小5算数「合同な図形」指導アイデア《図形を1本の対角線で分けてできる三角形が、合同かどうか確かめる》
執筆/横浜市立篠原小学校教諭・三上顕
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一
島根県立大学教授・齊藤一弥
目次
単元の展開
第1時 図形を重ね合わせ、合同な図形について知る。
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第2時 合同な図形の対応する頂点、辺、角について調べる。
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第3時(本時)図形を1本の対角線で分けてできる三角形が、合同かどうか確かめる。
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第4時 合同な三角形をかくための条件について話し合う。
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第5時 合同な四角形をかくための条件について話し合う。
本時のねらい
前時までに着目してきた構成要素どうしの関係や、既知の図形の定義や性質を基に、四角形を1本の対角線で分けてできた図形が合同であるかについて筋道立てて説明する。
評価規準
四角形を1本の対角線で分けてできる2つの三角形が合同になるかについて、構成要素どうしの関係に着目して辺の長さや角の大きさを調べたり、既知の図形の性質を活用したりするなどして考え、説明している。
本時の展開
四角形を、1本の対角線を用いて2つの三角形に分けます。その2つの三角形は合同か、分かりやすく説明しよう。
まずは正方形から考えてみましょう。
簡単です。2つの三角形は合同です。
辺も角も調べてもいないのに、なぜ合同だと言えるのですか。
折り紙を折ったら、ぴったり重なるからです。
これまでの経験からそのように考えたのですね。では、どんな正方形でも言えますか。
そう言われると自信がなくなる。
たまたまかもしれない。
いや、言えるよ。正方形はすべての辺の長さが同じだから、2つの辺の長さが同じだよ。
2つとは、どこのことなの。
分かりにくいから、辺や角に名前を付けましょう。
正方形は辺の長さがすべて同じだから、辺AB=辺AD、辺BC=辺DC、辺ACはどちらにも共通だから3つの辺が同じ長さだよ。
正方形の角はすべて直角だから、角B=角Dだね。
角BACと角DACは同じですか。
同じです。直角二等辺三角形だから、三角定規と同じです。だから45度で同じです。
だとすると、角BCAも角DCAも同じだね。
印をつけるとこのような感じですね。
すごい! 1つも直接測らなくてもできた。
なぜ1つも直接測らなくてもできたのでしょう。
正方形のきまりや性質を使ったからです。
直角二等辺三角形の性質も使いました。
図形に印や名前を付けたから、分かりやすくなりました。
他の図形でもできそうな気がします。
図形のきまりや性質を使ったら、たまたまではなくて、どんな正方形でも言うことができますね。では、例えば平行四辺形も対角線で分けて、2つの三角形が合同かどうかについて説明することができますか。
正方形と違って、折っても重ならないね。
折っても重ならないということは、合同じゃないのかな。
きちんと調べてみないと分からないね。
さっきのように平行四辺形の辺や角に名前を付けて、合同かどうか調べてみよう。
構成要素どうしの関係や既知の図形の定義や性質を基に、四角形を1本の対角線で分けてできる2つの三角形が合同であるか筋道立てて説明する。
見通し
対応する辺や角を調べればできそう。(方法の見通し)
平行四辺形のきまりや性質を使えばできそうだな。(方法の見通し)
折っても重ならないけど、合同になりそうね。(結果の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
構成要素の対応関係を捉えることができず、折っても重ならないので合同ではないと判断している。
B 素朴に解いている子
対応する辺の長さや角の大きさを、定規やコンパス、分度器を用いて直接調べている。
C ねらい通り解いている子
平行四辺形のきまりや性質を使い、調べなくてもよいところは直接測らずに、対応する辺の長さや角の大きさを調べて合同かどうかを判断している。
学び合いの計画
本学習は、この後の学習の素地的経験を含んでいます。例えば、単元計画上で、次時には合同な三角形の作図を扱いますが、そこでは、いかに少ない条件で合同な三角形の作図ができるかを考えます。労力を減らして合同かどうかを判断しようと考えた経験は、次時に6つの条件すべてを使わないで効率的に作図しようとする経験につながります。そして、6年生では対称な図形を学習しますが、そこでの考察の際に今回の学習の経験が生きます。対称の軸で分けた2つの図形や、対称の中心と対応する頂点を結んだ線で分けた2つの図形は合同です。四角形を、1本の対角線を基に分け、その2つの図形どうしの関係を考察することは、その考察の際に重要な学習経験となります。
そこで本時の学習では、単に2つの図形が合同であるかどうかの考察の結果だけではなく、既知の図形の定義や性質を使って直接測定しなくてもよいところは測定しないで調べることで、労力を減らして考察する過程をていねいに扱いましょう。正方形と平行四辺形の考察の経験を生かし、他の四角形についても考察の範囲を広げていけるように、分かったことや見いだしたことを学習の途中でふり返って整理しながら発展的に考える意欲を醸成していくことが大切です。
学び合いの後半で、他の図形に考察の範囲を広げる際には1人1台端末の活用が有効となります。その際には、個々がどんな図形をどんな課題で取り組んでいるかを明らかにしましょう。例えば、どんな平行四辺形でも言えるか、例示されて平行四辺形とは違う形の平行四辺形をかいて考察している子供はより一般性を求めて考察しています。また、ひし形や長方形について考えている子供は、より考察の範囲を広げることを目的としています。1人1台端末を利用したことで、ただ使っているという状態やただ考えを集約しているという状態とならずに個の学びのヒントとなりうるように、どんな目的で何に取り組み、何が分かったのかが見えるように工夫をしていくことが必要です。
ノート例
A つまずいている子
B 素朴に解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
*C1、C2、C3それぞれ発表をする。
C1
図形を切って重ねて調べたら、三角形ABCと三角形CDAはぴったり重なるので合同です。
C2
平行四辺形を対角線で2つに分けたら、2つの三角形に分かれました。対応する辺の長さと角の大きさを定規や分度器で調べたら、すべて同じ長さや大きさでした。なので、三角形ABCと三角形CDAは合同です。
C3
平行四辺形の向かい合う辺の長さは同じなので、辺AB=辺CD、辺BC=辺ADです。辺ACはどちらにも共通です。角の大きさは分度器で調べました。すると、対応するすべての角も等しいので、2つの三角形は合同です。
3つの考えを見比べてみて、どれがよりよいですか。
イラスト/横井智美