学習を展開するのもよいでしょう。この単元は、「B 書くこと」の「題材の設定、情報の収集、内容の検討」に重点をおいた単元になります。(「みんなの教育技術」で2022年に公開した「教科指導のヒントとアイデア」でも、上記の活動を盛り込んだ単元計画を掲載していますので、参考にしてみてください。https://kyoiku.sho.jp/199359/)
多くの名言や言葉と出会い、それにまつわるエピソードに触れていく中で、「大切にしたい言葉」と、自らの経験を結び付けて考えるイメージが膨らんでいくでしょう。
さらに文章全体のイメージをもつために、教科書の例文を使い、経験が書かれているところ、考えが書かれているところを線で色分けしてみることをおすすめします。色分けによって、経験や事実が書かれている部分と、自分の考えが書かれている部分が視覚的に分かりやすくなります。
教科書の例文の構成は大まかに、①選んだ言葉の紹介、②発表会の劇での失敗の経験、③その言葉と経験から考えたこと、④まとめ、となっています。時系列に沿って書くことが多い児童にとっては、構成のよい参考になるでしょう。また、経験をもとにして、自分の思いや考えが導かれているので、事実と意見を区別して書くとはどういうことなのかを、児童が分かりやすく理解できるでしょう。
教科書の例文は、途中が省略されていますので、その部分は教師が自作しておいたり、児童と一緒にどのような文が必要か考えたりするのもよいでしょう。
〈対話的で深い学び〉 推敲の視点を明確に
本単元では、推敲の段階で友達と読み合い、アドバイスをし合う時間を作ります。
対話に有用性をもたせるためには、推敲時に気を付けたいポイントを事前に確認する必要があります。事実と意見が区別されているか、伝えたい内容が明確になっているか、分量は適切かなど、前時までの活動を振り返り、学級全体で共通理解するとよいでしょう。
また、主に書き表し方の工夫について、効果的に引用できているか、さらに適した表現はないか、などの観点でも読み合えると理想的です。
教科書の例文の優れた表現や、事前に見取っておいた、書き表し方が工夫されている児童の文章を紹介するなどして、推敲の観点をより明確にしましょう。そうすることで、友達や自分の文章のよいところやもっと工夫できるところを意欲的に探す姿が生まれることが期待できます。
一度に多くの観点をもって読み合うことが難しい児童もいると思われます。その場合には、構成について、書き表し方について、など観点を分けて推敲できるようにします。
一つの文章を書き上げるためには、文章を何度も読み直し、友達との対話で得た情報をもとに書き直し、より自分の考えが伝わる文章にするために悩み、工夫していく必要があります。その試行錯誤こそが、深い学びを生み出します。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)より多くの情報に出会うために
一つの文章を書き上げるのは、大人にとっても負担が大きく、難しさを感じるものです。ましてや経験の少ない児童には、書き表し方を工夫したいと思っても、知識がなかったり、そもそも工夫した文章とはどういうものなのかわからなかったりするのではないでしょうか。
そこで、児童が参考にできるように、多くの文章を用意しておき、端末で簡単に見られるようにしておきます。過去に学習した教科書の説明文などが参考になるでしょう。また、著作権や個人情報の取扱いに注意しつつ、活用できるものがある場合には、卒業文集や作文集なども参考にする方法もあります。
端末上で、筆者の意見はどこかに注目したり、いいなと思った表現に線を引いたりする中で、自分にとっての参考資料が出来上がります。さらに、線を引いた箇所を共有し合う時間を取れば、児童一人一人が表現の幅を広げることもできるでしょう。
困ったらこの資料を見よう、と進んで他の文章の表現を、自らの文章表現に生かそうとする態度が見られることを期待します。
6. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: 書き表し方を工夫して、経験と考えを伝えよう「大切にしたい言葉」
【主な学習活動】
(1時、2時、3時、4時、5時、6時)
① 自分で集めた「大切にしたい言葉」、それに関連するエピソードを紹介し合い、クラスのみんなに伝えたい「大切にしたい言葉」を決める。
② 教科書の例文を経験や事実、自分の考えに分けることで構成を捉え、自分の文章の構成を考える。
③ 構成をもとに、下書きをする。〈 端末活用(1)〉
④ 友達と読み合い、構成や書き表し方についてアドバイスし合い、推敲する。〈 端末活用(1)〉
⑤ 推敲したことをもとに、書き表し方を工夫しながら書く。〈 端末活用(1)〉
⑥ 友達と読み合い、感想を伝え合う。
全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア
イラスト/横井智美