小5社会「水産業の盛んな地域」指導アイデア
執筆/東京都公立小学校教諭・中尚子
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登、東京都大田区教育委員会統括指導主事・木下健太郎
目次
目標
我が国の水産業における食料生産について、生産の工程、人々の協力関係、技術の向上、輸送、価格や費用などに着目し、資料で調べてまとめ、生産者の工夫や努力を捉え、その働きを考え、食料生産を支えていることを理解できるようにするとともに、これからの水産業の発展について考えようとする態度を養う。
学習の流れ (7時間扱い)

問題をつくる(2時間)
〇 水産業が盛んな漁港や漁場の位置を調べて白地図にまとめる。
〇 学習問題について予想し、学習計画を立てる。
〈学習問題〉
日本の水産業はどのような工夫をして生産し、わたしたちの元に届くのだろうか。
追究する(3時間)
〇 沖合漁業の盛んな地域を基に、沖合漁業について調べる。
〇 遠洋漁業の盛んな地域を基に、遠洋漁業について調べる。
〇 つくり育てる漁業について調べる。
まとめる(2時間)
〇 調べたことをまとめ、学習問題に対する自分の考えをまとめる。
〇 水産業の課題と6次産業について知り、その取組の意味やこれからの日本の水産業について生産者と消費者の立場で考える。
導入の工夫
日々食べている給食から水産物についての関心を高め、日本の水産業の今の様子を知り、工夫について疑問をもち、学習問題をつくるようにします。
1時間目
〇 給食の献立から日々水産物を食べていることを知り、日本の漁港を白地図にまとめ、水産業に興味、関心をもてるようにします。
私たちはどれくらい水産物を食べているのでしょうか。
献立を見ると、ほとんど毎日水産物を食べていることがわかるね。
魚そのものでなくても、カツオの出汁などでも食べているね。
世界でも生産量が8位だね。私たちの食べている魚はどこでとられているのだろう。
●日本の潮の流れを白地図にまとめ、日本の水産業が盛んな地域を知り、学習問題をつくります。

日本には、全国各地に魚が水揚げされる漁港があるんだね。盛んな地域はどこかな。
魚が少ないかと思っていたけど、種類が多い。
たくさんの種類がとれるように、何か工夫があるかもしれない。
遠くから私たちのところへどのようにして届くのかな。
学習問題
日本の水産業はどのような工夫をして生産し、わたしたちの元に届くのだろうか。
問題をつくる(2 /7時間)
漁獲量が減っているグラフと日本の水産業の環境を示した地図を読み取り、疑問から学習問題をつくります。
まとめる(7/7時間)
水産業の課題を解決するために、生産者側が取り組んでいる「6次産業」について知り、生産者と消費者の立場に立って考えます。
多角的に考える
日本の水産業は後継者不足や収入の不安定、消費量の減少などの課題があることを捉え、それらの課題を解決する可能性がある取組があることを知り、これからの水産業の発展を考えられるようにします。
日本の水産業の課題を解決するために取り組んでいる「6次産業」とはどのような取組なのでしょうか。
※6次産業化とは、1 次産業である漁業などの従事者が、生産だけでなく、2次産業である製造業や3次産業である流通や販売も一貫して行うことによって、生産物の価値を引き上げ、事業の活性化を目指すものです。
【水産業の課題】
〇後継者不足 〇収入が不安定 〇魚ばなれ
6次産業化・・・新しい取組



生産者はなぜ「6次産業」を行っているのか、生産者と消費者の立場で考えてみましょう。
生産者の立場
所得の向上
生産と加工、販売を一緒に行うことで収入を安定させることができます。
雇用促進
後継者不足を解決するのにも役立ちます。
地域の活性化
地域のブランド化などで地域が元気になります。
消費者の立場
・安全なものなので、安心して食べることができます。
・新鮮な水産物を食べることができます。
・安い値段で食べることができます。
この「6次産業」の取組を参考にこれからの水産業の発展について考えてみましょう。
単元づくりのポイント
日本の水産業は、農業と同じく、後継者不足や収入の不安定、消費量の減少などの課題を抱えています。これらの課題を解決する可能性をもった取組が6次産業化です。6次産業化の意味について生産者と消費者の両方の立場から考えることで水産業の発展について考えさせたいですね。
イラスト/横井智美、栗原清
『教育技術 小五小六』2020年7/8月号より