小5体育「体つくり運動(体の動きを高める運動)」指導アイデア②

文部科学省教科調査官の監修による、小5体育科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「体つくり運動(体の動きを高める運動)」の単元を扱います。
執筆/京都市公立小学校教諭・貴治利之
監修/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹
京都市教育委員会体育健康教育室首席指導主事 ・山口淳
目次
単元名
パワーアップ体操
単元目標
●知識及び運動
体の動きを高める運動の行い方を理解するとともに、ねらいに応じて、体の柔らかさ、巧みな動き、力強い動き、動きを持続する能力を高めるための運動をすることができるようにする。
●思考力、判断力、表現力等
自己の体力に応じて、運動の行い方を工夫するとともに、自己や仲間の考えたことを他者に伝えることができるようにする。
●学びに向かう力、人間性等
体の動きを高める運動に積極的に取り組み、約束を守り助け合って運動をしたり、仲間の考えや取組を認めたり、場や用具の安全に気を配ったりすることができるようにする。
授業づくりのポイント
自己の課題に合った運動を安心して行うために
高学年での体の動きを高める運動は、運動を楽しく行うなかで、直接的に体力の向上をねらいとして授業を構成します。
低・中学年の「多様な動きをつくる運動遊び」や「多様な動きをつくる運動」で身に付けた動きやその組み合わせを基に、「体の柔らかさ」「巧みな動き」「力強い動き」「動きを持続する能力」を高めるための運動を行います。子供の発達の段階を考慮し、この運動では特に、体の柔らかさ及び巧みな動きを高めるための運動に重点が置かれています。
そこで、本単元においても、この2つの動きの要素を中心にして単元を構成しました(ただし、「力強い動き」と「動きを持続する能力」についても、年間のいずれかの単元で指導することが求められることに留意しておく必要があります)。
単元名である「パワーアップ体操」とは、新体力テストの結果や体の動きチェックを基にして、子供たちが自己の体力の実態を知り、そこから高めたいと考える体力の要素を明らかにして、運動を組み立てていく学習です。子供が考えたオリジナルの運動を正しく行うなかで、直接的に「体力の向上」をめざします。
決して、新体力テストの結果を上げるために行う学習ではなく、子供が体の基本的な動きを高めることを捉えることができるような学習を展開していきます。
また、子供が必要感をもって運動を正しく行うと同時に、楽しみながら自己に合った運動に取り組む授業づくりが求められます。子供が苦痛を感じてしまうだけでは運動は長続きしません。効果を確かめたり、運動の心地よさを感じたりするようにして「楽しさ」も実感しながら運動できるようにしましょう。
さらに、運動経験の違いなどから、苦手意識をもつ子供に対して、仲間と一緒に安心して楽しめる場づくりや授業の展開を大切にし、すべての子供が自己の課題に合った運動ができるように工夫します。
〈コロナ感染対策〉
・授業前後の手洗いを徹底する。
・集合時や活動時は間隔をあける。
・屋内で行う場合は換気を行う。
・共用する用具の消毒を適宜行う。
●体の基本的な動きを高めるために 〜自己の体力を知ろう〜
各校で実施する新体力テストの結果と平均値との比較から自己の体力のレベルを確かめ、自己の高めたい体の動きの要素を明らかにすることで、運動の必要性を理解するとともに、自分事として捉えることができるようにします。
また、「体の柔らかさ」や「巧みな動き」などを毎時間や単元の前後で比較することで、パワーアップ体操の効果を確かめたり、継続的な運動が体力向上につながるということに対する理解を深めることにつなげたりします。
さらに、子供どうしが体の動きを高めるためにグループなどで工夫した運動の行い方を見合ったり、アドバイスをし合ったりすることにより、工夫の幅を広げ、自己の体力向上にも関心をもつようにしていきます。
●子供がねらいをもち、積極的に取り組むことができるようにするために ~ICT機器を効果的に活用しよう~
体つくり運動では、様々な基本的な体の動きを身に付けたり、体の動きを高める運動を行ったりすることによって直接的に体力を高めることをねらいとします。一人一人が体力を高めるための目的意識や必要感をもって運動することを大切にします。
子供がねらいをもち、積極的に取り組むことができるようにするために、「トレーニング的に単調な運動を続ける」といった授業ではなく、「体の動きを高めるためにどのような運動をするとよいのか」について、運動を通して学ぶことを大切にします。
