楽しく気持ちよく!小学校の合唱指導のポイント
小学校の合唱指導、大きな声で歌えているけれど、全体のハーモニーがいまひとつ、でも指導のポイントがよくわからない……ということはありませんか? 合唱の魅力は、必ずしも「大きな声で歌う」ことではありません。 友達の歌声を聴きながらともに歌い、ハーモニーをつくりあげる喜びを子どもたちに味わわせる指導法を、お伝えします。
目次
「いい声」のイメージをもつことから
まず、歌声と話し声は違うということを、認識させましょう。声質や場所を変えて、いろいろな声を比較しながら、歌うときは、こんな声で歌うといいというイメージをもつように導きましょう。徐々に、声を合わせることが子どもたちにとって、楽しい事、喜びに感じるようになるはずです。
いろいろな声であいさつしよう
まず、いろいろな声であいさつをしてみましょう。はじめは、いつもの「おはようございます」。続いて、ロボットの声、宇宙人の声、幼児の声などいろいろ楽しみます。
その後、アナウンサーの声や、ミッキーマウスの声、オペラ歌手の声といった、響く声に近い声であいさつをします。教室に美しい声が響いたところで、思いきり褒め、その声のままで歌えるかチャレンジしてみましょう。
すぐに歌声に結び付けることは難しいと思いますが、理想の歌声をイメージさせることが大切です。
声が響く場所で歌ってみよう
お風呂で歌を歌うと、「よく声が響いて気分がよかった」「歌がうまくなった気がした」という経験があるかと思います。その経験を、学級全員で共有してみましょう。学校の中で声が響く場所(階段の踊り場など)を探して、歌ってみます。
1人で歌うと、声が響いて上手に聞こえるはずです。しかし、学級全員で歌ってみると、声が響いてやかましくなってしまいます。そこで、全員の声が響いて、心地よく聴こえる音量を探します。そんなに大きな声を出さなくても、みんなの声が響いて心地よいという体験ができるはずです。
先生は、ぜひ、「やさしい声で歌ってみよう」と助言してください。「やさしく響く歌声」のイメージを共有することが、声を合わせる楽しさや喜びにつながるのです。
イメージがつかめたら歌唱の実践へ
ここまでで、歌う声と話す声の違いがわかったかと思います。では、体と喉のウォーミングアップをして、楽しく歌うレッスンを始めていきましょう。
ゲームを取り入れて楽しく発声練習
運動をした後など、体があたたまっている状態は、発声練習におすすめのコンディションです。歌う前に、軽くストレッチをするのもよいでしょう。準備ができたら、「目標を当てるゲーム」を実践してみましょう。
ペアになって取り組みます。まず、先生は次の4つの目標を提示します。
- 口をたてに大きく開ける。
- 目をぱっちり開け、眉を上げる。
- ほっぺを目に近づける。
- 姿勢に気をつける(両足でしっかりと立ち、上半身はリラックス)。
一人が、4つの中から自分が取り組む目標を1つ決め、達成できるように発声を行います。決めた目標は、ペアの友達には秘密です。ペアの友達は、相手の目標が何番なのかを考えながら聴き、当てます。見事当ててもらえたら、目標達成です。次は目標を変えて、楽しくゲーム感覚で練習をしましょう。
2小節交代で歌おう
何度も歌わせたいという先生の気持ちも分かりますが、子どもたちの集中力は続きません。しかし、少し方法を変えるだけで、何度でも楽しく取り組むことができます。
4人グループをつくり、A・B・C・Dを決めます。最初の2小節をAの人が歌い、次の2小節はBの人。Cの人も2小節歌い、Dの人まで歌い終わったらまた、Aの人が歌います。
うまく歌えるようになったら、Bの人やCの人からスタートするなど、歌う順番を変えてもいいですね。自分の番でしっかりと歌えるように子どもたちは集中して取り組むはずです。グループではなく、学級全体で取り組むのもよいでしょう。
1人で1曲歌うのはとても勇気がいりますが、2小節だけなら、そして順番に回ってくるなら、子どもはがんばって歌います(この活動を時々取り入れていると、歌のテストをしなくても歌唱の評価ができますよ)。
さあ、2つのパートを重ねてみよう!
歌うコツがつかめてきたら、二部合唱の練習に入りましょう。2つの曲を同時に歌って重なりを楽しむパートナーソングや、前半部分と後半部分を重ねて楽しむパートナーソングのような形式の曲は、二部合唱の導入としておすすめです。
重なり方を子どもたちに説明した後、学級を2つに分け、旋律を重ねて歌ってみましょう。歌い出しがうまく入れなかったり、もう一方のグループにつられたり、つられないようにすると大声になってしまったり・・・ということもあるでしょう。そこで、先生と子どもたちとに分かれ、再度挑戦します。
「先生の声を聴きながら、歌うことはできるかな」と声かけをします。先生と上手に合わせることができるようになってきたら、少しずつ先生グループの人数を増やしていきます(同時に先生は音量を下げていきましょう)。最終的に、先生が歌わなくてもできるようになると、成就感が味わえます。
執筆/大阪府公立小学校教頭・今村友美
『小四教育技術』2016年6月号より