小6理科「植物の養分と水の通り道」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
この記事のタイトル

執筆/福岡県公立小学校主幹教諭・古賀隆志
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県公立小学校校長・岩田勝英
   福岡県公立小学校校長・酒井美佐緒

単元目標

植物の葉で養分をつくる働きに着目して、生命を維持する働きを多面的に調べる活動を通して、植物の体のつくりと働きについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身につけるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

●植物の葉に日光が当たるとデンプンができることを理解している。
●植物の体のつくりと働きについて、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録していく。


思考・判断・表現

●植物の体のつくりと働きについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
●植物の体のつくりと働きについて、観察、実験などを行い、葉で養分をつくる働きについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

●植物の体のつくりと働きについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
●植物の体のつくりと働きについて、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 5時間

第1次 日光と植物の関係について調べる

1 日光がよく当たっている植物と、日光が当たっていない植物の様子をくらべ、学習問題をつくる 

思考・判断・表現①
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて、ちがいや共通点を基に問題を見いだし、表現するなどして問題解決していく。〈発言分析・記録分析〉

2~4 日光と、葉にできる養分の関係を調べる 

思考・判断・表現
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

思考・判断・表現
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて、観察、実験などを行い、葉で養分をつくる働きについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

知識・技能①
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記述分析〉

知識・技能②
植物の葉に日光が当たるとデンプンができることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

主体的に学習に取り組む態度①
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く 、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

5 学習のまとめと振り返りを行う (授業の詳細)

主体的に学習に取り組む態度②
植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

授業の詳細

第1次 日光と植物の関係について調べる。

5 学習のまとめと振り返りを行う。


ジャガイモで、植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて学んだことを他の植物について生かそうとしている。

①問題を見いだす

日光を当てると、葉にデンプンがつくられることがこれまでの実験でわかったよ。

朝にはデンプンがほとんどないのがおもしろいね。

他の植物も葉でデンプンがつくられているのか確かめてみたいな。

そうだね。校庭に生えているカタバミという植物で実際に調べてみましょう。

 
「ジャガイモ」だけでなく、他の植物を対象として実験を行うことで、共通性・多様性の見方を働かせながら、植物の体のつくりと葉で養分をつくる働きについて学びを深めることができます。また、「ジャガイモ」を対象に行った実験の方法を適用し、比較したり、条件を制御したりしながら再度実験を行うことを通して、問題解決の力が一層育成されていきます。


カタバミもジャガイモと同じように、日光が当たると葉にデンプンができるのだろうか。

②予想する

ジャガイモと同じように、日光が葉に当たるとデンプンがつくられると思うよ。

ちがう植物だから、デンプンはできないんじゃないかな。

カタバミは飼育小屋の周りにいっぱい生えているよ。あれだけ葉がしげっているなら、葉でデンプンをたくさんつくっているんじゃないかな。


「カタバミ」を取り上げるメリットはいくつかあります。まず、「カタバミ」は身近な植物であり、校庭のどこかで容易に見つけることができます。次に、繁殖力が強いため、葉の数が多く、個人やペア単位で実験を行うことも可能です。さらに、結果が分かりやすいという点も安心できます。エタノールによる脱色でもたたき染めでも、あきらかな反応がでます。

③解決方法を考える

どのように実験を行うとよいですか。ジャガイモの実験をもとに、自分で実験計画を立ててみましょう。

変える条件は、日光が当たるか当たらないかの1つだね。

近くに生えている葉を3枚用意して、3つの条件で調べるといいね。

日光に当てる前の葉と、日光に当てた葉と、日光に当てなかった葉で調べるんだね。

④観察・実験をする

 
「ジャガイモ」で実験を行った経験を生かすことができているかを見取り、条件を制御することができていない場合は、適宜助言を行いましょう。日に当てる葉(イ)と、日に当てない 葉 (ウ) の比較は、きっと子供たちも容易に理解し、準備を行うことでしょう。実験前の葉を調べることを見逃している場合は、デンプンの生成と日光の関係を調べるうえで、なぜ実験前の葉(ア) を調べる必要があるのか再度考えることができるようにしましょう。

観察・実験の手順はジャガイモと同様です。

<実験を行う前日>

3枚の葉を判別するために、イとウの葉に切り込みを入れ、それぞれの葉にアルミニウム箔をかぶせる。

<実験日(朝)>

①日光に当てる葉のアルミニウム箔をはずす⇒(イの葉)

②日光に当てる前にデンプンがあるかを調べる⇒(アの葉)

<実験日(午後)>

①日光に当てた葉(イ)と、日光に当てなかった葉(ウ)とのそれぞれにデンプンがあるかを調べる。


ヨウ素液(0.05 mol/L L)は 20 倍程度に希釈するようにしましょう 。目安は、ビールの色よりやや濃い程度の色です。ヨウ素液の希釈は、使用する直前に行い、前日に希釈する場合は、必ず遮光ビンに保存するようにしましょう 。エタノールなどで脱色する方法やたたき染めによる方法のどちらでも有効ですが、ジャガイモで実験を行う際に用いた方法が望ましいでしょう(エタノールで脱色する際は湯で温めるため、やけどに注意しましょう)。(安全指導)

⑤結果の処理

3つの条件(ア・イ・ウ)の実験結果を学級全体で確認します。その際、デンプンが「できた」「できなかった」といった結果だけでなく、撮影した画像を提示して説明するように促します。そうすることで、デンプンが葉に生成されていることについて、実感を伴いながら理解できるようになります。

 
葉の色の変化を記録するため、ICT端末を活用して、実験の前後の葉を静止画で記録するようにしましょう。また、各自の結果を学級全体で共有するのであれば、表計算ソフトを学級全体で共有して、各自が結果を入力するようにします。そうすると、簡単に学級全体の結果を把握することができます。さらに、結果を円グラフの形で表示するなど、プログラムすることも視覚的にわかりやすい資料として有効です。

結果を共有したスプレッドシート(例)
スプレッドシートで結果を共有した例

⑥結果を基に考察する

カタバミの実験結果から、植物の体のつくりや働きについて、どんなことが明らかになりましたか。

カタバミも葉に日光が当たると、デンプンができていた。結果は、予想通りだったよ。

デンプンのできるしくみは、ジャガイモと同じだったよ。植物はみんな同じように、日光の影響で栄養をつくり出しているんだね。

⑦結論を出す


カタバミもジャガイモと同じように、葉に日光が当たると、葉にデンプンができる。

⑧振り返る

身近な植物も同じように葉で日光を受けて、デンプンをつくっていることがわかった。

あらためて、デンプンが植物の成長に必要なものだと考えられる。

カタバミは、時間によって葉が開いたり閉じたりしているね。日光の受け方と関係があるのか自分でも調べてみようと思う。

板書

本時は、個人あるいはペアでの個別の追究を想定しているので、板書で学びの過程を整理することはせず、スライドなどで作成したレポートシートを配布して、 それぞれまとめるようにしましょう。また、実験の結果については、ICT端末によって共有して、他の班の結果も見ることができるようにし、学級全体の結果を踏まえて考察するように促すことが大切です。

カタバミの実験レポート(1枚目)
カタバミの実験レポート(2枚目)
レポートシートの記入例

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●湯や薬品が目に入らないように保護めがねをかけましょう。
●エタノールを使用する場合は、引火しやすいので火に近づけないようにしましょう。
●熱したものや使った器具は、熱くなっているので、注意しましょう。
●薬品が手などについたり、火傷してしまったりしたら、応急処置として、すぐに流水で洗いましょう。

イラスト/難波孝

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