小3 国語科「夏のくらし」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3 国語科 「夏のくらし」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都渋谷区立富谷小学校・佐藤綾花
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、夏を感じさせる様々な言葉の意味を知ったり、自分が夏らしさを感じたことやものについて、詩や短い文章を書いたりする活動を通して、語彙を豊かにすることを目指します。
教科書には、子供たちにとってなじみの薄い言葉も紹介されています。そのような言葉の意味を知ることによって、日常的にその言葉を使っていた先人たちのものの見方・感じ方に触れることができます。
しかし、知らなかった言葉の意味をただ調べ、知っている語句の量を単に増やすだけでは語彙は豊かになりません。その言葉が表す「もの」や「こと」を自分の体験と結び付けたり、人の体験から想像したりすることによって、実感を伴った言葉として身に付けていくことができるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
夏を感じたもの・ことについて短い文章(3~4文程度)を1人1台端末に入力するという活動を設定します。入力する前に、「夏を感じる言葉」を挙げ、言葉に関する体験を思い出したり言葉の意味を調べたりする時間を設定します。
例えば教科書P.99に示されている「水ようかん」であれば、「つるん」「甘い」「ひんやり」「涼しげ」のように、自分が食べたときのことを思い出し、見た目やのど越しなどを書き留めていきます。
まずは言葉に対するイメージを十分に膨らませるようにすることで、楽しみながら言葉に触れられるようにします。さらに、書き留めておいた言葉を基に短い文章にすることで、文章を考えやすくなるようにします。
1時間目に「短い文章(3~4行程度)を作る」ことや、文章を読み合うことを伝えておき、2時間目に文章を作ります。1時間目と2時間目の間を数日空け、家庭や地域での生活の中で、「夏を感じる言葉」をさらに集めたり、知らなかった言葉の意味を調べたり体験したりすることができるようにします。
例えば教科書に示されている「風鈴」の音を聞いたり、家の人の体験を聞いたりしてもよいでしょう。調べたり体験したりしたことをメモしておき、2時間目に文章を作るときに生かせるようにします。
できた文章を友達同士で読み合うことで、「夏を感じる言葉」にたくさん出会えるようにします。
友達の体験と共にその言葉に触れることで、「友達はそう感じたんだな。自分はどうかな。」と言葉が表す「もの」や「こと」に対する関心を高めることができます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 クイズを楽しみ、言葉に関する体験を思い出そうとする意欲を高める
導入で、言葉あてクイズを行います。
教師が「つるん」「あまい」「ひんやり」「すずしげ」「デザート」などのように、その言葉(この例では教科書P.99に示されている「水ようかん」)を表す言葉を一つずつ提示し、それらの言葉が示す言葉をあてるクイズです。
提示する言葉は五感を基にした言葉から選んでいきます。クイズだけではなく、教科書P.98に示されている「はなび」の詩の題名を隠したうえで一連ずつ示していき、何を表した詩か考えさせるのもよいでしょう。
言葉あてクイズを楽しむことを通して、自分も見たこと、感じたことを基に「夏を感じる言葉あてクイズ」を作ってみたい、と意欲を高めていきます。子供たちは、クイズを作る活動を通して、夏らしい言葉に触れるとともに、体験を思い出すことと合わせて言葉をイメージすることができます。
〈対話的な学び〉 書いた文章を読み合い、体験にまつわる言葉に触れる
2時間目は、子供たちが夏を感じる「もの」や「こと」、「言葉」を集めることができるように1時間目から数日明け、それにまつわる体験を生かして、短い文章を作ります。考えた文章は、1人1台端末に入力し、友達と読み合う時間を十分に設定します。
「夏を感じる言葉」をただ調べたり教えてもらったりするのではなく、言葉にまつわる体験も併せて知ることによって、その言葉に対する関心を高めていきます。
子供たちは、取材したことを基に文章を作ります。友達の感じ方は自分の感じ方とは異なるかもしれません。また、友達の感じ方を知ることによって「自分はどう感じるかな。」と興味を引き出されることがあるでしょう。そのような感想をお互いに伝え合っていきます。
感想を伝え合うときは友達の文章をじっくり読んだうえで、端末の付箋(Microsoft PowerPointなど)を使って伝えていきます。何を使ってどのように伝え合うかは、学級の実態に応じて選択するとよいでしょう。
〈深い学び〉 生活の中で見つけた「季節を感じる言葉」を伝え合う場を設定する
本単元の学習をきっかけに、子供たちは「夏を感じる言葉」に対する関心をもちます。
しかし、その関心は、一時的なもので、時間が経つと薄れてしまいます。
子供たちが、これからの生活の中で、見つけた「季節を感じる言葉」や、言葉に関する自分の体験を伝え合う場を計画的、継続的に設けていくことで、季節と言葉、言葉と体験を結び付けていこうとする意識が一層育まれていきます。
教科書下巻P.32の「秋のくらし」、教科書下巻P.86の「冬のくらし」の学習の際に、今回の学習を振り返ったり、それまでに子供たちが生活の中で見つけた「季節を感じさせる言葉」を集めておいたりすると、今後の学習がより豊かなものとなっていきます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)「夏を感じる言葉」を集める
1時間目に教師が出した「言葉あてクイズ」と同じように、「夏を感じる言葉」に関する体験を想起し、1人1台端末の付箋(Microsoft PowerPointなど)に書いていきます。
付箋に書くようにすることで、子供たちは言葉や体験をたくさん書き出したくなってきます。付箋をたくさん集めることが、その言葉に関する体験やイメージを豊かに想起することにつながります。
また、教師が出した「言葉あてクイズ」を手掛かりとして、「音」「味」「見た目」「感しょく」「たとえ(~みたい)」などの観点を示すことで、体験としてのイメージを膨らませることができるようにします。
「夏を感じる言葉」やその言葉に関する体験やイメージを集められたら、それらを見せ合い、クイズを出し合う時間を設定するとよいでしょう。集めた言葉やイメージはクイズに使えるだけでなく、この後、文章を作るときにも活用することができます。
(2)体験したことを端末に記録する(画像・メモ)
1時間目と2時間目の間を数日空けておき、「夏を感じる言葉」をさらに集めたり、知らなかった言葉の意味を調べたり体験したりすることができるようにします。
例えば家に「すだれ」がある場合はその画像を撮ってきたり、「蚊取り線香」について家の人に使い方や思い出を聞いてきたりしてもよいでしょう。1時間目に挙げられた夏の食べ物を実際に食べ、そのとき感じたことをメモしておくことも考えられます。
家で集めた画像やメモは、2時間目に短い文章を書くときに生かせるようにします。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名: 夏のくらし
【主な学習活動】
(1時)
①「夏を感じる言葉あてクイズ」の答えを考えたり、「はなび」の題名を考えたりすることを楽しむ。
② クイズの作り方を知る。
③「夏を感じる言葉」に関する体験を思い出し、1人1台端末に入力する。〈 端末活用(1)〉
④「夏を感じる言葉あてクイズ」を出し合って「夏を感じる言葉」を集める。
※次の授業まで数日空ける
家で夏を感じるものを見たり、体験したりする。写真に撮ったり、感じたことをメモしたりする。
(2時)
⑤ 教師のモデル文を読み、今回作る文章のイメージをもつ。
⑥ 前時に作ったクイズや、第1時からこれまでの間に取材してきたメモなどを基に短い文章を作る。
⑦ できた文章を読み合い、感想を伝え合う。
全時間の板書例と指導アイデア
1時間目は、「夏を感じる言葉」に対する関心を十分に高められる時間となるようにします。
●「主体的な学び」のために
イラスト/横井智美