小1生活「じぶんで できるよ」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「じぶんで できるよ」の単元を扱います。
執筆/高知県公立小学校教諭・清光千萩
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
高知県公立小学校校長・尾中映里
目次
年間指導計画
4月 | どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム) |
5月 | がっこう だいすき |
6月 | きれいに さいてね |
7月 | なつが やって きた |
8月 | いきものと なかよし |
9月 | あきを さがぞう |
10月 | あきの おもちゃを つくろう |
11月 | あきまつりを しよう |
12月 | じぶんで できるよ |
1月 | ふゆを たのしもう |
2月 | しん1ねんせいに がっこうのことを つたえよう |
3月 | もうすぐ 2ねんせい |
単元目標
家庭生活について、調べたり、尋ねたり、実践したりすることを通して、自分の家庭生活を振り返ったり、家庭生活を支えている家の人のことや、自分でできることなどについて考えたりしながら、家庭での生活は互いに支え合っていることが分かり、自分の役割を積極的に果たすとともに、規則正しく健康に気を付けて生活しようとすることができるようにする。
本単元と関わりの深い幼児期の経験
- 家族と話し合いながら、生活リズムカード等を活用して、規則正しい生活(早寝・早起き・朝ごはん)を意識して生活する経験。
- 自分たちに必要な係や当番を考え、役割を分担して、園や学級のために進んで取り組もうとする経験や、それに伴って心地よさを感じる経験。
- 生活に必要な様々なことを、友達がする姿を見たり、一緒にしたりして、生活に必要な様々な習慣や態度を身に付けようとする経験。
- 園や地域の行事で高齢者と触れ合う中で、いろいろな人に親しみをもつ経験。
- 家族の一員としてお手伝いをしたり、母の日や父の日などに手紙を書いたりプレゼントを作ったりして、感謝の気持ちを伝える経験。
学習の流れ(全12時間)
いつも、家でどんなことをしているかな。
学校から帰ったら、宿題をしているよ。
家族のお手伝いをしているよ。
朝は、お母さんに起こしてもらっているよ。
【小単元1】どんな せいかつを しているかな(3時間)
①自分の生活を見つめよう
自分の家庭での1日を振り返り、家族が家で朝起きてから夜寝るまでにしていることを思い起こしながら、ICT端末上のワークシートと絵カードを使って整理します。整理したことを伝え合いながら、 考えを広げたり深めたりします。
【物的支援】
ICT端末上のワークシートに絵カードを動かしながら自分の生活を整理できるようにしています。絵カードを動かしながら整理できるので、子供は自分の家庭生活をイメージしやすくなります。また、家庭生活を時系列に並びかえることも簡単にできます。
【教師の支援・援助】
子供の発言から、毎日家でしていることは何かと発問します。それらの家庭生活を基に、朝起きてから、夜寝るまでにしていることを整理するように声かけをします。
子供によって家族構成や家庭生活の状況が異なることから、各家庭や子供のプライバシーを尊重し、配慮する必要があります。友達と話し合う際は価値観の決めつけや批判にならないよう留意しましょう。
②家族の生活を見つめよう
前時に使ったワークシートを再度活用して、今度は、家族の1日を振り返り、家族がしていることについて考える活動を行います。家族の1日を振り返る中で、「家族の1日がよく分からない」「家の人に聞いたり調べたりしたい」という思いや願いが生まれます。ここからさらに具体的な問いを一人一人がもち、家庭で家族の1日を調べる活動に取り組みます。
【教師の支援・援助】
家庭によって家族構成、生活環境が異なるため、共有をする際には配慮が必要です。宿題として家族の1日を調べてくる課題を出す際には、事前に懇談会や学級通信、学年通信などで学習の目的、内容について知らせて、協力を依頼しておきましょう。
【物的支援】
子供が家庭で家族の1日を調べる活動では、アンケート形式のワークシートを作成しておきます。このワークシートでは、家族が毎日取り組んでいることに〇を付けるようにして、子供がインタビューをしやすくしています。その他の欄もつくっておき、家族の行動を付け足せるようにしておきます。
