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算数授業では、誤答を扱える教師になろう

2019/7/21

正解と不正解のイメージ

算数の授業で誤答を扱う時、どのように扱えば子供たちの思考力を育むために資することができるのでしょうか。全国学力調査で良好な結果を示している新潟市で、誤答 ・誤概念を扱う授業を積極的に研究されている、新潟市教育委員会の間嶋雅樹指導主事に聞きました。

新潟市教育委員会指導主事・間嶋雅樹
新潟市教育委員会指導主事・間嶋雅樹

どう修正すれば正答になるかを考える

算数の学習で、正しいものだけを学んでいるのは、教え込まれているのと同じ状況です。そうではなく、間違っているものが目の前に出た時、それがどう間違っていて、それをどう修正すると正答にたどり着くのかということを考えることこそが学びだ、と私は思います。ただ正答を知っているだけでは、学びとしては不足なのです。

文部科学省は、「主体的・対話的で深い学び」が必要だと言っていますが、子供が自分で考えると、必ずどこかに分からないことが出てきたり、つまずいたりします。それを議論していく中で、正答に近づいていく、その過程こそが大切なわけです。

特に、算数科では、児童が間違えやすいところを敢えて取り上げるのが大事なことだと思います。例えば、学力調査等で間違えやすいところについてはデータが出ているので、それを取り上げないと、なぜつまずいているのか、それを克服するためにはどうすればよいのか等が分かりません。その間違いについて、自分が考えていることと間違いを比較したり、間違えていることが正答に結び付かなかったことを経験できたりすることが重要なのです。

誤答を扱う三つの方法とは

私は、間違った解答は、いくつかに分類できると思います。ひとつには、間違っているというよりは、概念的にそう思っていないような間違い、誤概念があると思います。もうひとつは、結果が間違うという誤解答、誤答です。大きくは、この二つでしょう。

前者については、例えば、三年生の角の学習の時、180度を超える側は角だと思われていないなどの誤概念がありますが、先々の学習も視野に入れ、しっかり押さえることが重要でしょう。後者については、授業中に俎上にのせて、しっかり議論をしていくことが大切です。

誤答を扱うには、大きく三つの方法があると思っています。

一つ目の最もオーソドックスな方法は、子供が間違えたのをうまく使って授業を進めることです。

二つめは、先生が誤答例を出して、「これはどこが間違っているんだろうね」と問う方法です。

三つめは、ある程度学習が進んだ状態になった時、「この問題では、以前だったらどんなところを間違えると思う?」と子供に考えさせる方法です。

そこで、「桁の揃え方を間違える子がいるかもよ」という意見が出たら、「その間違いがあったら、みんなはどうやって教えてあげるの?」と、ティーチングの技法を使うのです。そうすれば、誰も傷つきませんが、学習のレベルとしては高いものがあり、ある程度子供に力がないとできません。逆に、子供に力がないと、子供が間違えてそれを取り上げるという例になります。ただし、こちらを行うには、子供同士の関係づくりや、扱い方の配慮等、先生に力があることが必要です。

結局、誤答をどのように扱うかを考えるには、学級の集団がどうなっているかを見極めることが大事です。間違いを互いに補完しあえる人間関係があれば、みんな友達の間違いを直してあげようという雰囲気になるし、間違った子も、「自分も新しいことが分かったよ。ありがとう」となるわけです。その人間関係がなければ、間違いを指摘されて嫌な思いが残るだけかもしれません。

ですから、誤答をどう扱うかは、学級の状況を見て決めていくことが必要です。それが授業の面白いところなのです。

式と図や具体物を往還しながら理解する

二年生の授業で誤概念としてよくあるのは、時間の学習における、時間と時刻の間違いです。

誤答でよくあるのは、繰り上がりや繰り下がり等の間違いです。例えば、ひき算の筆算で、45 -27=22 という誤答がよくあります。

それを取り上げる時、私なら、「なぜ22になったのかな?」と、教室全体に問い返します。そうすると、子供たちなりに、「(1の位で数の大きい)7から5を引いたから2なんじゃないの」と答えます。そこで、違うと言う子と、そうでない子がいれば、そこに投げかけ、対話を深めさせていきます。

二年生であれば、ひき算自体は分かるので、ブロックが45個あれば、そこから27個引いて、18という正当は出せるのです。そこで、「18という正しい答えは、この筆算のどういう考え方で出てくるんだろうね?」と問うと、式と図や具体物を往還しながら考え、説明していくことになります。

ひっ算の考え方の図説

ちなみに、塾等で事前に習っていた子は、「4から1を借りてきて、15から7を引いて8なんだよ」と説明します。そうすると、ある子が、「借りてきたのに返さなくていいの?」と疑問を投げかけたことがありました。

その問いに対しては、「借りてきた」ということでは説明ができないのです。そこで、具体物と式や図を行き来していると、「10を崩したんだね」とか、「(10の位の1を)バラにしたんだね」という言葉で説明できます。そのようにして、子供たちの中で、言葉とイメージや概念がつながっていくのです。そこが本当の理解につながります。

このようにして、間違いを扱う過程で、本当の理解になっていくわけです。

問題を考えるこどもたち
イラスト/やひろきよみ

子供の力量に合わせ、課題の大きさを絞り込み、議論のしやすさを調整する

このような議論も、ある程度、課題さえしっかりしていれば、1時間の中で対話や議論をし、適用問題を何問か行う時間もとれるはずです。ただし、問いが大きければ大きいほど、力が必要です。ですから、力がない子供たちには問いを絞ることも大切です。

例えば、「どうして18になるの?」は大きい問いで、答えが出るまでの全体の説明が必要です。そこで「10の位から借りてくるとは、どういうことかな」と問うと、視点が絞られます。「借りるというのは、どういうこと。(具体物で)やってみせて」と投げかけ、やってくれたことを、「この人たちはどういうことをやったのかな。ペアで説明し合ってみて」と、スモールステップで展開していけば、力が十分でない子供たちも、思考することができます。

私は、思考力の高い子供たちを育てたいと思っており、問題に出合った時、「もしかしたらこういう間違いがあるかも」と考えられるような学習集団になったら素晴らしいと思っています。ですから、授業だけでなく宿題でも、常に正しい答えを出す計算問題をやらせるのではなく、「この問題ならどんな間違いが起こりそうか考えてきてごらん」というようなものがあっていいと思います。

問題を相談し合う子どもたち
イラスト/やひろきよみ

子供の誤答や誤概念を授業で扱うことは、事前に想定さえしておけば、若い先生でも難しいことではないと思います。ただし、それでも想定しない考えが出ることはあり、その時には、「どうしてそう考えたの?」と、丁寧に問い返せばよいのです。その間違いに対し、「どうやったら説明ができるのかな?」と一緒に考えていけばよいのです。

先生が教えるスタイルの授業の方が楽で、簡単です。それに比べ、子供が間違いをどう修正するかを対話し議論する授業は、難しいのですが、子供が成長していく過程が分かるし楽しいので、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。

取材・文/矢ノ浦勝之

『小二教育技術』2018年9月号より

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