小1道徳「二わの ことり」指導アイデア
執筆/千葉県公立小学校教諭・原野舞
監修/千葉県公立中学校校長・大舘昭彦、文部科学省教科調査官・浅見哲也
使用教材:「二わの ことり」(東京書籍)
目次
授業を展開するにあたり
「二わの ことり」は、低学年の道徳で数多く取り上げられている有名な教材です。取り扱う内容項目は、「友情、信頼」です。この教材は、友達に対する思いが描かれており、一年生でも身近に考えられる内容です。
小学校に入学し、さまざまな友達と交流する楽しさを感じる一方で、自己中心的な言動をしてしまうこの年齢は、友達とぶつかることも多いでしょう。みそさざいの葛藤を感じ取りながら、やまがらのことを思った言動について考えることで、友達と仲よくするために大切なことを改めて具現化することがこの授業の目的です。
語彙や生活体験が少ない一年生は、自分の思いを表現するには個人差があったり、なかなか主体的に考えられなかったりすることもあるかもしれません。全員を同じ土俵で考えさせるには、発問や板書、話合いの場の設け方、終末の扱いなど、さまざまな工夫が必要です。
今回は、登場人物のセリフの続きを考える、役割演技をする、心の距離を視覚的に表すという活動を取り入れ、子供たちが自分事として考えられるような授業プランを立ててみました。
展開の概略
1.導入
- 本時で扱う内容項目「友情、信頼」について、自己の生活をふり返る。具体的なエピソードや気持ちを問うことで、全体が発言できる雰囲気をつくる。
- 1時間で考えさせたいテーマを提示する。
2.展開
- みそさざいが悩んでいた事柄を確認する。
- やまがらの家に行ったみそさざいの心情を考える。
- 友達レベルをハートで表す(⑤の後も行う)。
- やまがらの家に行って、みそさざいがなんと言うか考え、ワークシートに記入させる。
- 役割演技をする。
- テーマについて再度考える。
3.ふり返り
- 学習のふり返りを書き、発表する。
- 教師の説話を聞く。
(例)
・誕生日に、友達がわざわざ会いに来てくれて嬉しかった。自分もやってあげたいと思った。
・遠く離れている友達にプレゼントは渡せないから、電話やメールを送ったら、とても喜んでくれ、今でも仲よくしている。
など、内容項目や教材に見合った説話は、終末にふさわしいと考えます。特に担任の話は、子供の心により響くはずです。
▼ワークシート
毎回、同じ形式のものを使用しています。場面絵やイラストだけを差し替え、作成する負担が軽減するようにしています。
▼教具1 友だちレベルを示すハート図
ピンクと水色の画用紙を動かすことで、ハート図の色の割合を変えます。
▼教具2 みそさざいとやまがらのお面
役割演技の際、お面を着けると、役割を取得しやすくなります。
実際の授業展開
主題名
二わの ことり
ねらい
友達と仲よくし、思いやりをもって助け合っていこうとする心情を育てる。
内容項目
B-(9)友情、信頼
準備するもの
・ワークシート(子供配付用)
・場面絵
・みそさざい、やまがらのお面
・友達レベルを視覚化するハート図
ワークシートや教具のPDFはこちらよりダウンロードできます
▼ ▼ ▼
指導の概略(板書計画例と展開例)
教科調査官からアドバイス
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也
道徳科の授業では、子供たちが内容項目に含まれる道徳的価値を手がかりとしながら道徳性を養えるようにするために、教師は、さまざまな指導方法の工夫を行います。これらの工夫は、一人ひとりの子供たちが、自分の考えをもてるようにしたり、自分の考えを表現できるようにしたりするためのものであり、子供たちの学習状況を見とる評価にも大いに役立つものです。
原野先生は、授業のテーマを設定することで、本時の授業で考えることを明確にしています。また、ハート図を操作して自分の心を表現することで、子供一人ひとりが授業にしっかりと参加でき、言葉や文字で表現することが困難な子供への配慮となっています。
さらに、やまがらさんとみそさざいさんの役割演技は、そのときの相手を思う気持ちが表れやすく、子供たちの心の優しさを表出できます。こうした一人ひとりに配慮した学習を通してもう一度テーマについて考えると、子供自身も自分の心にある温かさに気付いていくことでしょう。
イラスト/どいまき
『教育技術 小一小二』2020年12月号より