小5小6家庭科 「布を用いた製作の学習」指導アイデア
生活を豊かにするための布を用いた製作では、製作に必要な材料や手順、製作計画、手縫いやミシン縫い及び用具の安全な取扱いに関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、製作計画を考え、製作を工夫することをねらいとしています。
ここでは、子供たち一人一人が、製作する喜びを十分に味わいながら、基礎的・基本的な知識及び技能を習得するとともに、思考力を高め、実践する力を育むための2年間を見通した段階的な題材配列の工夫と実践を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・丸山早苗
目次
基礎的なものから応用的なものへ
簡単なものから複雑なものへ
執筆/茨城県市立小学校教諭・藤井純子
1 手縫いの基礎を学ぶ
第5学年の最初に、手縫いの基礎を学習します。「小物の製作」に必要な玉結び、玉どめ、縫い取り、ボタン付け及びなみ縫い、返し縫い、かがり縫いなどの縫い方を学びます。縫うことは初めてなので、布端がほつれずに扱いやすいフエルトを使って、無理なく、楽しく練習することが大切です。
1 玉結び、玉どめ
ワッペン作りを通して、玉結びや玉どめを練習します。
2 縫い取り、ボタン付け
ネームプレート作りを通して、縫い取りやボタン付けを練習します。
3 なみ縫い、返し縫い、かがり縫い
練習したパーツを組み合わせる工夫もできます。
4 基礎縫いを生かしたオリジナル小物作り
ポケットティッシュカバーの製作手順や縫い方を参考に自分で小物作りの計画を立てて製作します。
2 ミシン縫いの基礎を学ぶ
第5学年では、手縫いのよさを実感し、基礎的・基本的な知識及び技能を習得した後、ミシン縫いを学習します。ランチョンマットなどの製作に必要な材料や手順がわかり、製作計画について理解できるようにするとともに、ミシン縫いによる目的に応じた縫い方及び用具の安全な取扱いについて理解し、適切にできるようにします。
1 から縫い
最初は、糸を使わずに、紙を使って印の上を縫う練習をします。
2 直線縫いを使ったふきん作り
製作の前に、別布を用いて、「ふきん」や「ぞうきん」を縫いながら練習します。練習後に完成したものは、調理実習や清掃の時間に活用します。
3 手縫いやミシン縫いを活用する
第5学年では、手縫いやミシン縫いの基礎を活用し、平面的なデザインのランチョンマットやウォールポケットなどを製作します。
第6学年では、題材指定となっている「袋物」を扱い、ナップザックやトートバックなどの製作を通して、縫いしろやゆとりの必要性について理解できるようにします。コース別学習や試し作りの活動を取り入れながら主体的に学べるよう工夫します。なお、布教材を活用する場合は子供たちがデザインなどを工夫できるよう配慮することが大切です。
また、学校行事や他教科・領域との関連を図って、家族や地域の人々との関わりを深めるための物を製作してプレゼントするなどの活動も考えられます。
5年生
めざせ、ミシンマスター!
