小4読書指導 ビブリオバトルを成功させるには
京都の立命館小学校は、読書指導に力を入れ、子どもたちに読解力とともに豊かな心を育んでいます。4年生から取り組むビブリオバトルも読書指導の1つ。子どもたちがいきいきと学ぶ、ビブリオバトル授業をレポートします。
授業//立命館小学校司書教諭・大橋輝子
目次
単元計画(全5時間+冬休みの宿題)
1 ビブリオバトルとは?
・公式ホームページを見て、ビブリオバトルとは何かを知り、イメージをつかむ(ビブリオバトルのルールを知る)。
・先輩の動画を見て、よいところ、改善点について話し合う(ビブリオバトルでの効果的な話し方を学ぶ)。
・紹介する本を選ぶ(選書)。
◎指導のポイント:子どもたちが取り組んでみたいという意欲につなげる。
2 オーディエンスとして参加
・教師のビブリオバトルにオーディエンスとして参加する(話し方の工夫や相手を思いやる聞き方を学ぶ)。
・読みたくなったという視点で、チャンプ本を選ぶ(話す内容の構成を学ぶ)。
・設計図の書き方を学ぶ。
・ルーブリックの作成。
◎指導のポイント:子どもたちがビブリオバトルの楽しさを知るようにする。
宿題
・冬休みに設計図を書いて、家の人に聞いてもらう。
3 作戦会議
・2人1組で本を紹介し、互いにアドバイスを行う(相手へのアドバイスを行う。聞き手を意識した話し方を工夫する)。
◎指導のポイント:3分間の長さを知る。相手へ思いやりをもって聞き、アドバイスをする。
4 ビブリオバトル決戦(本時)
・グループに分かれて決戦を行う(聞き手を引き付ける話し方、相手を思いやる聞き方、内容を深める質問を学ぶ)。
・聞き手の反応を考えながら、設計図を見ないでプレゼンテーションをする。
・チャンプ本を決める。
◎指導のポイント:聞き方は100点をめざす。3分間を有効に話す(本のことだけではなく自分の思いも話す)。
5 振り返り
・自分の課題を知り、次につなげる。
・友達の発表を聞き、よいところを伝える。
・読んでみたいという意欲につなげる。
◎指導のポイント:子どもがまたビブリオバトルをやってみたいと思う気持ちにつなげる。
設計図例(教師が作成)
設計図例は教師が作成して、子どもたちに提示します。
ビブリオバトル決戦
本時のねらい:3分間を有効に使い、本の魅力を自分の言葉で伝える。聞き手のときには相手を思いやって聞く。
発表者が本のプレゼンを行う
1グループ3から4人の7グループに分かれます。同校では、ビブリオバトルにおいて、「本を通して人を知る、人を通して本を知る」「顔を上向きにし、笑顔で話す」「3分間で本を紹介する」「やさしい気持ちで聞く」などを大切にしています。
発表者は1人3分間(同校では一般的なビブリオバトルの5分間より時間を短くしている。小学生の場合、ミニビブリオバトルとして公式ルールとして認められている)でおすすめの本を紹介します。
その後、1分30秒間でディスカッションを行います。ディスカッションタイムでは、聞き手が質問を行い、発表者がそれに答えるというやり取りを行います。
さらに、準備タイム10秒間の後、プレゼンテーションタイム、ディスカッション、準備タイムを人数分繰り返します。
チャンプ本を決める
発表者全員のプレゼンテーションが終わったら、読みたくなった本に投票し、チャンプ本を決めます。Microsoft Formsを使って、投票を教師のパソコンに送ります。このとき、2人に対し、メッセージを送ります。1人はチャンプ本の人へ、もう1人は自分の次に発表した人へ。このようにすることで、誰もがメッセージをもらえるようになるからです。ビブリオバトルが単なるバトルに終わらないようにやさしさをプラスします。
チャンプ本を発表する
教師は各グループのチャンプ本を発表します。チャンプ本に決まった子どもは大喜び。チャンプ本に選ばれることだけを目的にしない指導をしているため、自分の言葉で発表できたこと、本を通して友達のことがもっと分かったこと、違う分野の本が分かったことなどの感想が聞かれました。どの子からも達成感のある表情が見られました。
子供たちの振り返り
●緊張して話し始めが少しむずかしかった。言葉で人を動かすことができるということが分かった。1回目チャンプ本に選ばれたのでとても嬉しかった。
●うまくできてよかったです。今回はチャンプ本になれなかったけれど、次やる機会があったら今度はチャンプ本になりたいです。
●初めてで、設計図とは違うことをしゃべってしまったかもしれないけど、聞き手に分かりやすく伝えることができてよかったです。
●初めてのビブリオバトルだったから、緊張も少ししていたけれど、楽しかったので、また、やりたいです。休み時間に友達とビブリオバトルをやったらいいと思います。
●とっても楽しかったです! みんな温かい目で見てくれるので安心できました。
●あまり話したことがなかった友達もいたけど、このビブリオバトルで仲よくなれたので、よかったです!