④家族の1日と自分の1日を比較しよう
家庭で調べてきたワークシートの中から、家族のためにしている項目には赤線を引きます。その後、同じ形式のワークシートを使って、自分の1日を再度振り返ります。家族と自分の1日を比較することで「お家の人の方が、家族のためにしてくれていることが多い」「自分は少ない」「なにか自分にできることはないかな」という気付きや思いを伝え合います。
【教師の支援・援助】
比較する際には、ワークシートの項目の中から、家族のためにしていることに赤線を引くことで、自分の1日と家族の1日を比較することができます。そして、家の人が家族のためにしていることが多いことに気付くように発問をして、小単元2の学習につなげます。
基本的な生活習慣についても考えられるように、起床時刻や就寝時刻についても取り上げるように声をかけます。
●健康な心と体
自分の生活を振り返る活動を通して、ワークシートに整理したり、友達と話し合ったりしながら、ふだん何気なく行っていることの大切さに気付き、基本的な生活習慣について関心をもとうとします。
●社会生活との関わり
家族の1日と自分の1日を比較する活動を通して、家族にインタビューをしたり、ワークシートに整理をしたりしながら、身近な存在である家庭の大切さに気付き、家族と自分との関わりに目を向けようとします。
●思考力の芽生え
家庭生活に積極的に関わる中で、自分で考えたり、予想したり、工夫したりしながら、家族が支え合っていることに気付き、家庭における役割を果たしたり、家族を笑顔にするなどの多様な関わりを楽しむようになります。
1人1台端末活用のポイント
自分の1日を振り返る際には、ICT端末で絵カードを動かして並び替えるようにしておきます。そうすることで、1日の活動を想起しやすくなると同時に、時間や順序を意識した並び替えも容易になります。
評価規準
知識・技能:家庭において、自分や家の人には、それぞれに果たしている仕事や役割があることに気付いている。
思考・判断・表現:家族の生活を比較したり見つめ直したりしながら、自分の生活をワークシートに書いている。
【小単元2】じぶんで できることに チャレンジ(6時間)
①家族お助け大作戦
「家族の大変さを知ったので、自分にできることをして家族を助けたい!」という小単元1の学習で生じた思いをもとに、自分が家庭でできることを考えます。計画を立てるときには、いつ、何をするのか、どうしてそれをするのかの具体的な計画を立てます。
●小単元1での子供の気付き(事例)
・たまには休んでほしいので、お手伝いをしたい。
・お母さんが大変そうだから、お母さんのお手伝いをしたい。
・ぼくより、お母さんの方がやること多い。
・お父さんが、仕事も家のこともがんばっている。
・お父さんは、毎日お仕事で疲れているから、お手伝いを代わりにしたり、マッサージをしたりしてあげたいな。
・おばあちゃんは、いつも宿題を教えてくれたり、ご飯を作ってくれたりする。
・おじいちゃんは、休みの日にたくさん遊んでくれるよ。
【教師の支援・援助】
家庭によって、家事の役割分担や環境が違っていることに留意します。例えば、母親だけでなく、父親や祖父母が料理、洗濯を担当している事例を紹介し、家族の多様な形態があることや、それぞれの家庭によって違いがあってもよいことなどを取り上げ、多様な家庭の在り方を認め合える雰囲気づくりを行いましょう。
【物的支援】
家族お助け大作戦の計画を立てる際には、教科書の動画資料も参考にできるように提示します。
②家族お助け大作戦を振り返ろう
家族お助け大作戦を振り返って、言葉、絵などで、様子や気持ちを思い起こして書きます。
ワークシートの記述から、自分が伝えたい方法を選んで、友達と伝え合います。友達の取組を聞きながら、自分の取組についても考えを広げたり深めたりします。
【空間的支援】
小グループに分かれて伝え合うことで、一人一人が自分の気付きを伝えたり、友達の取組を聞いたりする時間を十分に確保することができます。
【教師の支援・援助】
家族お助け大作戦で感じたり考えたりしたことや、家族から言われた言葉などを板書します。「ほめてもらってうれしい」「家族が喜んでくれてうれしい」「もっとやりたい!」という思いや「〇〇くんは、お皿洗いにチャレンジしていてすごい!」などの友達のよさも板書することで、家族お助け大作戦への意欲を高めます。
③家族お助け大作戦パート2