ランチョンマット作りにトライしよう
執筆/茨城県市立小学校教諭・増子律子
第5学年では、手縫いのよさを実感し、基礎的・基本的な知識及び技能を習得した後、ミシン縫いを学習します。ランチョンマットなどの製作に必要な材料や手順がわかり、製作計画について理解できるようにするとともに、ミシン縫いによる目的に応じた縫い方及び用具の安全な取扱いについて理解し、適切にできるようにします。
1時間目
身の回りの布製品をウォッチング
身の回りの布製品を観察したり、教師によるミシン縫いの実演を見たりする活動を通して、じょうぶで速く縫えるミシン縫いのよさに気付き、安全に操作して、生活を豊かにする物を製作したいという意欲につなげられるようにします。
2〜4時間目
ミシンマスターをめざそう
まず、ミシンの基本的な操作の仕方を学習します。初めて扱うので、ミシンの安全な出し入れや移動の仕方、電源コードの扱いなどからていねいに指導します。
最初は、糸を使わずに「から縫い」から始めます。ミシンの操作が上達してから、上糸や下糸の準備の仕方、縫い始めや縫い終わりや角の縫い方など、ミシン縫いをするために必要な基本的な操作を中心に学びます。自己評価カードに記録しながら、学びの達成度を確認し、粘り強く「ミシンマスター」をめざします。
5時間目
製作手順を考えよう
作業カードを並び替えることができるアプリケーションを使って、矢印でつなぎながら、効率的な製作手順を考えます。プログラミング的思考を育てることにもつながり、思考力が深まります。
6〜9時間目
ミシン縫いの基礎を生かしてダブルランチョンマットを作ろう
次の①~⑥の作り方の手順に従って製作を進めます。
1 製作計画を立てる
2 布を断つ・しるしを付ける
3 しつけをかけてミシンで縫う
4 裏返してアイロンをかける
5 はしミシンをかける
6 飾り縫いをして仕上げる
6年生
世界に一つだけのオリジナルバッグを作ろう
執筆/茨城県市立小学校教諭・高木真由美
手縫いやミシン縫いの基礎を活用して、生活を豊かにするために布を用いた物の製作計画を考え、製作を工夫することができるようにします。
1時間目
生活を豊かにする物を製作するために必要な条件を考えよう
新聞紙や不織布を使って、指定の大きさのファイルが入る袋を試作します。子供たちは、試行錯誤しながら、大きさを決めたり、ステープラーで留めながら製作手順や縫う場所を確認したりします。それらの活動の中で、製作手順などについて問題を見いだし、課題を設定するようにします。
2〜3時間目
製作に必要な材料や手順を考えよう
試し作りの活動を振り返りながら、製作に必要な材料や手順について考えます。材料の布は、しるしが付けやすい、断ちやすい、ほつれにくい、縫いやすいなどの扱いやすさ、じょうぶさなどの性質を考え、製作する物の目的や使い方に応じて適したものを選ぶ必要があることを理解できるようにします。製作手順については、必要な作業を付箋に書き出したものを並べ変えたり、コンピューターなどを活用して効率的な製作手順を考えます。
4〜8時間目
製作計画を立てて、製作しよう
作り方の段階見本などを参考に、オリジナルバッグを製作します。ここでは、コース別学習を取り入れる工夫が考えられます。「トートバッグコース」では、縦型や横型、手提げや肩かけバッグなど、形を自分で工夫します。「きんちゃくコース」では、きんちゃく袋やナップザックなどを作ることが考えられます。
9時間目
自分の作った物の活用の仕方をまとめ友達に紹介しよう
自分の作った物の活用の仕方を友達に紹介します。自分の学びを評価、改善するだけでなく、仕上がった作品を互いに観察し合ったり、作り方を比較したりすることは、身の回りの布製品を評価する視点や、次の製作意欲、製作計画の工夫などにつながるので大切です。
10〜11時間目
製作して学んだことを生活に生かそう
(学校行事、特別活動との関連)
家庭科の製作で学んだことを生かして、日頃からお世話になっている地域の方々に感謝の気持ちを伝えるためのプレゼントを工夫します。
学校行事の「三世代合同防災訓練」と関連させ、非常時の持ち出し用袋として、きんちゃく袋を製作することが考えられます。
袋の中には、自分や家族の名前や住所、血液型などを記入しておく「もしもカード」、居場所を知らせるホイッスル、飴などを入れることにし、袋の大きさを決定します。
例えば、オリジナルバッグ作りの際、「トートバッグコース」を選択した子供がきんちゃく袋を製作する場合には、袋の口は絞られて小さくなるので、ゆとりを考慮して大きさを決める必要があることを再確認することができます。
学校行事 1時間
「ありがとう集会」で、お世話になっている方々に感謝の気持ちを伝えよう
高齢者の方々、地域の方々との交流を通して、布を用いた製作は、生活に役立つだけでなく、地域の人々との関わりを深めることにつながるということも理解できます。
構成/浅原孝子
『教育技術 小五小六』2021年3月号より