カードやアプリ活用で学びをもっと広げるには 【タブレットで変わる授業デザイン】#3

関連タグ
タブレットで変わる授業デザイン

1人1台端末でカードやアプリを活用し、学びを広げる授業を紹介します。今回は小1音楽の拍にのってリズムを表現する授業、小2算数のデジタルカードを作って活用するかけ算九九の授業、小5学級活動の情報モラルを考える授業です。

執筆/熊本県公立小学校教諭・西尾 環

01 ○と●でリズム遊び


1年音楽 「はくにのってリズムをうとう」


拍にのってリズムを表現することで、拍や拍子に親しみ、リズム遊びを楽しみます。また、リズムや拍の違いに気付き、簡単なリズム打ちの音楽を作ります。その中で、友達とも関わりながら、どのように音を音楽にしていくか、思いをもつようにします。


○(タン)●(ウン)(タタ)を使った拍のカードを、タブレット上でアプリを使って作ります。そのカードに合わせて、子どもたちは、叩きながら拍子をイメージし、リズムを作ります。 この拍は、紙でフラッシュカード的にすることもできますが、教師がリズムのパターンをいくつも作って何度も提示するには、デジタルが簡単です。また、タブレット上で子どもがリズムを作るのも容易です。紙で見せたり配付したりするよりも時間のロスが少なく、活動に集中できます。


リズム遊びをすることを知らせ、電子黒板で○(タン)と●(ウン)(タタ)を映し出して、意味を教えます。
1~2を教師が示して、子どもはリズムを打ちます。
子どもが自分(たち)で、(タブレットで)1小節分のリズムを作ります。

互いのリズムを紹介し合って、リズム打ちを楽しみます。
さらに2小節のリズムを作ったり、長いリズムを作ったりして、紹介し合いながら楽しみます。
楽しかったことを発表します。


○●と言ったようなシンプルな図で音の長さを表したことで、子どもは視覚的にリズムを把握することができ叩きやすく、拍子もとりやすかったようです。スライドを1枚ずつ出してリズムをとらせたことで、すべての子どもが、笑顔で最後まで参加できました。

また、子ども一人一人にタブレットを持たせて、自分たちでリズムを作る活動を取り入れたところ、いろんな種類のリズムを次々と作り、「面白い。もっと作ろう」「僕にも、そのリズムを教えて」と、主体的で対話的な学びが、教室に広がりました。

リズム感には、かなり個人差があります。授業では、やはり拍を聴いたり確実に叩いたりするところからスタートしなければなりません。1年生では「みんなが音を楽しむ」授業で、音楽大好きな子どもに育てたいですね。また、「タタ」のリズムはうまく叩けない子どももいるので、特に、少し時間をとって練習する場が必要でしょう。また子どもがタブレットを活用する場合、使うアプリは1つの画面の中で、複数カードを動かしたり並べたりできるものがよいでしょう。


リズム遊びだけでなく、前後の時間に、リズムを意識して曲を聞いたり、歌ったりする学習も取り入れるようにしましょう。
「しろくまのジェンカ」をきこう
「かたつむり」をうたおう
「ぶんぶんぶん」をうたいながら、リズムをうとう

02 デジタルフラッシュカードでマスター

  
2年算数 「かけ算九九」


タブレットの問題カードを次々と見ながら(フラッシュカードのように)、テンポよく声に出して九九を答えたり(答え付きカードを読んだり、問題に答えたりすることで、脳を活性化させ、知識を定着させます。


かけ算九九のデジタルカードを作ります。作り方は、いろいろありますが、ここでは、PowerPointやKeynoteといったプレゼン用アプリのスライドに1枚ずつ教師が書き込んで作り、ファイルを子どもに配付します。

これらを、子ども同士であるいは自分で、タブレット上でカードを次々に出しながら答えます。繰り返し問題に触れることで、知識の定着を図ることができます。また友達と問題を出し合うことで、主体的に楽しく学びます。


タブレットを準備して、教師の説明を聞きます。
カードが入っているアプリを開きます。(写真、PowerPoint、Keynoteなど)
ペアやグループで、タブレットを使って、一人が『今日は8の段の下り』などと言い、九九が並んだカードをフラッシュカードのように次々と出して、他の人が答えます。
出題者が交代し、問題も変えます。


教師のフラッシュカードに全員で答えるのとは違って、自分たちが出題者となるので、より主体的に学べました。タブレットが教室に入ってきたことで、子どもたちは、授業時間だけでなく休み時間も主体的に取り組み、かけ算九九の定着のスピードが、例年に比べ大幅アップしました。フラッシュカードとタブレットがあれば、自分一人でも学べるのがよいところです。

ポイントは、段階的・継続的にすることです。はじめは答え付きカードで練習します。唱え方を覚えるためです。はじめから問題だけにすると、覚えてないので、子どものモチベーションが下がります。