友達との交流を受けて、自分がやってみたい取組を考え、再度計画を立てます。友達の挑戦したことの中から選んだり、新たに自分で挑戦したいことを考えたりして決めます。
【教師の支援・援助】
子供が家で挑戦したことを黒板に整理することで、次は何に挑戦したいかを考えたり、決めたりする際に参考にできるようにします。
再度、週末に家庭で自分が考えたことに取り組むようにします。家族お助け大作戦を2回することで、子供の意欲が向上し、この後の取組を伝え合う時間が活性化します。
④家族お助け大作戦パート2を振り返ろう
家族お助け大作戦パート2を振り返り、よかったことや気付いたことを記録カードに書くことで、パート1と比べて、自分自身の成長に気付きやすくなります。
パート1と同様、自分が伝えたい内容や方法を選んで伝えます。さらに、皿洗いや洗濯物たたみなどの実演にも挑戦することで、コツやポイントも交えながら伝えます。
【教師の支援・援助】
役割を果たすことのよさや、家庭の温かさやよさに気付くことができるようにするとともに、家の人の思いも取り上げるようにします。
【空間的支援】【物的支援】
パート2は、子供の取組内容に応じて、実演できそうな道具を用意しておくと伝え方や気付きが深まります。
●言葉による伝え合い
家族お助け大作戦の様子や考えたことなどを言葉で伝える活動を通して、聞き手を意識して伝え方を選ぶことで、その伝え方の工夫に気付き、言葉による伝え合いを楽しむようになります。
●思考力の芽生え
家族お助け大作戦の発表を聞く活動を通して、様々な取組の内容や思いに触れながら、自分と異なる考えがあることに気付き、自分の取組を見つめ直したり、新しい考えを生み出す喜びを味わったりして、家庭生活をよりよいものにしようとします。
●自立心
家庭生活に主体的に関わる活動を通して、自分にできることを増やそうとしたり、工夫したりしながらやり遂げる達成感を味わい、自信を持って行動するようになります。
●健康な心と体
家庭生活で自分にできることに取り組むことを通して、家庭生活の中で、自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせながら、見通しをもって行動することの大切さに気付き、自分から心地よい生活を作り出すようになります。
評価規準
知識・技能:家庭生活は、互いに支え合っていることが分かる。
思考・判断・表現:自分と家族の仕事や役割を特徴でまとめたり関連付けたりしながら、自分ができることを決めている。
主体的に学習に取り組む態度:家の人の役に立ちたい、自分のことが自分でできるようになりたいという思いをもち、試行錯誤しながら、家庭での自分の役割を果たそうとしている。
【小単元3】これからも つづけよう(3時間)
①自分がさらに続けていきたいことや挑戦したいことを考え、取り組みを続けよう
「おてつだいビンゴ」と「まいにちできるかな」のどちらに取り組むかを決めます。
「おてつだいビンゴ」は、事前に自分で決めた9つのお手伝いをワークシートに書き込み、1週間のチャレンジでできたものには、その下の枠に日付とサインを入れます。できたお手伝いで縦・横・斜めのビンゴの数を数えます。
「まいちにできるかな」は、1つに決めたお手伝いをワークシートに書き込み、できた日に印を付けていきます。
さまざまなお手伝いに挑戦することでできることを増やしたり、自分の決めたことを継続して取り組んだりします。
※【資料1】「おてつだいビンゴ」ワークシート&「まいにちできるかな」ワークシートは、下記ボタンからダウンロードできます。
【教師の支援・援助】
本単元では、「自分できることを増やすこと」「継続して取り組むこと」の2つの視点が達成できるように、2種類のワークシートを用意します。「おてつだいビンゴ」では、これまでの取組や友達の取組を生かしながら、より自分にできることを増やすねらいがあります。「まいにちできるかな」は、1つの取組を継続して行うことをねらいとしています。このうち、どちらに取り組むかは子供が決めます。そうすることで、自分で課題を設定しながら主体的に取り組むようになります。
子供にとって大人がしている家事は新鮮に感じるため、大人のサポートを受けながら食器洗い、料理などに挑戦しようとします。そのことを認めつつ、自分の荷物の整理整頓、自分で決まった時刻に起きることなど、自分から進んでできるようにすることも家族お助け大作戦となると分かるようにします。自分でできることを増やすことは、本単元終了後の継続的な取組へとつながります。