●設計図を見ずに紹介するので少し難しかったけれど、最後に質問をもらえたので嬉しかったです。自分としては、緊張して話す内容を飛ばしてしまってうまくいかなかったと感じたところもあったけれど、最終的に相手に理解してもらえたのでやりがいがあったと達成感を感じられました。
●初めてのビブリオバトルです! とっても緊張したけれども、設計図とあまり変わらないことを言えました! チャンプ本に選ばれました! 嬉しいです。Hさんの発表の仕方が特にいいと思います。『暗号クラブ』を読んでみたくなりました!
大橋輝子先生インタビュー
子供に寄り添い、認め、おもしろさを共有する
ビブリオバトルを通して子どもたちに付けてもらいたい力は、言葉で伝える力、聞く力などです。言葉で伝える力とは、自分のおすすめ本を選び、その本のあらすじや好きなところ、感動したところ、魅力について自分自身の言葉で分かりやすく伝えること。また、聞く力とは、友達の本の紹介を、思いやりをもって聞くことです。
ビブリオバトル時の前には、ルーブリックや設計図を作成します。ルーブリックは、ビブリオバトルの目指す姿を具体化する意図があります。ルーブリックBは司書教諭が設定し、それ以上にするためにはどうすればよいのかを子供たちと話合いをしながらAを設定します。その際、先輩の動画を見て、よかったところ、課題を話し合い、目指す姿を共有して決めています。
また、設計図は、自分の一番伝えたいことはなんなのかを視覚化する、本をよく読むなどのねらいがあります。あやふやなところは、もう一度、本に返ります。子どもたちは設計図を書くことが初めてなので、教師の作った設計図を参考にします。
ビブリオバトルに向けて子どもたちの意欲を上げるには、私たち教師がデモンストレーションをする際に、楽しそうにやってみることに尽きます。読書が苦手な子もいますので、その子たちには、「図鑑や絵本もいいよ」と言って選書の幅を広くしています。
ビブリオバトルを通して、教師も子どもも楽しんで取り組むことが大切です。子どもたちには、「聞き方は100点が取れます! 話し方は70点でも80点でもいい。またやればいい」と伝えています。チャンプ本を選ぶことだけを目的としていません。相手への優しさをもって聞き、本当のバトルにならないようにしています。
本校では、4年生で初めてビブリオバトルに挑戦し、5年生、6年生で繰り返し取り組み、経験を積み重ねていきます。5、6年生で行うプレゼンに成長を感じます。
ビブリオバトルで紹介した本や、友達がビブリオバトルで紹介してくれた本は、子どもたちにとって忘れられない本になっています。年月が経っても、「先生がビブリオバトルで紹介した本が読みたい」と言ってくれますね。
いつも子どもたちに、本を読むことの楽しさを伝えようと思っています。そのため、「おすすめの本を紹介して」と言う子どもたちの期待を裏切らないようにしています。子どもに寄り添い、認め、おもしろさを共有することを大事にしています。
取材・文・構成・撮影/浅原孝子