また問題を答えるスタイルも、最初は、教師がタブレットを使って、子ども全員で正しい唱え方を覚えるとよいでしょう。次第に、子どもが扱えるタブレットの数によって2人組、3人組などで、やってみればよいですね。ただし、グループで九九を答える時、速さの競争にならないよう気を付けましょう。リズムよく心を合わせて答える楽しさも、味わわせたいものです。

また、フラッシュカードを使う授業は、1時間中続けるのでなく、授業のスタートに、復習を兼ねて毎時間5分程度するほうが効果的です。毎日継続することで、確実に定着していきます。 さらに、カードをどのアプリで作るかもポイントです。最初は教師が作りやすいもので作成し、データを画像化しておくとよいですね。そうすると、何かに貼り付けて使えます。またOSによって、「フラッシュカードアプリ」「単語カードアプリ」などもあります。慣れてきたら、子どもが作るのもよいでしょう。


●算数 1・2年 たし算フラッシュカード・引き算フラッシュカード

●国語 1・2年 長音フラッシュカード
         促音フラッシュカード
         拗音フラッシュカード
絵と空白のあるカードが出たら予想して言葉を言い、次に正しい文字の入ったカードが出るようにしておきます。

●国語   全学年 漢字フラッシュカード
        漢字を書いて読むだけのフラッシュカードです。

●外国語 3~6年 英語フラッシュカード
          教科書の英語とイラストのカードを使います。

03 情報モラルを、QRコードとPPTで


5年学級活動 ネットへの投稿について考えよう」


インターネットの特性について知り、実生活でも正しく役立つ活用の仕方を身に付けることを意識させる授業です。子どもがSNSやネットの危険性を理解し、情報モラルの大切さを意識し、正しい情報活用能力を培います。また、保護者と教師が連携して、子どもがよりよい生活ができるようにします。 


書籍「スマホ世代の子どものための主体的・対話的で深い学びにむかう情報モラルの授業」(今度珠美・稲垣俊介著/日本標準)の教材「ネットへの投稿について考えよう」(PowerPoint)を、教師がタブレットにダウンロードし、そのスライドを電子黒板に映し出して、授業を進めます。

この教材は、情報モラルエデュケーターが、教育現場と関わり学校でも数多く授業や講演をしながら創り出したものです。学級の課題とも重なりやすい内容で、現代の子どもに必要な情報モラルの内容でもあることから取り上げました。実践事例ページに、授業展開とダウンロードできる教材がQRコードで示されており、即実践できることも大きな理由です。


めあてを知ります。「インターネットに投稿した経験があるか思い出し、気を付けることを考えよう」
スライドの事例を読みながら、内容をつかみます。
3人はどのように行動すべきだったかグループで話し合い、全体の前で発表します。
インターネットの特性をふまえ、「よさを生かす投稿」「悪いことにつながる投稿」について考えます。
自分がこれから投稿することについて考え、家族の人からの意見をもらいます。


設定が身近な場面で、登場人物のイラストも親しみやすかったからか、子どもたちは、話の場面に入り込み、様々な意見を言いました。登場人物の立場になって考えたり、良い投稿、悪い投稿についても深く考えたりしました。学校全体として、ネット投稿の情報や話題も出ていた頃であり、学校ぐるみで取り組むよいきっかけとなりました。

この教材は、事前にアンケートを取り、実態とどれだけ近いかを把握しておくことが、授業を活発化させるのに重要なポイントです。また、電子黒板でスライドが流れていくので、チョークと黒板も同時に活用したほうがよいでしょう。そして授業の様子を家庭へも発信し、保護者からの意見も吸い上げつつ、各家庭で話し合うきっかけを作ることこそ、学んだことが生活に生かされることになるでしょう。


西尾 環(にしお・たまき)●熊本県公立小学校教諭。小学校教諭として学校現場一筋。体育主任、研究主任、教務主任などを歴任。熊本大学教育学部情報教育研究会、熊本県市図画工作・美術教育研究会、学級づくり研究会、D-project(デジタル表現研究会)、ArtMile共同壁画プロジェクトなどで長年活動する。ADE2011、ロイロノート認定ティーチャー、シンキングツールアドバイザーなどの資格を持つ。
過去に、「日本子どもの版画指導者賞」「ちゅうでん教育大賞優秀賞」「D-pro booksアワード賞」など受賞。著書に「ゼロから学べる図画工作授業づくり」(明治図書出版)、分担執筆に「楽しい!学級づくり5・6年」(小学館)など多数。


タブレットで変わる授業デザイン カバー

<教育技術MOOK>
タブレットで変わる授業デザイン

GIGAスクール構想で、学校現場も本格的なタブレット活用の時代です。ICTの先進的な熊本市のベテラン教師が執筆。小学1年生から6年生までの、タブレットを活用した様々な授業実践を紹介しています。タブレット1人1台の時代に、すぐに役立つ授業デザインが満載です。

著/西尾 環 
発行/小学館
B5判/80頁
ISBN:9784091126047


構成/浅原孝子 イラスト/藤崎知子

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました