小3理科「風とゴムの力のはたらき」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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執筆/福岡県北九州市立長行小学校教諭・倉富麻衣子
   福岡県北九州市立港が丘小学校教諭・寺川智紀
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県北九州市立ひびきが丘小学校校長・小松正則
   福岡県北九州市立港が丘小学校教頭・企救岳智宏

単元目標

風とゴムの力と物の動く様子に着目して、それらを比較しながら、風とゴムの力のはたらきを調べる活動を通して、それらについての理解を測り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題を解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①風の力は、物を動かすことができることや、風の力の大きさを変えると物が動く様子も変わることを理解している。
②ゴムの力は、物を動かすことができることや、ゴムの力の大きさを変えると物が動く様子も変わることを理解している。
③風とゴムの力の働きについて、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。


思考・判断・表現

①風とゴムの力の働きについて、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現している。
②観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度


①風とゴムの力のはたらきについての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら、問題解決しようとしている。
②風とゴムの力のはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 7時間

第1次 風の力の大きさと物の動く様子との関係を調べる。

1 帆をつけた車にうちわで風を当てて動かす活動から、問題を見いだす。(授業の詳細)

思考・判断・表現①
風とゴムの力のはたらきについて、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現している。〈記述分析・発言分析〉

2 風の力を変えたときの、車の進む距離を比べ、変わり方を調べる。

知識・技能
風の力は、物を動かすことができることや、風の力の大きさを変えると物が動く様子も変わることを理解している。〈記述分析・発言分析〉

主体的に学習に取り組む態度①
風とゴムの力のはたらきについての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら、問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析・発言分析〉

第2次 ゴムの元に戻ろうとする力の大きさと物の動く様子との関係を調べる。

 ゴムで動く車で遊ぶ活動から、問題を見いだす。

思考・判断・表現
風とゴムの力のはたらきについて、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現している。〈記述分析・発言分析〉

4 ゴムの力を変えたときの、車の進む距離を比べ、変わり方を調べる。

知識・技能
ゴムの力は、物を動かすことができることや、ゴムの力の大きさを変えると物が動く様子も変わることを理解している。〈記述分析・発言分析〉

知識・技能③
風とゴムの力のはたらきについて、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉

5 ゴムの太さや数を変えたときの車の進む距離の変わり方を比べながら調べる。

思考・判断・表現
観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈記述分析・発言分析〉

6~7 風やゴムの力を利用した、ものづくりを行い、学習をまとめる。

主体的に学習に取り組む態度
風とゴムの力のはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

授業の詳細

第1次 風の力の大きさと物の動く様子との関係を調べる。

1 帆をつけた車にうちわで風を当てて動かす活動から、問題を見いだす。


帆をつけた車にうちわで風を当てて動かす活動を通して、風の力と車の動き方に着目し、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現することができる。

板書画像
板書例(クリックして拡大)

ヨットやこいのぼり、生活科のおもちゃなど、風の力で動くものについて話し合う。

ヨットのイラスト
こいのぼりのイラスト
生活科のおもちゃのイラスト

(ヨットやこいのぼりの写真、生活科のおもちゃを見せて)これらは何の力で動いていると思いますか。

生活科のおもちゃは、うちわであおいで風を当てて動かしたから、風の力かな。

風が強いとき、こいのぼりは泳ぐようになるから、風の力かな。

 
生活のなかで、風の力で動いているものに目を向けることができるように、帆かけ船やこいのぼりの写真を掲示するとよいです。また、生活科で体験した動くおもちゃ作りについて想起するなどしてから、風で動くおもちゃを提示するとよいです。

帆を付けていない車を、風で動かす方法を考える。

風の力で動かせそうなのですね。では、(帆のない車を提示して)手を使わないで、この車を動かすにはどうしたらよいでしょうか。

うちわであおぐといいよ。

帆の付いていない車をうちわであおぐ様子のイラスト

あれ? あんまり動かないな……。そうか! 帆をつけてないから。

帆を付けて、風が当たるようにすれば、車が動くと思います。やってみたいな。

帆の付いた車をうちわであおぐ様子のイラスト

教師が帆の付いた車を提示して、うちわであおぐ様子を見せる。


風が帆に当たることで、車を動かせることに気付くことができるように、子どもから「帆をつける」や「うちわであおぐ」などの考えが出てから、帆を付けた車とうちわを提示するようにします。

みなさんも、帆を付けて、風を当てて風の力で車を動かしてみましょう。そして、疑問を出し合い、問題を見いだしましょう。

①問題を見いだす


帆を付けた車に風を当てて動かすことから、問題を見いだそう。

②解決方法を考える

帆を付けた車をうちわであおいで風の力で動かし、疑問に思ったことをノートに書く。

スタート線から、うちわであおいで、車をゴールゾーンに止めましょう。


●一人一人に車を渡し、子ども自身で画用紙の帆を付ける。

●スタート線とゴールゾーンを決めて、車をゴールゾーンに止めるには、どうすればよいかを考えながら、車を動かすように伝える。

③観察・実験をする

あれ? ゴールまで届かなかったよ。

あれ? ゴールを越えてしまったよ。

ゴールゾーンに止まらなかったのは、どうしてか考えましょう。

風の力が弱かったからかな。次は、風を強くしてみよう。

風の力が強かったからかな。次は、風を弱くしてみよう。

④結果の処理

ゴールゾーンに止まらなかったときに、疑問に思ったことをノートに書く。

 
・車を風の力で動かす活動を充分に体験できるように、車をゴールゾーンに止めようとする活動を3回ほど繰り返すとよいでしょう。
・風の力の強さに着目しやすいように、大きいうちわや小さいうちわなど、うちわの大きさをいくつか準備しておくとよいです。
・風の力の強さによって、車の動き方がちがうことに着目できるように、ゴールゾーンに止まらなかったときに疑問に思ったことをノートに書くようにします。
・活動に入る前に、風の強さが変わることで、風の力の強さが変わることを確認しておきましょう。

ゴールゾーンに止まらなかったときに、疑問に思ったことを出し合いましょう。

ゴールまで届かなかったのは、弱い風だったから、風の力が弱くあまり進まなかったのかな?と思いました。

ゴールを越えてしまったのは、強い風だったから、風の力が強く遠くに進んだのかな?と思いました。

弱い風でも、強い風でも、車の動き方は同じではないのですか?

風の力の強さによって、車の動き方はちがうと思います。

解決したい問題をノートに書きましょう。

⑤結果を基に考察する

個人の問題を発表し、学級の問題を設定する。


風の力の強さを変えると、ものの動き方はどのように変わるのだろうか。


・ゴールまで届かないときとゴールを越えてしまったときを比べることで、それらの差異点から、問題を見いだすことができるように、子どもの考えを整理して板書します。
・問題を見いだす力を育成するために、個人の問題をノートに書く活動を設定します。このノート記述を分析し、評価を行います。

 
「エネルギー」を柱とする領域である本単元は、主として量的・関係的な視点でとらえることが大切です。「風の力が大きくなると、物の動き方も大きくなるのかもしれない」といった量的・関係的な視点をはたらかせるようにして、問題を見いだします。

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●体育館や特別教室などの広い場所にスタート線とゴールゾーンをビニールテープで貼ってコースをつくる際、子どもたちがぶつかるなどのケガをしてしまう恐れがあるため、広い場所にコースをつくること、周りに十分注意して行動すること
●子ども同士でぶつかったり、車とぶつかったりしないよう、車を動かす方向や、車を取って戻るなどの動線を統一すること
●うちわを使用するときは、他者にうちわが当たらないように、人との距離を一定以上保つようにする

イラスト/難波孝

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