協働・創作+安全! ダンススイミングで新しい水泳学習
もうすぐ始まる水泳授業。毎年、練習メニューに頭を悩ませる先生も多いのでは? 今、水泳授業で注目されている「ダンススイミング」は、泳げない子も泳げる子も協力し合って楽しく取り組め、安全で、かつ指導も簡単! わかりやすい写真と動画付きで解説します。
目次
全員が笑顔の水泳授業
体育の授業の中で水泳は、子どもの得意不得意の差が大きく出やすい種目です。泳ぎが苦手な子や水が怖い子にとって、水泳授業は辛い時間になってしまいます。また、泳ぐ技術の習得に重点が置かれるため、どうしても個々が泳ぐことに取り組む学習になりがちです。
水泳授業で注目されているダンススイミングは、
○子どもの泳ぎの能力にあわせて、
○すべての子どもが安心して取り組め、
○全体で協力して表現する力を磨き、
○少ない指導者数でも安全に指導できる。
などの、小学校体育の授業に適したプログラムになっています。シンクロナイズドスイミングの要素を取り入れていますが、子どもたちの実態にあった基本動作を組み合わせることで、低学年でも十分に取り組めます。
ダンススイミングの普及に努める不破央さん(オフィストゥリトネス代表)は、「各人の創意工夫を大切にするので決まりや正解はありません。水中で歩く、飛ぶ、潜るなど、プールでできるあらゆる運動が対象。協力し合って上達することも指導の大きな目的です」と話します。
ダンススイミングでは、子どもたち全員が笑顔です。みんなが楽しいと感じる水泳授業に取り組んでみませんか? 今回は、小学生でもすぐに取り組めるダンススイミングの基本技を中心に紹介します。
基本動作1 スプラッシュ
指先で水面を素早くかきながら水しぶきをたてる動作。直線と回転の2種類を紹介。
直線スプラッシュ
手のひらの下半分が水中に隠れる状態から、腕を押し出して、指先から水を発射するように見せるのがポイント。
回転スプラッシュ
両足を交差させて立ち、その足を水底から動かさないようにする。その状態から体を中心軸に同じ速度でコンパスのように回転。「簡単そうに見えますが、水しぶきの大きさなどをコントロールするには練習が必要です」(不破さん)。
基本動作2 針ジャンプ
針のようにシャープな姿勢でジャンプする動作。水中にしっかり腰を沈めて、水底を強く蹴って跳び上がる。両手をまっすぐ伸ばして交差させ、両腕を耳の後ろに付け、水泳の「けのび」の姿勢でジャンプ。全身をまっすぐ伸ばしてより高く跳び上がるときれいな形になる。
基本動作3 ヘリコプタージャンプ
水上に上がった瞬間にヘリコプターの旋回のように体を回転させる動作。腕の力が抜けていると素早く回転できないので、自分の体の中心を意識しながら竹とんぼのようなイメージで回る。「回転中の両手の形や、180度や360度など回転の度合いも自由です」(不破さん)。
基本動作4 スカーリング
スカーリングとは、手で水をかく一連の動作のことで、体を水に浮かせた状態を維持するうえで欠かせない動作。水との一体感が実感できる動作だが、見た目よりも難易度は高く、「最初は水底に足がついた状態で体を垂直に立ててバイバイのポーズのように水中で手を動かす練習から始めるとよいでしょう」(不破さん)。
基本動作5 バレーレッグ
水面に対してつま先と膝は平行、両腿は垂直にした「タブ姿勢」で、両手でスカーリングして水に浮いた状態をキープする。つま先と膝が水面から出ていることを確認して片足で水を蹴り上げる。蹴り上げた足を水面に対して垂直に上げ、もう片足をつま先方向に伸ばして、体が逆Tの字形になるバレーレッグの形をつくる。
基本動作6 イルカ跳び
イルカが跳ぶように水面にアーチを描く動作で、チーム演技でのポジション移動にも用いられる。跳び出すときは前方を見て、体が高く上がったら自分のおへそを見るようにすると背中が丸くなり、イルカのようにきれいな流線形のアーチができあがる。
基本動作7 背面イルカ跳び
背面から行うイルカ跳び。胸の前で準備した両手を跳び上がる瞬間に真横に広げ、勢いよく両手を広げて胸を大きく張って体をそらすことがポイント。あごを上げて前方をよく見るようにするときれいな背面の形になる。着水したらあごを引いて水底に後頭部が衝突しないように注意する。
基本動作8 横向きイルカ跳び
横を向いた姿勢で行うイルカ跳び。手を広げているときれいなアーチの形にならないので、両手を閉じて「気をつけ」の姿勢から跳び上がる。「この横向きイルカ跳びは他のイルカ跳びのような、水上にアーチを描く形の美しさというより、どちらかというとコミカルな印象を与える動作ですね。難易度的にはイルカ跳びの中で一番易しいです」(不破さん)。
チーム演技 カデンス
各メンバーがタイミングをずらして順番にジャンプしていく演技。一定のリズムに乗ってジャンプが連鎖的に流れていくと、とても見栄えがよくなる。この演技は自分の前の人の体の動きをよく見ておくことが大切。「少ない人数から始めて、クラス全員で演技が完成できると感動的ですよ」(不破さん)。
チーム演技 ルーティーン
ダンススイミングレッスンの最後に行う、音楽に合わせたチーム演技。基本動作の「イルカ跳び」「針ジャンプ」「スプラッシュ」などが随所に組み込まれている。「学んだことを発表して人に見せることが重要なので、このルーティーンは必須。ポイントは体に動きをしっかり覚えさせて音楽をよく聴くこと。チームの人数や音楽のジャンル、振り付けも自由です」(不破さん)。
取材・文/北橋克文
『小二教育技術』2018年6月号より