そのために、高めたい体力の要素に応じた動きを教師が例示したり、動画によって紹介したり、自己や仲間が組み立てた運動を掲示板やICT機器を用いて可視化したりするなどの工夫をします。
●体の動きを高める運動を生活のなかに取り入れていくようにするために ~学習終了後にも継続して取り組める工夫をしよう~
教師は、子供が自己に適した運動を正しく無理なく継続的に行うように支援をしていくことが大切です。
学習終了後にも、ほかの運動領域の準備運動に取り入れて行う、朝や昼の帯時間や休憩時間に簡単な運動を行う、家庭での実践を継続して効果の確認のための測定を定期的に行うなどの工夫が考えられます。
また「体の動きを高める運動」を小学校の段階で理解して実践する経験を重ねることにより、中学校の保健体育科「体つくり運動」の「実生活に生かす運動の計画」における体力の向上を図るための運動の計画に取り組む際にも生かすことができます。
単元計画(例)
工夫してもっと楽しく運動をしよう
ねらいにせまる意図的な働きかけの例
単元の後半では、自己の課題や目的に応じた運動を行うことができるようにしていきます。
また、でき上がった運動プログラムを動画撮影し、クラウドにアップするなどして、家庭学習として取り組むこともできます。
家庭と連携しながら継続して行うことで、子供の体の動きや体力の高まりをめざして、生涯にわたって運動に親しめるきっかけになるような学習となっていきます。
自己の課題に合った運動を考えよう
単元の前半では、体力の数値を基に自己の課題を把握したり、課題に応じたさまざまな運動を実際に行いながら正しく楽しく行えるようにしたりします。
単元の後半では、自己の課題に合った運動(パワーアップ体操)が無理なく継続して行えるように、学習資料を活用しながら運動のプログラムを考え、運動の量や時間も含めた計画を立てます。
わたしのオリジナル「パワーアップ体操」記入カード例

わたしのオリジナル「パワーアップ体操」記入カード
※ダウンロードはこちら
仲間と相談したり、できたオリジナルのパワーアップ体操をほかのグループに紹介したりすることで、受け身の運動ではなく、運動に積極的に取り組んだり工夫したりする主体性のある学習を展開していきます。
その際に、ホワイトボードやICTツールを活用して、運動の種類を可視化し、共有するなどの手立ても大切です。
さらに、その日の体の調子や状態にも合ったものにするために、学習の前後で柔らかさや巧みさをチェックできる場を設けることも効果的です。
子供が運動の必要性や行い方を理解することができるようにするために
「体の動きを高める運動」では、ある程度、知識として小学校のうちに理解しておくことも大切です。具体的には、
➊体力とその必要性
➋体力に合った高め方があること
➌自己に合った体力の高め方があること などです。
子供が運動の必要性や行い方を理解することで、体力(動き)の高まりを実感を伴って学習することをめざしています。
運動(体の動き)が偏っている子供や、課題に迫れていない子供には、適切な支援が大切です。学習資料を活用しながら自己の課題に合った運動を理解できるように、指導者が助言をしたり、仲間の助言を受けやすくなるようなペアやグループの編成を工夫したりします。
体力の向上や体の動きの高まりは、一過性・即効性を期待するのではなく、長期的に取り組まないと結果が見えにくいものであることを子供たちと共有し、運動を正しく楽しく行い、無理なく継続して取り組めるようにしていきましょう。
1人1台端末を活用した指導アイデア
・体の動きを高める運動を組み合わせたものを整理する。
・自己やグループの仲間の様子を動画で撮影して確認する。
・よい動きやかかわりの様子を教師が撮影して紹介し、そのよさを共有して広める。
・各グループが考えた運動を動画撮影してクラウドに保存する。休み時間の運動や家庭学習として、その映像を活用しながらパワーアップ体操に継続して取り組むようにする。
※負荷がかかりすぎる運動や、ねらいに則さない運動は、逆効果になります。子供が運動の必要性や行い方を理解することで、体力(動き)の高まりを実感を伴って学習することをめざし、子供の実態に合わせて授業づくりを行っていきましょう。
小5体育「体つくり運動(体の動きを高める運動)」指導アイデア①
「楽しく運動をしよう」はこちら
イラスト/佐藤雅枝
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