活動期間を1週間にして、前回より長めに設定することで、継続的な取組につなげます。課題提出日までに子供一人一人の取組状況を見取り、頑張りを認めたり、続けられていることを称賛したりして、 その後の意欲が持続するようにします。
②これまでの活動を振り返り、自分が続けてきたことや続けてよかったことを話し合おう
1週間の家庭での取組を振り返り、活動前の自分と今の自分を比較して、できるようになったことや頑張ったことを伝え合います。家族からのコメントを読んで家族の気持ちを知り、自分自身が家族のために何ができるのかについてもさらに考えます。
【ワークシートの保護者のコメントより】
・お手伝いをたくさんしてくれて助かりました。自分からできるお手伝いを見つけてしてくれるようになってうれしいです。
・自分で何をしたらいいのか、考えてすぐにお手伝いをしてくれて、とっても助かりました。楽しそうにお手伝いをしてくれて、うれしくなりました。
・「あれもする」「これもする」といろいろ自分で見つけて挑戦してくれました。
・おふろがきれいになって、すっきりしました。床もきれいにこすってくれて、ありがとう。お手伝いをしてくれて助かりました。
・小さいことでも、お手伝いをしてくれたら、とっても助かりました。これからもじぶんで気づいてしてくれたらうれしいな~と思います。いっぱいお手伝いをしてくれて、ありがとう。
【教師の支援・援助】
1週間の取組を振り返る際には、黒板に「自分のこと」「家のこと」に分けて整理します。自分のことは自分でやるという自立心や家庭を構成している一員として家族のためにできることをするという視点がより分かりやすくなります。
2種類のカードには、自分の振り返りと保護者からのコメント欄を設けておきます。保護者からのコメントは、子供が読めるようにひらがなで書いてもらうようにお願いをしておきましょう。
保護者の思いを知ることで、自分自身が家庭を構成している大切な一員であることに気付くようにし、これからも家庭での自分の役割を果たしていこうとする態度を育てます。
④感謝の気持ちを手紙に書いて伝えよう!
感謝の気持ちをどのような方法で伝えたらよいか話し合います。自分でできることに取り組んでよかったこと、家族が今までしてくれたことへの感謝の気持ちやこれからは自分でできることは自分ですることなどを自分の思いを手紙に書いて伝えます。
【教師の支援・援助】
「これからも続けたい!」「もっと助けてあげたい!」と、単元終了後も継続して自分ができることに取り組めるように、冬休みにはお手伝いの課題を出します。
実際にやってみて、家族の大変さが分かったので、「ありがとう」を伝えたい!という子供の思いをもとに、伝える方法を子供自身で考えます。裏に絵を描いて思いを伝えるアイデアが出た際には、それも称賛します。
【子供が家族にあてた手紙】
●自立心
自分の取組を振り返る活動を通して、活動前の自分と活動後の自分を比較しながら、自分の成長に気付き、家族の一員として、自分でできることを考えて取り組むことができるようになります。
●豊かな感性と表現
家族へ感謝の気持ちを伝える手紙を書く活動を通して、気持ちを伝えるための文章表現や文字を丁寧に書くなどのポイントを考えながら、思いを伝えるには様々な表現の工夫ができることに気付きます。また、イラストを添えるなど創意工夫して自分らしい手紙を書こうとします。
●社会生活との関わり
本単元の学習を振り返る活動を通して、家庭の身近な人と触れ合いながら、家族を大切にしようとする気持ちが高まっていることに気付き、自分が家族の役に立つ喜びを感じて、より家庭生活に親しみをもつようになります。
評価規準
知識・技能:自分自身が家庭を構成している大切な一員であることが分かる。
思考・判断・表現:活動前の自分と今の自分を比較しながら、できるようになったことを話している。
主体的に学習に取り組む態度:家の人の反応や願いなどから、自分が家庭の大切な一員であることを実感し、これからも自分の役割を果たしていこうとしている。
参考資料/
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導書 朱書編』(東京書籍)
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導所 授業展開編』(東京書籍)